中高生の携帯サイト事情

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プロフ
ネット上で簡単に自己紹介のページを作ることができる「プロフ」と呼ばれるサイトが、中高生を中心に急速に広がっています。

友達作りのツールとして重用されているのですが、個人情報を悪用したり、「出会い系」の温床になっているという指摘もあります。さらに「学校裏サイト」では学校別の掲示板が立てられたり、LINEやTwitterなどのSNSを悪用されるなど、いじめの原因になるケースもあります。

目次

プロフとは何か

ネットいじめのイラスト(女性)
プロフとは「プロフィールを載せたサイト」の略で、とくに携帯電話用プロフを指します。自己紹介の他、携帯カメラで撮影した写真を掲載できるようになっています。
百聞は一見にしかず――楽天グループが2002年(平成14年)から運用している「前略プロフィール」(2016年9月30日サービス終了)にアクセスしてみてください。会員でなくても簡単にプロフ検索ができます。
登録時には、氏名、年齢、住所から好きな食べ物やタレントまで、40に及ぶ多種多様な質問事項が用意されています。
楽天は、「前略プロフィール」利用者数を明らかにしていませんが、 ビデオリサーチインタラクティブによると利用者は2006年(平成18年)11月で約100万人。このうち半数が未成年者と見られています。
また、ブームプランニング の調査によれば、日本の女子高生の半数近くがプロフを所有しており、首都圏では7割以上にも達するといいます。

また、SNSの「Any」は、2007年(平成19年)10月3日、プロフを導入しました。従来は「血液型」「出身地」「職業」「趣味」「マイブーム」「所属」の6項目だった属性情報を、一気に56項目増やします。さらに、プロフのみをメールで交換しあえる機能を追加し、ユーザーの活発な交流を促す予定です。

一方、Niftyは2007年(平成19年)10月3日、無料プロフ作成サービス「アバウトミー」を、ライブドア、はてな、ペーパーボーイ&コー、シックス・アパートの会員IDでも使えるようにしました。現在の利用者数は1万2000人。さらにユーザー拡大を目指す考えです。
(※)前略プロフィールは、2012年(平成24年)1月1日付で楽天から、占い関連を中心に携帯向けコンテンツを展開しているザッパラスに事業移管されます。DeNAのプロ野球参入に対して疑問を呈していた楽天の三木谷社長ですが、前略プロフィールを挙げて楽天の矛盾を問う声も大きく、事業撤退を模索していたようです。

プロフに掲載される個人情報

前略プロフィール」は個人情報の掲載や暴力的な表現は禁止しています。しかし、検索すると分かりますが、実名、住所、在籍校・クラスを記入している人が少なくありません。中学生が多いような、個人情報を晒すことに対する防衛意識がまだ弱いのかもしれません。
東京都町田市立南中学校では、2006年(平成18年)11月、保護者から「プロフから個人情報が流出する恐れがある」という指摘を受け緊急の保護者集会を開きました。副校長は「子どもたちには、不特定多数の人に見られてしまうことへの認識が薄い」と語っています。

前略プロフィール」の登録数は2006年(平成18年)から急増したといわれており、楽天側も「登録件数が多く、問題の発覚は多くは通報がきっかけ」と、対策が後手に回っていることを明らかにしています。
これに呼応するかのように、2006年(平成18年)秋頃から、財団法人インターネット協会には、中学校などからプロフ関連の問い合わせが寄せられるようになりました。
裸の写真を載せて援助交際を求めるプロフもあれば、掲示板に本人を中傷する書き込みも目立っていると言います。

プロフをめぐる事件

2008年(平成20年)4月23日、千葉県警柏署は、柏市内の緑地で中学3年男子生徒(14歳)の頭を金属バットで数回殴り殺害しようとしたとして、17歳少年を殺人未遂の現行犯で逮捕しました。
前略プロフィール」での悪口の応酬がエスカレートし、暴行に繋がったとみられています。
2人はプロフを通じて半年ほど前に知り合い、実際に会うのは事件当日が初めてでした。殴られた生徒は、頭の骨を折り意識不明の重体とのこと。

