梅毒感染者が過去最悪に、ネットを介した性交渉が増加か

2023年2月26日 更新
報告された梅毒の患者数推移
2023年(令和5年)1月、梅毒の感染者数が、現在の方法で統計を取り始めた1999年(平成11年)以来最多を記録したと国立感染症研究所の集計でわかりました。
1987年(昭和62年)の2,928人をピークに減少し、1999~2012年(平成24年)は1,000人以下で推移していましたが、2013年(平成25年)に1,000人を超えてから急増し、2017年(平成29年)は5,000人を突破、2022年(令和4年)は1万人の大台を突破しました。
梅毒は、梅毒トレポネーマという細菌による感染症で、膣に陰茎を挿入する性交渉そのものばかりかオーラルセックスやキスでも感染する可能性があります。
症状は、まず3週間後に潰瘍やリンパ節の腫れが確認され、2~3カ月を過ぎると前身に赤い発疹がみられます。妊娠している場合は、流産や死産、胎児に垂直感染することがあります。
最終段階に至ると血管破裂(心血管梅毒)や神経の麻痺および知能の衰え(神経梅毒)が出現して、最悪死に至るという非常に恐ろしい病です。
ペニシリンによって初期段階ならば完治しますが、ワクチンがないために予防することが難しい病気です。
性別年齢分布 - 梅毒患者 - 国立感染症研究所
性別年齢分布 - 国立感染症研究所
都道府県別届出数 - 梅毒患者 - 国立感染症研究所
都道府県別届出数 - 国立感染症研究所
近年の感染者数激増の原因はよく分かっていません。
これまでは圧倒的に男性感染者が多かったのですが、昨今は感染者の3割が女性で、しかも20代に集中しているという傾向があります。東京に一極集中しているのも特徴です。
2022年(令和4年)に東京都内で梅毒に感染が確認されたのは、男女合わせて過去最多となる3.677人で、10年前のおよそ12倍に急増しています。東京都は2023年(令和5年)3月、都内の4か所に無料の検査会場を設けることにしました。
ただし、風俗営業法に指定されている店や女性従事者が有意に増えているとの統計はなく、また、コロナ禍で風俗店の利用客数も減少していることから、マッチングアプリやSNSを通じ、不特定多数とコンドームを付けない性交渉が増えていると考えられます。

神戸大学の重村克巳准教授は、「避妊具を用いない性行為が感染のリスクを高めるが、インターネットを通じた不特定の人との性行為の増加も背景にあると考えられる」「感染を予防するためにコンドームをきちんと着用すること」と警鐘を鳴らします。

参考サイト

(この項おわり)
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