モノづくりはジャズみたいなもの

岡野雅行

発言者

  岡野雅行 (おかの まさゆき) 岡野雅行
  岡野工業株式会社・代表社員
   
  2003年2月5日

場面

モノづくりはジャズみたいなもの。注射針にしろ電池ケースにしろ、基本的な技術は昔からずっと変わっていないアナログの技術なんだ。今はCADとかいうコンピュータの画面上で図面を引けるけど、俺の場合、コンピュータはおろか紙の上でも図面を書いたことなんかない。他の人たちは図面がないと何もできない。だけど、俺は、図面がなくても頭の中に全部入っているからできる。腕のいいピアノ奏者は楽譜がなくても耳で聴けば弾けてしまうのと同じだ。 普通の人たちが、図面がないとできないということは、一般的なものしかできないということだ。図面からはずれたものはできない。だから発想が限られ俺の場合は、あえて図面を引かないから発想が無限に広がっていくんだ。図面は頭の中に全部入っている。頭の中は無限だからね。図面を引けば図面の枠から出られなくなってしまうんだよ。 それに、俺の場合は、やりながらどんどん変えていく。頭の中の図面を考えながら、現場で試行錯誤するなかからいいものができてくる。ジャズみたいなもの。いわば即興、アドリブなんだな。(48ページ)
表紙 俺が、つくる!
著者 岡野雅行
出版社 中経出版
サイズ 文庫
発売日 2006年08月01日
価格 544円(税込)
rakuten
ISBN 9784806125013
穴の直径が60ミクロンの「刺しても痛くない注射針」、携帯電話の小型化に貢献したリチウムイオン電池ケースなど、誰にもできない技術とノウハウで日本のモノづくりを支えてきた金型プレス職人、岡野雅行。「何を言われようが、今、自分を信じて人と違うことをやっておけばいい」と言い切る男の、熱き“仕事の哲学”を味わう。
 

コメント

岡野雅行さんは、「誰にもできない仕事をする」をモットーに、向島で社員6人の町工場を経営する。携帯電話の小型化に貢献したリチウムイオン電池のケースをつくったことで有名になり、その後、穴の直径が60ミクロンの“刺しても痛くない”注射針を開発。

「図面がないとできないということは、一般的なものしかできないということ」というのは微妙である。
われわれサラリーマン技術者は、自分がいなくなっても会社が困らないように、かならず設計図を書く。だれでも製造ができるようにするためだ。
だが、まったく新規の製品/技術は、技術者の感性によるところが大きい。いずれは標準化して設計図にできるかもしれないが、試作段階では絶対にムリ。
ここがサラリーマンの辛いところである。

新規の製品/技術はベンチャー企業に任せ、標準化できるようになったら、それを買い取るというのが、大企業の経営としては正しいのかもしれない。

発言者による著作物

表紙 メシが食いたければ好きなことをやれ!
著者 岡野雅行
出版社 こう書房
サイズ 単行本
発売日 2008年09月
価格 1,540円(税込)
rakuten
ISBN 9784769609834
「痛くない注射針」をはじめノーベル賞ものの製品を発明・開発しつづける“世界一の職人”岡野雅行の、若い人たちの悩み・疑問に答える構成の最新刊が満を持して登場!人間関係のキモ、働くことの意味、常識の外に見えるもの、知恵とお金儲け、世渡り力、社会人になる前の経験…などについて、縦横無尽・融通無碍、愉快痛快の「岡野節」が冴える。
 
表紙 人生は勉強より「世渡り力」だ!
著者 岡野雅行
出版社 青春出版社
サイズ 単行本
発売日 2014年08月01日
価格 1,540円(税込)
rakuten
ISBN 9784413039239
“頭がいい”と“仕事ができる”は違うぞ!“世界一の職人”が教える、腕を生かす人づきあいの極意。
 
(この項おわり)
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