2010年(平成22年)8月、ゲームサイトやSNS、プロフなどの非出会い系サイトを利用して犯罪被害にあう子どもたち(18歳未満の者)が増え続けていることが、警察庁のまとめで判明しました。→平成22年上半期の出会い系サイトに関係した事件等の検挙状況について【PDF】
いわゆる出会い系サイトに関係して犯罪被害にあった児童は前年同期比46.8%(124人)減の141人と、ここ数年来の減少傾向が続いている。一方、非出会い系サイトを利用して犯罪被害にあった児童は、前年同期比10.3%(56人)増の601人と増加を続け、ともに出会い系サイトを上回る結果となっています。
見るからに怪しげなサイトや危険なサイトは、フィルタリングが排除してくれます。ところが、子どもたちが被害に巻き込まれるサイトには、そのような雰囲気など微塵もなく、フィルタリングでも排除されていません。

プロフの中には、本人でない悪意を持った第三者が作成した「なりすましプロフ」もあります。
本人になりすまし、偽のプロフィールを登録したり、掲示板で友人・知人の悪口を書いたりすることで、いじめの矛先が本人に向くように仕向けるという、計画的で悪意に満ちたものです。

2016年(平成28年)9月30日、前略プロフィールはサービスを終了しまう。個人情報については規約に基づき、同社が責任をもって消去するとのことです。

学校裏サイト

学校裏サイト
さらに、全国各地に「学校裏サイト」と呼ばれるサイトが存在しており、学校別に掲示板が立てられ、なかには学年別にスレッドが立てられるものまであります。もちろん非公式サイトで、実名をあげて、誹謗中傷まがいの言葉も飛び交っています。
最近、こうした「学校裏サイト」を通して、「いじめ」が発生することが増えているといいます。
ネットの常として、場所や時間を超えて、恐ろしいスピードで情報が拡散します。このため、放課後に書き込みがあり、翌日登校すると、いじめられるというケースがおこります。
親や教師がネットを監視しても、スレッドにパスワードを付けるなどして把握させないようにする手口も広がっているといいます。

早期に警察に通報すべきいじめの具体例

文部科学省は、2013年(平成25年)5月17日、早期に警察に通報すべきいじめの具体例をまとめ、都道府県と政令市の教育委員会などに通知しました。

インターネットによるいじめについても詳しく解説しています。「学校に来たら危害を加えると脅すメールを送る」(脅迫罪)、「サイトに実名を挙げ、『万引きをしていた』『気持ち悪い』『うざい』などと悪口を書く」(名誉毀損きそん罪、侮辱罪)などの事例を挙げています。

ネットいじめ

2007年(平成19年)6月8日、さいたま市内の私立高校で、実際に起きた「いじめ」を撮影した動画が携帯サイトに投稿されていることが明らかになりました。この高校は、サイト管理者に映像削除を求めるとともに、全校集会を開き、「いじめは絶対にいけないし、インターネットに個人情報を載せてはいけない」と指導したとのこと。

警察庁のまとめによると、ネット上での名誉棄損や中傷をめぐる被害相談の件数は年々急増しています。2002年(平成14年)は2,566件だったものが、2006年(平成18年)は8,037件にのぼり、2007年(平成19年)1~6月は前年同期比573件増の4,202件となりました。
相談者の中には中学・高校の女子生徒が目立ち、書き込んだ「加害者」もその知人が多いとみられています。恋愛のもつれやいじめがエスカレートしたとみられ、顔やスカートの中の写真を並べて掲載したり、集団で悪口を書き込んだりする悪質な事例もあります。
一方、ネット上の書き込みに関連し、警察が名誉棄損容疑で摘発したのは2002~06年で毎年数十件程度。摘発までいかないのは、個人的なことには関与しないと捜査に非協力的なサイト管理者もいることや、知り合いの被害者が今後の学校生活を考慮して処罰に後ろ向きなためといいます。

