『「激安」のからくり』――安ければいいのか?

金子哲雄=著
表紙 「激安」のからくり
著者 金子哲雄
出版社 中央公論新社
サイズ 新書
発売日 2010年05月
価格 814円(税込)
rakuten
ISBN 9784121503497
イトーヨーカドーの売場は、まるでロボットが機械的に発注しているかのように、緻密で完壁なものでした。(128ページ)

概要

POP素材「激安」
880円ジーンズ、100円バーガー、3万円パソコン等々は、なぜ安くできるのか。その仕組みをわかりやすく説明してくれる。

本書を読んで感じたことだが、いつも/すべての商品について安売りのものを買うのは“ヤバイ”ということである。中には粗悪品もあるし、めぐりめぐって自分(労働者)の実入りを減らす結果になるからだ。よくよく調べて買うものでなければ、“フツー”の値段のものを買っていた方が良さそうである。

レビュー

たとえば3万円以内で入手できるパソコンであるネットブックは、世界中から余った部品を集め、「寄せ集め型低価格戦略」で発展途上国向けに生産されたものが、たまたま世界的にブレークしてしまったのだという。課題として、「たとえば世界経済が好調となり、余った部品がなくなると、このビジネスモデルは崩れ」(47ページ)るという。
消費者として、安かろう悪かろうの商品には手を出したくない。

遠洋漁業では、「日本人は人件費が高いので、日本人船長は飛行機でケープタウンまで行き、現地で船に乗ってもらい、日本へ帰るときも飛行機で帰ってもらう」(78ページ)という例もあるという。「現地集合、現地解散」することで、人件費を安くしようという考え方だ。
こうなると、労働者の手取りは減ってしまう。

「客の利便性に最大限配慮しようとした結果、商品回転率などの数値は悪化し、ダイエーの経営状態は瀕死の状態」(130ページ)になったという。
これは、経営者としては頭の痛い問題だろう。
本書の終盤では、中内功(ダイエー)、鈴木敏文(イトヨーカドー)、柳井正(ユニクロ)、安田隆夫(ドン・キホーテ)の安売り哲学を説明している。安売りというのは、カリスマ経営者なしでは成り立たないようだ。
(2011年5月6日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
header