クレジットカードの現金化

2012年02月11日 更新
クレジットカードを現金化します」「ショッピング枠を現金にします」などといううたい文句で、お金に困っている人にすり寄る業者がいるが、絶対に利用してはならない

クレジットカード現金化の仕組み

クレジットカード現金化
ここでは、業者がAさんのクレジットカードを現金化する仕組みを説明しよう。

Aさんは現金化業者から10万円の品物を買う。この品物を買うと8万円のキャッシュバックがあると、業者から知らされている。
そこでAさんはインターネット通販で品物を購入し、銀行の口座番号を知らせる。
このとき使うのは、クレジットカードのショッピング枠である。そして、間もなく銀行にキャッシュバック分の8万円が振り込まれる。
しばらくすると商品が送られてくるが、玩具であったりパチンコ玉であったり、とても10万円の価値があるとは思われないものである。
以前よくあった手口は、家電量販店などで商品を買い、業者がそれを買い取るというものであった。
しかし、この手口だと、「カード支払が終了していないものを売却してはならない」「換金のためにカードを使ってはならない」なというクレジットカード会員規約に抵触する。
そこで編み出されたのが前述の手口である。

この手口だと、商品を買ってキャッシュバックを受けるという一般的な商行為であるから、法律にも会員規約にも抵触しないというのだ。

クレジットカード現金化の異常な利率

8万円の現金を手に入れたAさんは、翌月までにクレジットカード会社に10万円の商品代を支払わなければならない。
かりにその業者のキャッシュバック率が一定(80%)だとすると、お金に困っているAさんは、翌月12万5千円を借りて10万円のキャッシュバックを受け、その10万円をクレジットカード会社の支払に充てるという自転車操業に陥る恐れが高い。

これを1年続けると下表のようになる。
月数 キャッシュバック額(円) 返済額(円)
180,000----
2100,000100,000
3125,000125,000
4156,250156,250
5195,313195,313
6244,141244,141
7305,176305,176
8381,470381,470
9476,837476,837
10596,046596,046
11745,058745,058
12931,323931,323
13----1,164,153
つまり、キャッシュバックされたお金にまったく手を付けなかったとしても、8万円の現金を手に入れた1年後には116万4千円あまりの返済をしなければならないのだ。年利に換算すると、なんと1,500%!

背景にあるもの

「クレジットカード現金化」の背景には、クレジットカードのキャッシング枠の廃止がある。

2010年(平成22年)6月に無担保消費者ローンの「総量規制」が導入された。
これを受け、クレジットカード会社や消費者近業業者は、年収の3分の1を超えて借りている人、所得証明書の提出がない人、専業主婦など無職の人などとの取引をストップした。
たとえばクレジットカードには「キャッシング枠」と「ショッピング枠」の2種類があるが、専業主婦では「キャッシング枠」をゼロにされる。
ところが、キャッシング枠で1円でも借金が残っていると、それを返済しなければならない。すぐに現金で返済できればいいが、そう都合良くもいかないだろう。そこで、残っているショッピング枠を返済のための現金化に使えるという誘いの手が差し伸べられる。これが「クレジットカード現金化」なのである。

“クレジットカード 現金化”で検索すると、じつに多くの業者がヒットする。
彼らに言葉巧みに誘われてしまうと、年利1500%の借金地獄に落ちることになる。注意したい。

東京国税局が脱税で告発

2010年(平成22年)10月、クレジットカードの「ショッピング枠現金化」商法で得た所得を隠したとして、東京国税局は「ユニティーワン」「ハートステーション」など複数のサイトで事業を展開していた男を所得税法違反容疑で告発した。
共同通信,2010年10月19日より
しかし、現行法では一律に貸金と認定して規制するのは難しく、専門家からは「法整備など抜本的な対策が必要だ」との声もあがっているといいます。
読売新聞,2011年8月16日より
2012年(平成24年)2月時点で、過去3年間に疑わしい取引を届け出たのは国内カード会社267社のうち4社計43件にとどまっている。警察庁はカード会社に対し、積極的に届け出るよう求めた。
また、現金が業者が実際には存在しない「公安委員会認可」などを売り物にしたネット広告もはびこっており、警察庁は計120のサイトの管理業者らに広告の削除を要請した。
ただ、現金化そのものを規制する法律はなく、出資法違反での摘発も前述の1件にとどまっている。
日本経済新聞,2012年2月9日より

参考サイト

参考書籍

週刊 ダイヤモンド 2010年 7/31号

週刊 ダイヤモンド 2010年(平成22年) 7/31号


  • Part 1 多重債務者からローン難民へ 消費者金融貸し渋り地獄の恐怖
  • Part 2 サラ金、カードの絶体絶命 武富士 万策尽き正常債権売却も検討
  • Part 3 だまされないローンの返し方 債務整理 整理手法選別シミュレーション
(この項おわり)
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