2009年(平成21年)7月、三重県教育委員会の調査によると、県内に健全なサイトを含めた6,213サイト(中学校1,085サイト、高校5,128サイト)の学校非公式サイトがあることが確認されました。この中には中高校生による問題のある書き込みが315件見つかり、同級生らへの中傷など危険度が高い書き込み83件の削除をサイト運営事業者に依頼したとのことです。
2009年(平成21年)11月、熊本県教育委員会の調査によると、中学、高校各35校の計70校で487件(中学100件、高校387件)の不適切な書き込みが見つりました。「プロフ」と呼ばれる自己紹介サイトやブログに書き込まれている例が多く、内訳は、
  1. 個人情報の流布413件(84.8%)
  2. いじめ・中傷32件(6.57%)
などとなっています。早期の指導・対応が必要な「リスクレベル中」が28件あり、うち25件は中学校で、先生や生徒の個人名を挙げて中傷する書き込みが目立ちました。
奈良市教育委員会によると、2009年(平成21年)4~9月に奈良市の小中学生がインターネット利用で受けた嫌がらせなどの被害報告が20件あったことが分かりました。
被害報告の内訳は、小学校3件、中学校17件で、児童・生徒が設けているブログへの中傷書き込みと嫌がらせメールが15件に上ったとのこと。ワンクリック詐欺被害に遭いそうになった例もありました。
被害やトラブルの報告は調査を始めた2007年度は32件、2008年度には46件に増加し、特に中傷書き込みなどの割合が増えているといいます。
日本PTA全国協議会の2009年度調査によると、携帯電話を持つ中学2年生の61%が、いたずらなどが目的で不特定多数へ転送を求める「チェーンメール」受信について、「時々ある」(53%)「よくある」(8%)と答えたことが分かりました。
受信時の対応は「無視」が63%に対し、「返信・転送」も9%ありました。また、小学5年の受信経験は「時々ある」12%、「よくある」1%でした。
チェーンメールをめぐっては、嫌がらせ目的で同級生の画像や個人情報を送り付け、「転送しないと次の標的になる」と迫る悪質なケースも出ているといいます。
共同通信(2010年5月13日)より
2011年(平成23年)11月、文部科学省は学校裏サイトなどのネット監視を強化する方針を固めました。
また、2011年度中に「学校ネットパトロール資料集(仮称)」を取りまとめ、全国の教育委員会に配布する予定です。
2009年度から学校非公式サイトを監視している東京都教育委員会は、2011年度中に11,438件の不適切な書き込みが見つかったと発表しました。件数自体は微減傾向にあるものの、安易にメールアドレスなど個人情報を公開するケースが増えています。
都教委は、小学3・4年生と中学1年生に向けて「自分のことを知らない人に教えない」などの注意事項を記したリーフレットを配布。個人情報を公開してトラブルに巻き込まれるなど、4つの事例を10分間のドラマに仕立ててある啓発用DVDも配布しました。
東京新聞(2012年7月17日)より
2013年(平成25年)10月の鹿児島県教育委員会の調査によると、鹿児島県内の公立中高94校にからんだ不適切な書き込みが404件見つかり、このうち365件を個人名や学校名などを書き込む「個人情報の流布」が占めていました。プロフやブログなどに本名や学校名、生年月日、写真などが書き込まれていたもの。
また、「ウザイ、浮いているヤツ」などと他人を中傷する「いじめ・中傷」の書き込みは10件。学校自体を中傷するなどの「その他」が28件。高校生が電車内で無断で乗客を撮影し、その画像をツイッターに投稿した「不法行為」が1件見つかりました。

学校裏サイトは減らない

2013年(平成25年)8月現在、学校裏サイトへの書き込みは減っていないといいます。オープンな掲示板から会員制サイトに移行し、警察が捜査できないよう海外のサーバーを使うケースもあるようです。

ネット監視大手ガイアックスは、「パトロールできるのは誰でも閲覧できるサイトだけ。『ミクシィ』や『モバゲー』などの会員制サイトやメール、無料通信アプリの『LINE』などでのやり取りは法律上監視できない」という。
監視に限界がある以上、ネット情報の受け取り方を工夫する必要があります。

NPO法人「青少年メディア研究協会」の下田太一理事長は、「子供たちは欠けた情報を勝手な『思い込み』で補い、心理的に追い詰められる。場の雰囲気や空気が読めないネットコミュニケーションの特性を理解できれば、ネット上の言葉に対するフィルターや抗体ができ、不快な言葉を問題視しなくなる」と主張しています。
産経新聞,2013年8月29日より
東京都教育委員会の調査によると、2018年(平成30年)土には調査対象2145校のうち494校(23.0%)で学校裏サイトが発見されました。LINEなどのSNSは含まれておらず、実際にはもっと多くの学校裏サイトがあるとみられます。
2007年(平成19年)に起こった私立高校生の自殺事件は、学校裏サイトによる悪質ないじめが引き金になったとされています。サイト上での誹謗中傷だけでなく、写真などの個人情報も晒されました。
2014年(平成26年)以降、LINEが普及すると、いわゆる LINEいじめLINEはずしをきっかけとした中高生の自殺も相次いでいます。Twitterの鍵アカウントを学校裏サイトとして悪用しているケースもあります。
SNSは秘匿性が高く設定することが可能で、検索エンジンにも補足されず、いじめがエスカレートしやすい傾向にあります。

