西暦1923年 - ミュンヘン一揆/光学式プラネタリウムの発明

ヒトラーのクーデターは失敗/ドイツ科学博物館に納品

ミュンヘン一揆

ミュンヘン一揆に参加するナチス党員
ミュンヘン一揆に参加するナチス党員
1923年11月8日夜、アドルフ・ヒトラーは600人の武装したナチス突撃隊とともにミュンヘンでのビアホールを襲い、そこで集会を開いていたバイエルンの州総監や州軍司令官をピストルで脅迫してクーデターを起こそうとした。
だが、バイエルン官僚、軍部や警察が反対し、クーデターは失敗。ヒトラーは、南バイエルンのシュタッフェル湖畔ウフィングにあるハンフシュテングル家の別荘に逃れたが、11月11日に逮捕された。
エッセン市内を行進するフランス陸軍騎兵
エッセン市内を行進するフランス陸軍騎兵
1923年1月、フランスとベルギーは、第一次大戦後のベルサイユ条約でドイツが賠償金を払っていないことを口実に、ルール占領を強行した。これに対し、ドイツ共和国(ヴァイマル共和国)は武力抵抗もせず、消極的抵抗策をとった。
ドイツ国民はこの政策に怒り、ゼネストに突入するなどして生産がストップした。その結果、インフレが進行し、国民生活は大きな打撃を受けた。
この頃、バイエルンの都ミュンヘンで右翼活動を展開していたヒトラーは、ヴァイマル共和国政府に対する批判を強めていた。当時、ミュンヘンは右翼活動が盛んで、バイエルン政府のカール首相も右派の指導者であった。
ヒトラーは主導権を握ろうと、当時ミュンヘンにいた第一次世界大戦のドイツ軍の大立て者ルーデンドルフ将軍に近づき、その協力を得て、11月8日夜、クーデターを決行したのであった。

逮捕されたヒトラーらクーデター首謀者9人の裁判が、1924年2月26日から始まった。ヒトラーは持ち前の弁舌で、バイエルン州政府や中央政府を批判し、正義は我にありと主張したが、裁判そのものに対する大衆や新聞の興味は薄かった。
4月1日に判決が下り、ヒトラーを含む4人に実刑が下された。ヒトラーは、ランツベルク・アム・レヒ要塞刑務所に収監された。
獄中は快適で待遇も良く、ナチス党員が身の回りの世話をした。ヒトラーは差し入れられた大量の書籍を読みあさり、『わが闘争』が口述執筆された。ヒトラーはクーデターの失敗を振り返り、ナチズム運動を方向付ける時期となった。1934年、国民投票という合法的手段で大統領の権能を獲得することになる。

光学式プラネタリウムの発明

ツァイスI型
ツァイスI型
1903年に創設されたドイツ博物館は、当時世界最大の理工系博物館で、天体運行を再現することで天文学の説明を行うための装置の開発に頭を悩ませていた。
1914年に、カール・ツァイス社の技師だったヴォルター・ハウアースフェルトは、暗い部屋に天体を映し出す光学式プラネタリウムを考案した。第一次世界大戦により開発中断を余儀なくされたものの、1923年10月に、ドイツ博物館の10メートルのドームで試験投影を行った。
この装置は「ツァイスI型」と名付けられた。北天用の1個の恒星球と惑星棚を備えており、200Wの電球を使って1等星から6等星の一部、約4,500この恒星と、太陽、月、5つの惑星をドームに投映することができた。
ツァイスI型は、1925年5月7日のドイツ博物館の開館とともに公開された。
ツァイスII型 - 大阪市立電気科学館
ツァイスII型 - 大阪市立電気科学館
ツァイスI型は北天の星空しか再現できなかったが、緯度を変化させる機構を加えて世界中の星空を再現するとともに、歳差運動も再現できるようにし、1,000Wの電球を使って6.5等星までの恒星約8,900個を投映できるツァイスII型を1926年に開発した。
ツァイスII型は世界各地に輸出され、1937年に、アジアで初めて、大阪市立電気科学館(現在の大阪市立科学館)に納品された。
エイセ・エイシンガのプラネタリウム
エイセ・エイシンガのプラネタリウム
1774年5月8日、明け方の東の空に、彗星、金星、火星、木星、月が一度に見える惑星直列が起きた。
万有引力の法則から100年余り、太陽や月、惑星の位置は計算で求めることができるようになっており、惑星直列が地球に災害を引き起こすようなことがないことは科学的に明らかだったが、一般大衆はそれを理解しておらず、新聞には世界の終末が訪れるという記事が掲載された。
この様子をみたオランダのアマチュア天文学者エイセ・エイシンガは、人々に正しい天文学を学んでもらおうと、動く太陽系の模型の製作に着手した。1781年、エイシンガはついに、太陽を中心に彗星から木星までが毎日正しい位置に表示する模型を完成させ、プラネタリウムと名付けた。

この時代の世界

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参考書籍

表紙 わが闘争(上)
著者 アドルフ・ヒトラー
出版社 KADOKAWA
サイズ 文庫
発売日 1973年10月12日頃
価格 880円(税込)
ISBN 9784043224012
 
表紙 わが闘争(下)
著者 アドルフ・ヒトラー
出版社 KADOKAWA
サイズ 文庫
発売日 1973年10月12日頃
価格 990円(税込)
ISBN 9784043224029
 
表紙 続・わが闘争
著者 アドルフ・ヒトラー/平野 一郎/角川書店装丁室
出版社 KADOKAWA
サイズ 文庫
発売日 2004年07月24日頃
価格 792円(税込)
ISBN 9784043224036
一九五一年頃からその存在が噂されていたヒトラーの秘密文書。アメリカ合衆国の国立公文書館から発見された口述タイプ原稿には『わが闘争』に続くヒトラーの特殊な思想が生々しく綴られていた。激しく粗野な言葉で語られた、その外交政策から垣間見られる狂信性や残虐性は、いまだ戦争の絶えない現代の闇を照射し、ネオ・ファシズムの問題をあぶりだす。今こそ読まれるべき衝撃の書。
 
表紙 プラネタリウムの疑問50
著者 五藤光学研究所
出版社 成山堂書店
サイズ 単行本
発売日 2023年07月
価格 1,980円(税込)
ISBN 9784425984312
100年の歴史を有するプラネタリウムについて、その誕生から現在までの移り変わり、しくみや楽しみ方、魅力などを、プラネタリウムの製造を行うメーカーの社員や、プラネタリウム施設の運営や投映(解説)を行う解説員が、わかりやすく紹介しています。この本を通じて、より多くの方々にプラネタリウムに興味を持っていただき、実際に訪れていただければ幸いです。
 
(この項おわり)
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