「ゴメン!」って言いながら、彼らの上を行くしかないんですよ

野口健

発言者

  野口健 (のぐち・けん) 野口健
  アルピニスト
   
  2004年4月13日

場面

「週刊アスキー」の「進藤晶子の え、それってどういうこと?」(2004年4月27日号)のインタビューに答えて。

コメント

エベレストの山頂付近では300人くらいは死んでいるという。気温が低く遺体は腐敗しないから、尾根は屍累々の状態だそうである。その屍を乗り越えて、頂上を目指さなければならないとは、登山家とは何と因果な商売であることか。

野口健を初めてテレビで見たのは、彼が最初のエベレスト登頂を目指す時だったと思う。だが、一度で成功するほど山は甘くない。三度にわたるチャレンジの末、ようやくエベレスト登頂に成功、七大陸最高峰最年少登頂記録を塗り替えた。
帰国子女であったために受けた「いじめ」、目的を失った時に読んだ植村直己の本‥‥マスコミ報道からはうかがい知れない人生を歩んできた男である。意外だったのは、登山を始めてから順調な人生だったかというと、その間にも何度か挫折があったという。そして、それらを乗り越えてエベレストの征服したわけである。

本人は「ゴメン!」と軽く言っているが、並の神経では、同じ目的を持った人間の遺体を跨ぐことなど、できるわけがない。自分の生命を燃やし、限界を超えた人間がなせる技である。
そんな彼は、今はエベレストや富士山の清掃登山をする一方で、子どもたちの指導や、障害者の支援をしているそうである。地球環境にも熱心に取り組んでいる。

発言者による著作物

表紙 落ちこぼれてエベレスト
著者 野口健
出版社 集英社
サイズ 文庫
発売日 2003年01月22日
価格 669円(税込)
rakuten
ISBN 9784087475364
「いい大学に行って、一流会社に入るだけが人生じゃない!」落ちこぼれだった著者は、植村直己の著書と出会い、人生の目標を見つける。波乱の少年時代から、7大陸最高峰世界最年少登頂記録を樹立した1999年5月のエベレスト登頂までを綴った、若きアルピニストの軌跡。夢を持ち、挑戦することの素晴らしさを伝える熱き自伝。
 
表紙 世界遺産にされて富士山は泣いている
著者 野口健
出版社 PHP研究所
サイズ 新書
発売日 2014年06月
価格 820円(税込)
rakuten
ISBN 9784569820040
美しい「日本の象徴」でいま起こっていることは、日本社会が抱える問題そのものだ!複雑に絡まり合う利害関係をどう解きほぐし、国家の宝を後世の人々へと受け継ぐべきか。日本を代表するアルピニストが語った「ほんとうに質のよい観光」とは。
 
(この項おわり)
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