労働基準法と労働時間

2010年5月25日 作成
労働基準法(いわゆる「労基法」)が改正され、2012年(平成24年)4月1日に施行される。
ここでは、改正ポイントとなっている
  1. 時間外労働の削減
  2. 年次有給休暇の有効活用
の2つにスポットを当ててみたい。残業が多いビジネスマンの方は、勤務している会社がルールを守っているかどうか、一度確認することをお勧めする。

労働時間と残業時間

労働時間
使用者の指揮監督下にある時間を「労働時間」と呼ぶ。
労働時間に含まれるもの‥‥会社の敷地に入ってから実際の作業場に到着するまでの時間、強制力のある研修、昼休みの来客当番など。
労働時間に含まれないもの‥‥通勤時間、昼休みなどの休憩時間、着替えの時間など。

労働基準法では、1週間について40時間を超えて、また1日8時間を超えて労働させてはならないことが明記されている(労基法第32条)。
法定労働時間を超えて作業をすること、つまり「残業」のことを「時間外労働」という。また法定休日に労働させることを「休日労働」という。
使用者が労働者に時間外労働や休日労働を行わせる場合には、事前に労基法第36条に基づき、労働組合(またはそれに準ずる組織)と労使協定を結び、それを労働基準監督署に届け出る必要がある。これを「三六(サブロク)協定」と呼ぶ。

フレックスタイム制の場合、労働時間を毎月精算しなければならない。
たとえば、31日の精算月の場合、週40時間×31÷7=177時間の範囲内でコアタイムとフレキシブルタイムを決めなければならない。その月の労働時間の過不足を翌月に繰り越してはならない。

労働時間が6時間を超えて8時間未満の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合には少なくとも1時間の休憩を取らなければならない((労基法第34条))。

なお、管理監督者(管理職で相応の給料をもらっている者)や機密事務取扱者(役員秘書)などは、この労働・休憩時間のルールが適用されない((労基法第41条))。
もちろん、名ばかり管理職は管理監督者ではない。

三六協定を締結していたとしても、管理監督者や機密事務取扱者を含め、1ヶ月の残業時間が100時間を超えたり、直近3ヶ月の平均残業時間が80時間を超える場合は労災の対象になるとされている。

残業代

時間外労働、休日労働の際には25%以上50%以下の割増賃金(いわゆる「残業代」)を支払うことが定められている(労基法第37条)。
また、22時から5時までの労働は「深夜労働」とし、50%以上の残業代を支払うことが定められている。なお、満18歳未満の年少者は深夜労働してはならない。

残業代については、今回の改正法でも強調されている。
さらに、1ヶ月60時間を超える残業については、50%以上の残業代を支払うように定められた。

有給休暇

有給休暇
雇い入れの日から6ヶ月継続勤務し、全労働日の8割以上を出勤すると、年次有給休暇(いわゆる「有休」)が付与される(労基法第39条)。
その最低日数については第39条に示されている通りで、実際には就業規則に明記されている。

ただ実際には、有休を消化し切れていない労働者が多い。
そこで今回の改正法では、有休の完全消化を目指す内容となっている。労使協定により、1年に5日分を限度として、有休を時間単位で取得することが可能になった。
また、1ヶ月60時間を超える残業が発生した場合、前述の残業代に替えて、残業時間の25%の時間に相当する有休を与えることができるようになった。たとえば、1ヶ月100時間の残業が生じた場合、超過分の40時間を10時間分の有休に替えることもできるし、20時間の残業代と5時間分の有休に替えることもできる。

なお、会社が有休を買い取るのは違法である。
また、有休は労働者の裁量でいつでも取得することができ、その理由を上司に報告する義務もない。ただ、あまりにも自由に長期間にわたって有休を取得すると業務に支障が出るため、実際には就業規則によって有休取得計画を立てるように指示されています。

参考書籍

表紙 労働法のことならこの1冊改訂6版
著者 河野順一
出版社 自由国民社
サイズ 単行本
発売日 2010年04月
価格 1,760円(税込)
ISBN 9784426109400
企業の経営者・人事労務担当者から一般社員・社会人予備軍の学生までキーワードから引ける労働法入門事典。
 

参考サイト

(この項おわり)
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