ダイナブック J-3100SS でモバイル生活

1989年8月 購入
J-3100SS
東芝のノートPC「J-3100SS001」を購入した。
世界初のA4ファイルサーズのノートPCで、のちに世界標準とまで言われるようになった DynaBook シリーズの初代機である。
この頃、プログラムや原稿を書くのに、8ビット・パソコン「MZ-2521」を利用していたのだが、起動するまでに時間がかかるし、外へ持ち出すこともできないといった不便さを感じていた。
そんなとき、パソコン通信で知り合った中村満氏が経営するビレッジセンターから「VZ Editor」というテキストエディタを発売するということを聞き、これを利用したいがために J-3100SS を購入した。

写真の画面は鈴鹿サーキットのコース図なのだが、この頃、東芝はF1レーサーの鈴木亜久里 (すずき あぐり) をCMキャラクターに起用していた。彼が乗るラルースチームのF1マシンには東芝のロゴが掲げられており、チームにノートPCを提供していたという。

目次

CPU 80C86

CPU 80C86
J-3100SS のCPUは 80C86(10MHz)という非力なものだったが、蓋を閉じればシャットダウンせずに省電力モードに入るリジューム機能を備えており、日本語変換は ATOK のROM版が搭載されていること、VZ Editor がメモリに常駐することなどで、モバイル用途として十分に活用できた。

音響カプラ

音響カプラ
パソコン通信のためのモデムボードがオプション販売されていたが、当時、構内電話や公衆電話にモジュラージャックを備えたものは少なかったことから、シャープの音響カプラを購入した。受話器を置いて、アナログモデムの働きをさせるためのアダプタであるが、通信速度は300bpsしか出なかった。
それでも、テキストファイルの受け渡しが主なモバイル用途としては十分な速度で、J-3100SS音響カプラの合計3kgほどの機器が入るバッグを新調した。

外部記憶装置

3.5インチ・フロッピーディスク
J-3100SS は、ハードディスクドライブは内蔵しておらず、移動時の衝撃でドライブが破損することは心配なかった。当時のHDDは、電源ON中に少しの衝撃でもヘッドがディスク面に接触し故障することがあったのだ。だが、ストレージが3.5インチ・フロッピーディスクが1台だけというのが心許なかった。(翌年、J-3100GS を購入したことで解決)

MS-DOSと開発環境

J-3100SS は、OSとして日本語MS-DOSを標準搭載しており、プログラム開発にはフリーソフトのCコンパイラ「LSI-C 86 試食版」を主に使っていた。機械語を織り交ぜて書くことができ、J-3100SS のハード機能を活用することができた。

日本語環境

J-3100SS は、1986年(昭和61年)にアメリカで発売されたPC/AT互換機 T3100 をベースに、独自の日本語処理機能を追加していた。日本語表示はハードウェアで行っており、内蔵漢字ROM以外のフォントを表示させることもできた。
この概念は、後にPC/AT互換機を日本語化する DOS/V 規格として標準化されるが、J-3100シリーズとは異なるアーキテクチャであった。

ダイナブック思想

ダイナブック の語源は、アメリカのコンピュータ科学者アラン・ケイが1972年(昭和47年)に提唱した理想のパソコン「DynaBook」にちなむ。

アラン・ケイは、GUIを搭載した片手で持てるA4サイズ程度の小型コンピュータで、子どもでも買える低価格なもの、テキストに加えて映像や音声も扱うことができ、それを用いる人間の思考を高める働きをするものを DynaBook と呼んだ。
これに基づき、ゼロックスのパロアルト研究所で暫定版として開発したのが、Smalltalkを動作させる Alto というミニコンであった。これは、後にスティーブ・ジョブズを刺激し、Macintosh を開発するきっかけになった。

J-3100SS は、A4サイズという点では DynaBook の要求を満たしていたが、まだWindowsは出ておらずMS-DOSというCUIベースのUIであり、映像や音声を扱えるだけの十分なメモリもなかった。20万円という価格も、「子どもでも買える」というレベルではない。
とはいうものの、1990年代に入ると、急速にノートPCが普及していくことになる。
また、この6年後、同じ DynaBook の流れをくむ Macintosh を買うことになる。
スペック
項目 仕様 コメント
CPU 80C86
10MHz
 
RAM 640KB + 896KB 最大 3,500KB
外部記憶装置 3.5インチ・フロッピーディスクドライブ(1.2MB/720KB)×1  
表示 640×400ドット,モノクロ液晶ディスプレイ ELバックライト付
バッテリー駆動時間 約2.5時間  
同梱ソフト 日本語MS-DOS
ATOK 7をROM搭載
 
外形寸法 幅310mm×奥行254mm×高さ44mm  
質量 約2.7kg  

1989年に発売された主なパソコン

メーカー
機種
発売時期
定価
CPU OSなど 主記憶
外部記憶
画像表示
富士通
FM TOWNS
1989年2月
33万8千円~
32ビット
386DX 16MHz
TownsOS
MS-DOS
Windows 3.x
1~2Mバイト
FDD
CD-ROM
別売HDD
1024×512ドット
256色カラー
FM音源6和音+PCM8チャンネル
EPSON
PC-286NOTE
1989年6月
45万8千円~
16ビット
V30 10MHz
MS-DOS 2.11 640Kバイト
RAMディスク
640×400ドット
8階調
NEC
PC-9801LX5C
1989年8月
74万8千円~
16ビット
80286 12MHz
N88-BASIC
MS-DOS
640K~3.6Mバイト
FDD
HDD
640×400ドット
8色カラー
NEC
PC-9801N
1989年10月
24万8千円~
16ビット
V30 10MHz
N88-BASIC
MS-DOS
640K
RAMディスク
640×400ドット
8階調
NEC
PC-H98
1990年1月
99万5千円~
32ビット
386DX 33MHz
N88-BASIC
MS-DOS 3.3
Windows 3.0
1.5~5.5Mバイト
FDD
別売HDD
1120×750ドット
256色カラー

参考サイト

これまでお世話になったコンピュータ

ぱふぅ家の歴代パソコン
(この項おわり)
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