品川歴史館で貝塚について学ぶ

2007年4月28日 撮影
品川歴史館
品川歴史館(品川区大井6-11-1)は、JR大森駅から徒歩10分、京浜急行・立会川駅から徒歩15分ほどの所にある、品川区の歴史資料博物館である。大人100円、子ども50円(品川区民は無料)。2007年(平成19年)4月のリニューアル・オープンを待ってから訪れることになった。

2階は、大森貝塚の資料を中心に、子ども向け図書が充実している。ここで、大田区の「大森貝墟」と品川区の「大森貝塚」のどちらが、モース博士が発掘した場所であるかを知ることができた。
品川歴史館の大きな写真大きな写真
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ミドリシャミセンガイ - 品川歴史館
モース(Edward Sylvester Morse; 1838-1926)は、1838年(天保9年)6月18日、アメリカ合衆国メイン州ポートランドで生まれた。これが縁で、1984年(昭和59年)、品川区はポートランドと姉妹都市提携を結んでいる。
モースは少年時代、自然の中を歩き回ることが好きだったが、学校生活にはとけこめず、ハイスクールを中退してしまった。科学が好きな母親の影響で、12歳の頃から貝類の収集をはじめ、独学で動物学を学んでいく。そして19歳の時に新種のカタツムリを発見し、学会に認められるまでになった。

1866年(慶応2年)にはマサチューセッツ州セーラムのエセックス研究所の研究員となり、主に腕足類の研究に打ち込んでいた。(上の写真は腕足類の一種であるミドリシャミセンガイ)
腕足類は、炭酸カルシウムでできた2枚の貝殻を持つなど、外見的には軟体動物の二枚貝に似ているが、内部の構造は全く異なる。約6億年前に発生し、その形態はほとんど変わらないことから「生きている化石」とも呼ばれる。
モースの研究は、腕足類を軟体動物から分離することに貢献した。現在は、腕足動物門に分類されている。
大森貝塚 - 品川歴史館
日本には腕足類が豊富に生息していることから、モースは、1877年(明治10年)6月に来日した。そして、横浜港から新橋に向かう汽車の中から大森貝塚を発見したのである。モースの第一の目的は、江の島海岸でミドリシャミセンガイを採取することだったので、大森貝塚の発掘はやや遅れることになる。
大森貝塚 - 品川歴史館の大きな写真大きな写真
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歴史館に当時の地図や浮世絵が展示されているが、新橋-横浜間を走っていた日本最初の鉄道は、全線の3分の1で海の上を走っていた。これは、蒸気機関車に反対していた薩摩藩の藩邸のあった地域を避けて通るための措置だったというが、さぞかし眺めが良かったことであろう。

ちなみに、モース硬度計は、19世紀のドイツの鉱物学者、フリードリヒ・モース(Carl Friedrich Christian Mohs; @1773-1839)にちなんだ名前。
また、モールス信号サミュエル・フィンレイ・ブリース・モールス(Samuel Finley Breese Morse;1791年~1872年)もアメリカ人であるから、むしろモールス博士と呼ぶ方が正しいのかもしれない。実際、モースが東京大学で教鞭をふるっていた当時、学生はモールス先生と呼んでいたようだ。
縄文土器 - 品川歴史館
"Shell Mounds of Omori"(『大森貝塚』(岩波文庫、1983年)にも収載されている有名な縄文土器の複製。
大森貝塚から出土した土器の多くは縄文後期(紀元前1000~2000年)のもので、国の重要文化財に指定されている。
なお、縄文土器(cord marked porrery)の名前は、モースが発案したものである。
品川区歴史館
1984年(昭和59年)の発掘調査では、貝塚を作った人たちよりも前の時期の土器も発見された。
また、モースらが発見できなかった貝輪、貝刃 (かいじん) 、打製石斧などの装身具や道具が発見された。
品川区歴史館の大きな写真大きな写真
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土器の破片を組み立てるパズル。制限時間の60秒を越えると、磁力で結びついていた破片がバラバラに。
品川宿 - 品川歴史館
品川歴史館の1階には、江戸時代の品川宿の模型などが展示されており、なかなか力が入っている。
沢庵和尚が開いた東海寺など付近にお寺が多いこと、埋め立ての歴史などを知ることができる。
水琴窟 - 品川歴史館
お茶会が催されていた日本庭園の一角に、水琴窟 (すいきんくつ) があった。
水琴窟 - 品川歴史館の大きな写真大きな写真
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水琴窟は江戸時代に登場した庭園施設のひとつで、底に小さな穴を開けた (かめ) を伏せて埋め、手水の余水が甕の天井からしずくとなって落ち、それが甕の中で反響し、独特の音を発生させる仕組みである。日本人の風流がなせる技である。

戦後は忘れ去られた存在だったが、1985年(昭和60年)に、岐阜県美濃市今井邸水琴窟発見と復元のドキュメンタリー番組がNHKテレビで全国放送されると同時に大きな反響を呼び、一時期、水琴窟ブームとなった。
水琴窟 - 品川歴史館
残念ながら、品川歴史館の水琴窟は甕が小さく、また、車道の騒音がうるさく、その音を聞き取ることは難しい。穴に竹筒をかざし、辛うじて聴くことができるという状況である。
水琴窟 - 品川歴史館の大きな写真大きな写真
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水琴窟の音

参考書籍

  • モース博士と大森貝塚・改定版(品川歴史館/2001年(平成13年)9月)
    ‥‥品川歴史館の受付で販売されている。
表紙 大森貝塚
著者 エドワード・シルヴェスター・モース/近藤義郎
出版社 岩波書店
サイズ 文庫
発売日 1983年01月
価格 726円(税込)
ISBN 9784003343210
明治10年6月、来日間もないモース(1838-1925)は東京に向う汽車の窓から露出した貝殻層を目撃し、それが先史時代の遺跡であることをただちに看破した。日本考古学の第一歩というべき大森貝塚の発見である。その発掘報告書『大森貝塚』は、観察と実験に徹する科学精神をみごとに体現したものであって、今にわれわれを圧倒する。
 
表紙 楽しく調べる東京の歴史
著者 東京都小学校社会科研究会
出版社 日本標準
サイズ 単行本
発売日 2007年02月20日頃
価格 3,850円(税込)
ISBN 9784820802839
実際に現地を訪れ、取材をまとめたもっとも新しい東京の歴史。東京の原始時代から現在までがわかる。
 
表紙 日本人の住まい
著者 エドワード・シルヴェスター・モース/斎藤正二
出版社 八坂書房
サイズ 単行本
発売日 2004年04月
価格 3,080円(税込)
ISBN 9784896948417
住生活の知恵や工夫を後世に伝える貴重な記録。日本人の暮らしと住まいのユニークさに惹かれたモースが、300余点の図版と共に綴る詳細な観察記録。
 
表紙 モースのスケッチブック
著者 中西道子/エドワード・シルヴェスター・モース
出版社 丸善雄松堂
サイズ 全集・双書
発売日 2002年10月
価格 6,050円(税込)
ISBN 9784841902976
ピーボディ博物館・個人所蔵の日記・手紙などからスケッチを集め、モースの人物像を浮き彫りにする。貝類・日本の風景・陶器類など未発表のものを含む貴重な図版を多数収録。
 

交通アクセス

【鉄道】
  • JR「大森駅」から徒歩10分
  • 京浜急行「立会川駅」から徒歩15分
行き方ナビ
出発地の最寄駅:

目的地:品川歴史館

近隣の情報

(この項おわり)
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