株式会社ネイキッドテクノロジーは学校裏サイトチェッカーを提供しており、2020年(令和2年)8月現在、2万件あまりの学校裏サイトが登録されています。

フィルタリング導入の動き

携帯フィルタリング
2007年(平成19年)10月、内閣官房の「インターネット上における違法・有害情報等に関する関係省庁連絡会議」(IT安心会議)は、警察庁の監視態勢を強化し、担当省庁による相談窓口を充実させるなど、本格的な対策に乗り出すことを提言しました。

さらに、有害サイトの閲覧を制限する携帯電話向けのフィルタリングソフトの導入も促進するといいます。
2007年(平成19年)11月、文部科学省は「平成18年度 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」結果を発表しました。いじめ件数は前年対比で6倍以上、124,898件に跳ね上がりました。
この報告によると、「いじめの態様」として、「パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる」は4,883件で、全体の3.9%に及びます。
しかし、現場からは、ネットいじめについては「皮膚感覚では5、6倍はある」「パケット定額制の導入と、携帯電話の高機能化が進んだ時期と重なる」といった指摘も出ています。

2007年(平成19年)11月、ガイアックスが、学校裏サイトを発見・監視するサービス「スクールガーディアン」を始めました。民間企業がこの種の業務を手掛けるのは全国初といい、全国の学校、教育委員会から問い合わせが相次いでいるそうです。
2008年(平成20年)6月、楽天はガイアックスと提携し、自社が運営する「前略プロフィール」の監視を強化することを発表しました。他人を中傷するような不適切な書き込みがあった場合に、担当者が素早く把握して楽天側に削除依頼を送るとのことです。

2008年(平成20年)9月、全国webカウンセリング協議会は、「学校裏サイト リンク集」を、教育関係者限定で公開しました。全国10万5178件の学校裏サイトを検索できます。(2020年12月現在、アクセス不能)

2009年(平成21年)1月、さいたま市の市立中学に通う3年の女子生徒(当時14歳)が、2008年(平成20年)7月にネットでのいじめを受け、約3カ月後に自殺していたことが報道されました。生徒は自己紹介サイト「プロフ」上に悪口を書かれており、遺書には「書き込んだ生徒を許さない」という内容が記されていたといいます。

学校への携帯電話持込禁止の動き

そんな中、2008年(平成20年)12月、大阪府の橋下徹知事は、児童・生徒に広がる「携帯電話依存」の弊害を指摘し、学校への携帯電話持ち込み禁止の徹底などを児童・生徒らに呼び掛けました。これは「依存症」をクローズアップしたものであり、プロフや学校裏サイトの取り締まりを行うものではないことに注意が必要です。

ネットエイジアが保護者にアンケート調査を行ったところ、約7割が学校への携帯電話持ち込み禁止に賛成という結果が出ました。「学校内では必要性がないから」「授業・勉強の妨げになる」といった短絡的な理由が多いことが気になります。

2009年(平成21年)1月に発覚した女子中学生の自殺事件を受け、文部科学省は全国の公立小中校への携帯電話持ち込み禁止の検討を始めたようです。しかし、学校へ携帯電話を持ち込ませないからといってプロフへの書き込みができなくなるわけではないので、この対策には疑問を感じます。

2009年(平成21年)6月、石川県は小中学生に携帯電話を持たせないよう保護者に努力義務を課した「いしかわ子ども総合条例」の改正案を可決しました。罰則規定は設けていないものの、携帯電話の所持を規制する条例は全国初。2010年(平成22年)1月から施行されます。
条例改正案では、携帯電話の利用制限について青少年の年齢、発達段階に考慮して対応するよう保護者に求め、「特に小中学生には携帯電話を持たせないよう努める」と明記。一方で、防災、防犯など特別な目的がある場合は除外するとしています。

コミュニティサイトで犯罪被害

2011年(平成23年)2月、警察庁はコミュニティサイト(非出会い系)を通じて犯罪の被害に遭った18歳未満の子供が増加していることを発表しました。(「平成22年中の出会い系サイト等に起因する事犯の検挙状況について
関係者によると、きっかけになったサイト別では、携帯ゲームで有名なサイト「GREE」が突出しているということです。サイト監視業者によると、他のサイトでは「個人情報のチェックが緩いGREEで連絡を取ろう」といった“誘い出し”の書き込みも見られるといいます。

