マイナンバー制度とは何か

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2013年(平成25年)5月、国民一人一人に番号を割り振り、社会保障、税、災害対策の分野で情報管理を行う「マイナンバー制度」(正式名称:社会保障・税番号制度)は、2015年(平成27年)10月に国民一人一人にマイナンバーが通知され、2016年(平成28年)1月から運用を開始します。

通知カードは世帯単位で簡易書留で送付される予定で、住民票に登録されている住所に届きます。やむを得ない理由により住民票の住所地で受け取れないような人に対し、総務省は「東日本大震災による被災者、 DV・ストーカー行為等・児童虐待等の被害者、 一人暮らしで長期間医療機関・施設に入院・入所されている方」という案内を掲げています。

マイナンバー制度とは

マイナンバー制度
マンナンバー制度は、社会保障、税、災害対策の分野の中で、法律で定められた行政手続きにしか利用できないことが決まっています。
2015年(平成27年)10月に国民一人一人にマイナンバーが紙により通知され、2016年(平成28年)1月から運用を開始します。
マイナンバーは、たとえば年金や雇用保険の資格取得や確認、給付で利用されます。サラリーマンの方は、勤務先にマイナンバーを提示源泉徴収票などに記載します。
マイナンバーのメリットは3つあります。
1つめは、所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行えるようになります。(公平・公正な社会の実現
2つめは、添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民の負担が軽減されます。また、行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ったりできるようになります。(国民の利便性の向上
3つめは、行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されるようになります。(行政の効率化

マイナンバーは、健康保険の給付請求には利用できますが、医療・介護の現場では利用できないことになっています。カルテや処方箋の情報は一元管理されないということです。
2015年(平成27年)5月、政府は医療分野で遣う新しい番号制度の検討を始めました。
結局、私たち一人一人に保険証記号番号、住民票コード、マイナンバーに加え、さまざまな番号が割り当てられることとなり、本当に行政の効率化がはかられるのかは不透明と言わざるを得ません。

マイナンバーは変更できない

2015年(平成27年)6月、日本年金機構が約125万件の年金情報を漏洩するという事故が起き、対象者の基礎年金番号を変更することになりました。

一方、マイナンバーは原則として番号を変更することができません。
万全のセキュリティ体制を敷いているとはいえ、絶対に漏洩しないというシステムは存在しません。インシデントが発生した場合の運用がどうなっているのか、公開してほしいところです。

マイナンバーと基礎年金番号の連結を、当初予定の2016年(平成28年)1月からは実施せず、延期することになりました。日本年金機構の情報流出問題を受け、機構が取り組む組織改革の進捗状況を見ながら連結時期を決める必要があると判断したものです。

番号法

マンナンバー制度は、番号法(正式名称:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)によって規定されています。マイナンバーの適正な取り扱いを確保するため、内閣府の外局として「特定個人情報保護委員会」(PPC)という組織が設置されました。
マイナンバーは特定個人情報として、個人情報保護法とは別の枠組みで管理されるということになります。

マイナンバー制度に対する反対意見

このように便利なマイナンバー制度ですが、なぜ反対する人がいるのでしょうか。

国に所得状況を把握されることを嫌っている人たちがいるというのが、一般に流布されている反対者像です。
しかし、私のようなサラリーマンは、所得明細までも国に把握されています。そもそも所得が把握されるのが困るというのは、何か後ろ指を指されるような部分があるためでしょうから、こういう人がそれほど多いとは思えません。
それよりも、日本医師会が言うように、国民が知らないところで健康・医療にかかわる個人情報が分析されることの懸念の方が大きいでしょう。
たとえば昨今の増税ブームに便乗し、肥満税(※)が導入されたら、個人的には困ります。そうでなくとも、喫煙歴や飲酒量を分析され増税されたら、多くの人は嫌な気分になるのではないでしょうか。
(※)メタボリックシンドロームは将来の医療費を高騰させる原因であるから、該当する国民には相応の負担――たとえば保険料の自己負担率を上げる、所得税率を上げるなど――をしてもらうという大義名分のもと、共通番号で管理される健診・受診履歴を分析され、メタボリックシンドローム該当者を抽出することは簡単にできそうだ。

まだ決まっていない「番号」

かつては「国民総背番号制」とも呼ばれ、大蔵省が脱税防止のために導入を推進してきた納税者番号が発端でした。1980年(昭和55年)にはグリーンカード(少額貯蓄等利用者カード)制度のための法案が成立しましたが、国家による監視を懸念する声が高まり、開始直前に廃案になってしまいました。
2002年(平成14年)8月の住民基本台帳ネットワークシステムの稼働と共に割り当てられた住民票コードは、住民票としてしか利用できない番号でした。

2011年(平成23年)6月に公表された「社会保障・税番号大綱」では共通番号制度と呼ばれており、マイナンバー制度の基盤になる共通番号については「住民票コードに一対一対応」ということしか決まっていません。その後、「マイナンバー」という名称になることが決まりました。

