私たちは文明によって家畜化された

藤田紘一郎

発言者

  藤田紘一郎 (ふじた・こういちろう) 藤田紘一郎
  東京医科歯科大学名誉教授、寄生虫学
   
  2003年8月28日

場面

私たち人類は他の動物とは違って、人類が自ら作り上げた「文明」に規定されながら進化してきました。しかし、気がついてみると私たちは、いつの間にかその「文明」に飼い慣らされていました。私たちは、自分たちの作った文明によって「家畜化」されていたのです。
ウッふん」」(藤田紘一郎/講談社)61ページより。

コメント

日本人の体内に寄生虫がいなくなったことが、アレルギー疾患を増加させていると唱える、“寄生虫博士”こと藤田紘一郎の言葉である。

昨日、新潟県中越沖地震が発生した。こうした大震災が起きるたびに、水道、ガス、電気といったライフラインが無いとヒトは生きてゆくことができないと痛感する。さらに最近では、携帯電話もライフラインの1つに加わったとみていい。
大昔、といっても千年くらい前の世界で、生きていくために不可欠なライフラインというものがあったのだろうか。少なくともガスと電気はなかった。飲料水は生きていくために欠かせないものだが、井戸を掘り、川の水を飲んで、渇きをいやしたはずだ。
文明は、私たちの暮らしを便利に、豊かにした。それを否定するつもりはない。だが、その結果、失われたものが無いと言えるだろうか。

被災地の方には申し訳ないが、3年前に発生した新潟県中越地震の際は、家屋の圧死から逃れるために自家用車の中で寝泊まりした結果、エコノミークラス症候群で倒れる人が続出した。私たちは、何か大切なものを失いつつあるような気がしてならない。
(この項おわり)
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