親と子どもの認識にズレ

迷惑メール 2008年12月、「人力検索はてな」で「100人に独自アンケートをとったところ」、子どもがいない方が7割でしたが、「あなたのお子さん(お子さんがいない方はご自身)が小中学生だったとして、持込を禁止させることはできますか?」という質問に対して65%の方が「はい」と答えています。 また、「携帯電話を持つのにふさわしいと思う時期」については「高校生」が36%と最も多くなっています。
ただ、「子どもの有無」と「持込禁止にできるか」のクロス集計を行ってみると、サンプル数は少ないものの、「中学生の子どもがいる」方の6割以上が「持込禁止にできない」、「高校生の子どもがいる」方では「持込禁止にできる/できない」が半々という結果になりました。
小学生はともかく、中高生がいるご家庭では、学校への持ち込みを禁止するのは難しいのではないでしょうか。

ピーネストが、無料ホムペ作成サイト「@peps!」「Chip!!」ユーザーの女子中高生にアンケート調査を行ったところ、女子高生の44%、女子中学生の62%が、小中学校への携帯持ち込み原則禁止化に反対しているという結果が出ました。

ガイアックスが2008年(平成20年)7月から1年間にわたってアンケートを実施したところ、学校教員の65%が「トラブルが起きたことがある」と答えました。一方で、保護者の「ある」という回答は14%にとどまり、実態に気づいていない親が多い様子が浮き彫りになった形です。

シマンテックは2011年(平成23年)11月22日、子どものインターネット利用やそれに対する保護者や教師の意識などを調査した報告書「ノートン オンライン ファミリー レポート2011」を発表しました。それによると、保護者や教師が気を配る以上に子どもはインターネットを利用している実態が分かりました。(ネット利用についてとことん語ろう、子どもと親と教師の意識が明らかに,2011年(平成23年)11月22日 ITmedia)

どうやら、親と子どもの間に認識のギャップがあるようです。

必要なのはリスク意識

しかし、児童・生徒が運営する非公式な学校サイトがすべて学校裏サイトというわけではありません。ふだん交流がないクラスの間でのコミュニケーションツールとして利用されているケースもあります。
ただでさえ子どもの数が少ないうえ、帰宅後すぐへ塾へ通うような状況では、こうした書き込み型のツールは有用なものです。

また、学校から塾へ直行している一方、公衆電話が激減している状況では、携帯電話が子どもの安全を確保するうえで重要なツールとなっていることはいうまでもありません。

問題なのは、プロフや非公式な学校サイト、携帯電話ではありません。
プロフに個人情報を載せなくても、メールなどの連絡先があれば悪い大人から勧誘されてしまうでしょう。また、非公式学校サイトを閉鎖したり、携帯電話を取り上げるのでは、かえって子どものコミュニケーション機会を奪い、安全確保を後退させることになりかねません。

必要なのは、ネットに対するリスク感覚です。
生活を便利にするツールには、その裏側に必ずリスクが付きまといます。不正請求やオレオレ詐欺で明らかなように、手紙や電話にもリスクはあるのです。
ですから、リスクをゼロにする議論はナンセンスであり、そのリスクとどう付き合っていくかという意識を持つことが大切です。

ネットのリスクについて家族の合意形成を

イラスト
では、ネットのリスクとどう付き合っていけばいいでしょうか。

小学生であれば、携帯用のフィルタリングサービスを導入するなどのリスク管理が考えられます。しかし、中高生にもなると、そういったサービスを解除する知恵が出てきます。また、援助交際の相手から連絡用に携帯電話を渡されることもあるわけで、「禁止する」というルールでは意味をなしません。
プロフについては、友達の輪を広げるというメリットがあります。一方で、個人情報を晒すことによるデメリットがあります。このメリット=デメリットの関係を「リスク」として、子どもにしっかりと教えることが大切だと思います。
「学校裏サイト」の存在は、ネットによって発生した問題というより、「いじめ」という事象がネットを通じて加速されているだけなので、まず、「いじめ」問題について子どもと一緒になって話していくことが必要でしょう。
しません。

いずれにしても、親が携帯電話を買い与えている以上、それとどう付き合っていくか、大人の商売の餌食にされないにはどうしたらいいか、といった点について、家族で合意形成していくことが大切です。

2008年(平成20年)9月、インターネットやデジタル機器等の、技術発展や利用者の利便性に関わる分野における、意見の表明・知識の普及などの活動を行うことを目的とする団体「MIAU」(Movements for Internet Active Users (MIAU;インターネット先進ユーザーの会)が、青少年に対するネットリテラシー教育のための読本「”ネット”と上手く付き合うために」を公開しました。クリエイティブコモンズ「表示・継承」ライセンスによる公開であり、無償で利用でき、複製・配布なども自由に行うことができます。家庭や学校で活用されてはいかがでしょう。

