責任追及と原因究明は別のものだ

畑村洋太郎

発言者

  畑村洋太郎 (はたむら・ようたろう) 畑村洋太郎
 
   
  2006年4月10日

場面

『失敗学』事件簿」(ISBN:4093876312、28ページ)より。
原文は、「失敗学でまず大切なことは、トラブルがなぜ起きたのか原因を究明することである。そのうえで再発を防ぐ方策を講じる。責任追及と原因究明は、その意味でまったく別のものだ。ところが日本では、両者がよく混同される」。

コメント

20年近く技術畑で仕事をしてきて思うのだが、私の業務ノウハウとは「失敗」の一言に尽きる。いまや、業界情報や技術情報はGoogleで検索すれば、いつでも・どこでも・誰でも入手できる。私だけが提供できるオリジナルな情報といえば、膨大な数の「失敗」体験だけである。

仕事が失敗したときは、比較的早い段階で諦める。諦めて、頭の中を顧客の立場、上司の立場に切り替えて、その原因分析を行い、レポートにする。レポートにしないまでも、メモを残しておく。最近数年は、PCの中にメモやレポートを保管して全文検索できるようにしてある。
いままで作成した原因分析レポートの中で、だれかの責任に触れたことは一度もない。たとえ私の責任にされることがあっても、他人に責任転嫁することは絶対にしない。それが私のポリシーである。だから出世しない(笑)。
同じ考えを持つ著者の意見を目にすることができ、とても励みになった。
著者はまた、「一度、隠しておきたい失敗情報が表に出てしまったら、絶対に犯人探しをやってはいけない」(58ページ)とも言っている。名言である。

発言者による著作物

表紙 「失敗学」事件簿
著者 畑村洋太郎
出版社 小学館
サイズ 文庫
発売日 2007年06月11日
価格 555円(税込)
rakuten
ISBN 9784094081800
二〇〇五年のJR福知山線脱線事故、みずほ証券誤発注事件、みずほ銀行システムトラブル、東京電力原発事故隠し、三菱自動車の連続不祥事、六本木ヒルズの回転ドア事故、雪印牛肉偽装事件など、「失敗学」の畑村教授が実際に起きた事件や事故を検証し、失敗を防ぐ教訓を引き出す。失敗がどのように起こり、どう広がってゆくのか、すべての組織人必読の書。
 
表紙 失敗学 (図解雑学)
著者 畑村洋太郎
出版社 ナツメ社
サイズ 単行本
発売日 2006年08月
価格 1,458円(税込)
rakuten
ISBN 9784816341878
技術が進歩し機械が普及するに従って、私たちの生活は以前よりも、はるかに便利になっています。その反面、小さな事故はもちろん、人命に関わる重大な事故がおこる機会も増えています。残念ながら、それらの事故=失敗が完全になくなることはあり得ません。本書は、そうした過去の失敗に蓋をして覆い隠すのではなく、失敗を正しく理解し、知識化することで、同じ失敗を繰り返すことを防ぎ、失敗を研究することによって生まれる、さらなる技術を創造すべきだ、とする失敗学の解説書です。
 
(この項おわり)
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