住民票コード(11桁)については、住基カードの偽造が横行していることから、すでに漏洩していると見ていいでしょう。住民票コードがそのまま使われるということはないと思います()。
となると、マイナンバーと住民票コードを結びつけるためのシステムが必要になります。
それだけではありません。マイナンバーは、基礎年金番号、健康保険証記号番号、等々、あらゆる行政サービスの「番号」と結びつけられなければなりません。
逆に言うと、マイナンバーを知られてしまうと、あらゆる行政サービスに対してなりすましができることになります。
こうした個人情報漏洩事故を防止するために堅固なシステムが必要で、その導入費用は5000億円以上と、住民基本台帳ネットワークの10倍以上のコストがかかると試算されています。さらに、毎年500億円以上の運用費用がかかると言います。金額的には史上最大の公共事業事業システムになります。

大綱では、個人情報漏洩を監視するために内閣府に第三者委員会を設置することが記されていましたが、その後、与党内部の反対に遭って消滅しています。

大綱では、マイナンバーを付番するための「付番機関」の設置がうたわれています。これは天下り機関になる恐れがあります。

このように課題山積の状況では、2014年(平成26年)6月に付番開始するのはとてもではないが間に合わず、グリーンカードの二の舞になるのではないかという懸念も聞こえてきます。
このコーナーでは、今後もマイナンバーの動向をウォッチしていきます。
(※)11桁の番号になるらしいという情報は、住民票コード(10桁のコードと1桁のチェックデジット)と混同しているものと思われる。

制度設計

2011年(平成23年)11月、民主党の検討チームによる制度設計原案の全容が明らかになり、総額約5000億円に上る導入経費を削減するため、健康保険証や年金手帳などの機能を1枚にまとめたICカードと、個人情報を利用者が確認できるインターネットサイト「マイ・ポータル」の当初導入をいずれも見送る案と、推進する案の両論を併記することになりました。削減案では、製造コストの高いICカードではなく、低コストの紙カードやプラスチックカードの利用も検討するなどして、約1100億円削減するといいます。
また、各省庁が持つ個人情報を一元化する「情報連携基盤」の所管を内閣府とすることを軸に検討することになりました。

個人情報の漏洩を監視する第三者機関は、公正取引委員会のように他の行政機関から独立した国家行政組織法上の「三条委員会」とし、強い権限を持たせるよう求めています。

野田政権は2011年(平成23年)12月16日、マイナンバー制度の法案の概要を決めました。2012年(平成24年)の通常国会に出す予定です。消費増税をしたときの低所得者向けの給付にも活用するとしています。
この法案が成立すれば、以下のように段階的に制度がスタートします。
  • 2014年6月 個人と企業に番号を割り振る
  • 2015年1月以降 全国民にICカードを配布,年金相談や確定申告サービス開始
  • 2016年 パソコンで個人情報を確認できる

世論調査

2011年(平成23年)11月に内閣府が行った「社会保障・税の番号制度に関する世論調査」によると、マイナンバー制度について、「必要」と「どちらかと言えば必要」の回答が計57.4%に達しました。「必要ではない」「どちらかと言えば必要ではない」は計27.3%でした。ただ、「内容まで知っている」は16.7%に過ぎず、「知らない」は41.5%で知名度の低さも浮き彫りになった形です。
読売新聞,2012年1月29日より

マイナンバー法案可決の見通し

2012年(平成24年)2月14日、野田政権はマイナンバー制度法案を閣議決定しました。今国会に提出します。
2013年(平成25年)5月24日、マイナンバー制度関連法が参院本会議で自民、公明両党と民主党、日本維新の会、みんなの党などの賛成多数で可決、成立しました。

計画では、2015年(平成27年)中に通知カードにより番号が国民に通知され、2016年(平成28年)1月から社会保障分野、納税、災害対策分野で利用が始まります。希望すれば顔写真付きの個人番号カードも交付されます。
原則として、他人に個人番号の提供を求めること、個人番号付き個人情報の収集・保管は禁止し、民間は情報提供システムを利用できず、自宅PCなどから情報提供の記録を確認できる「マイ・ポータル」を提供するなど、個人情報保護策を十分に講じるとしています。

2013年(平成25年)にシステムの要件定義と調達を行い、2014年(平成26年)から設計、開発に入ります。

2015年(平成27年)5月21日、マイナンバーを金融機関の預金口座にも適用する改正案が衆院本会議で可決されました。

個人の治療情報管理も検討

2013年(平成25年)4月、田村厚生労働大臣は、「診療情報や治療情報を、個人が特定できない形にしながら、収集・分析していけば、有効な治療方法などが導き出される有効性は十分にある」と述べ、将来的に共通番号を患者の治療情報などの管理に活用するかどうかは、個人情報の保護を考慮しながら、検討したいという考えを示しました。
NHK,2013年4月11日より

参考サイト

(この項おわり)
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