2008年(平成20年)11月20日、文部科学省は、「平成19年度「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」について」を公表しました。この調査は、都道府県の教育委員会などを通じて全国の国公私立の小中高等学校を対象に、毎年行っているものです。
調査結果をみると、「いじめ」の総数は減少している一方で、「携帯電話などで誹謗中傷や嫌なことをされる」いわゆる「ネットいじめ」は前年度の4,883件から5,899件と、20.8%も増えています。
文部科学省は、対策の一環として、学校・教員向けにネットいじめ対応マニュアルを作成し、ホームページで公開しています。

2008年(平成20年)12月にキッズgooが行った調査結果によると、携帯電話を利用している小学生は全体の6割以上にのぼりました。とくに、自分専用の携帯電話をもっているという児童の割合は43.4%と、1年前の調査より9ポイントの増加となりました。
一方で、ルール設けていない家庭は45.9%から43.5%と減少し、何らかのルールを設定している家庭が増加していることがわかりました。ルールの内容としては、「利用する機能について」「電話やメールの相手について」「利用する時間帯」は前回より増加したものの、前回最も多かった「利用料金について」は25.0%から20.0%と減少しました。

苦情や相談

ネットの誹謗中傷のイラスト(男性)
お子さんが悪質な学校裏サイトなどで被害を受けたときには、親として対外的なサポートをしよう。
まず、悪質な投稿の法的性質を明らかにする。実名を挙げて「死ね」など身体の危険をともなう書き方が為されていれば「脅迫」、金品や役務を要求しているなら「強要」、学校や部活での評判を下げるようなものであれば「名誉毀損」「侮辱」、勉強に支障を来すようであれば「業務妨害」とも言える。
サイトへの苦情申請
SNSや大手ブログでは、誹謗中傷を受けた場合の苦情窓口を用意している。まず、そこへ投稿しよう。ブログ窓口の対応が遅いようであれば、運営会社や親会社に直接メールするのも有効だ。大手サイトでは、法的性質が明らであれば対応してくれる。
行政への相談
苦情申請に応じてくれなかったり、個人サイトが相手の場合は、警察庁インターネットトラブルが窓口になる。各都道府県警に「こどもの110番」が設置されており、ここに相談してもいいだろう。法務省の人権相談もある。

弁護士に相談
これは最後の手段となる。費用もかかるし、かならずしも解決する保証はない。
まずは、費用のかからない法テラスに相談してみるといいだろう。

参考サイト

参考書籍

表紙 ネットいじめ
著者 荻上チキ
出版社 PHP研究所
サイズ 新書
発売日 2008年07月
価格 814円(税込)
ISBN 9784569701141
インターネットはいじめの温床、匿名ゆえに陰湿な誹謗中傷の嵐。「子どもたちを守れ!」を合言葉に、ネットやケータイの使用規制が叫ばれる。はたしてこれで、いじめは減るのか?「学校裏サイト」を利用する子どもたちの生の声を分析すると、ネット空間は現実の人間関係の延長にあり、要は使う人間の質と環境が問題だとわかる。そしてそこには、空気を読まなければ叩かれる現代の若者事情が見え隠れする。学校でも、職場でも簡単に見えるようになった“陰口”。この息苦しさの正体が明らかになる。
 
表紙 ケータイ・リテラシー
著者 下田博次
出版社 NTT出版
サイズ 単行本
発売日 2004年12月
価格 1,760円(税込)
ISBN 9784757101432
あなたの子どもは本当に安全ですか?出会い系、援交、殺人、強盗、強姦…。犯罪に巻き込まれないために今、子どもに教えるべきパーソナル・メディア時代に必要な知識とは。
 
表紙 10歳からのルール100
著者 タカクボジュン/斎藤次郎
出版社 鈴木出版
サイズ 全集・双書
発売日 2007年04月
価格 2,750円(税込)
ISBN 9784790231875
 
表紙 インターネットの法律とトラブル解決法
著者 神田将
出版社 自由国民社
サイズ 単行本
発売日 2009年10月
価格 1,760円(税込)
ISBN 9784426108090
本書では、インターネットに関連した問題を取り上げて解説し、また、インターネットトラブルに法律がどう適用されて解決されるかについても解説してあります。ほぼ問題点を網羅した、インターネット利用者のための実用書です。
 
(この項おわり)
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