発言者
三浦展 (みうら・あつし) |
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消費社会研究家、マーケティング・アナリスト | ||
2006年12月30日 |
場面
さまよう大衆に対して、消費を通じて繰り返し繰り返し意味と価値を与え続けていくことであり、さらにより強い意味と価値を与えるために「[魔術の世界:red]」を創造し、そこに住まわせ、そこに閉じこめて消費をさせ続けることであると言えるであろう。 たとえばディズニーランドやラスベガスやショッピングモールがそうであるように、現代の消費社会の特徴は、あるテーマ(意味)を持った閉じた世界を作り上げ、その中に消費者をできるだけ長時間閉じこめて消費させる方向に向かっているところにある。東京で言えば、お台場のヴィーナスフォートや六本木ヒルズや表参道ヒルズなどもそうであろう。サッカー・ワールドカップのようなイペントも、イベントであるから永続的ではないが、ある時間と空間を持った世界を作り上げ、そこに大衆を大量に動員し、スポンサー企業の商品を消費させるという意味で「[再魔術化:red]」であると言えるだろう。 このようにグローバリゼーションの中で巨大化した消費社会は、人々を「[再魔術化:red]」する。しかも、地方郊外農村部のファスト風土化は、十分な「[脱魔術化:red]」を経ない人々を「[再魔術化:red]」すると言えるのではないか。つまり、ただ生活の中の伝統の力が衰弱しただけで、近代合理主義的な思考様式は身に付いていない状態で新しい魔術にかけられるのである。近代以前の魔術の世界で、人々がその世界を疑わなかったように、新しく「[再魔術化:red]」された世界でも、人々はその世界を疑わない。 そして人々は、その魔術のパラダイスの中で、外部への想像力を減衰させてしまう。外部にもっと何か別の世界があるのではないかと考える力。内部の世界が外部を傷つけているのではないかとおもんぱかる力。その外部に行ってみたいという希望。今ある境界を越えて、今あるものを批判的に解読し、それを乗り越えようとする力。そうしたものが、24時間365日、快適に消費だけをしているパラダイスの中では育たないのではないか。(24ページ)「下流同盟」(三浦展/朝日新聞社/2006年12月)
コメント
ネット・ビジネスの場では、いかにしてユーザーを自サイトに長く滞在させるかということが話題になっている。ポータルサイトは、血眼になって客寄せを行い、他サイトへジャンプしないように苦心している。
そんな現象がリアルでも起きている。本書に述べられているディズニーランドはもちろんのこと、全貌をあらわしてきたJR東京駅もそうである。生活感のない近未来的な街に変貌しつつある東京駅を見ると、旧駅舎が鳴いているように見える。

私は、生活感がある街、人の息づかいや汗の臭いがする街が好きだ。吉祥寺ハモニカ横町、新宿駅の大ガード付近、秋葉原のガード下‥‥それぞれ街の顔があって楽しい。これらの街は、誰が意図したわけでもないのに、私に魔法をかける。そこへ行きたい、そこで買い物をしたいという気分にさせる。
他方、六本木ヒルズや東京駅は、見え透いたトリックで人を騙そうとする新米マジシャンがつくったようなイリュージョンに過ぎない。しかし、新米で歴史も浅いくせに、彼らはお客に対して高飛車なのである。何もかも高価で、お客にフォーマルな出で立ちを求める。

まあ、お客も馬鹿ではないから、いずれそうした街は滅びるであろう。願わくは、それまで古い商店街が持ちこたえてほしい。
そんな現象がリアルでも起きている。本書に述べられているディズニーランドはもちろんのこと、全貌をあらわしてきたJR東京駅もそうである。生活感のない近未来的な街に変貌しつつある東京駅を見ると、旧駅舎が鳴いているように見える。

私は、生活感がある街、人の息づかいや汗の臭いがする街が好きだ。吉祥寺ハモニカ横町、新宿駅の大ガード付近、秋葉原のガード下‥‥それぞれ街の顔があって楽しい。これらの街は、誰が意図したわけでもないのに、私に魔法をかける。そこへ行きたい、そこで買い物をしたいという気分にさせる。
他方、六本木ヒルズや東京駅は、見え透いたトリックで人を騙そうとする新米マジシャンがつくったようなイリュージョンに過ぎない。しかし、新米で歴史も浅いくせに、彼らはお客に対して高飛車なのである。何もかも高価で、お客にフォーマルな出で立ちを求める。

まあ、お客も馬鹿ではないから、いずれそうした街は滅びるであろう。願わくは、それまで古い商店街が持ちこたえてほしい。
発言者による著作物
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下流同盟―格差社会とファスト風土 | ||
著者 | 三浦展 | ||
出版社 | 朝日新聞出版 | ||
サイズ | 新書 | ||
発売日 | 2006年12月 | ||
価格 | 792円(税込) | ||
ISBN | 9784022731197 | ||
日本全国のアメリカ化は、はなはだ疑問だ!郊外ロードサイドに増殖する大型商業施設、空洞化する中心市街地と駅前商店街、不可解な犯罪、崩壊する家族、増大するワーキング・プア、そして青少年の非行化…。『下流社会』の著者が、アメリカ現地取材やフランスの現状を踏まえつつ、日本の将来を問う。 | |||
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第四の消費 つながりを生み出す社会へ | ||
著者 | 三浦展 | ||
出版社 | 朝日新聞出版 | ||
サイズ | 新書 | ||
発売日 | 2012年04月 | ||
価格 | 946円(税込) | ||
ISBN | 9784022734457 | ||
少数の中流階級が消費を楽しんだ第一の時代。高度成長の波に乗り、家族を中心とする消費が進んだ第二の時代。消費が個人化に向かった第三の時代を経て、消費はいま、第四の時代に入った。伝説のマーケティング情報誌『アクロス』編集長として一時代を画した著者が、30年の研究をもとに新しい時代を予言する。80年代を知らない若い世代にとっても必読の入門書。 | |||
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下流老人と幸福老人 | ||
著者 | 三浦展 | ||
出版社 | 光文社 | ||
サイズ | 新書 | ||
発売日 | 2016年03月17日頃 | ||
価格 | 814円(税込) | ||
ISBN | 9784334039134 | ||
『下流社会』刊行から11年。現在の日本の下流社会的状況の中から65歳以上の高齢者(シニア)の下流化の状況を分析するとともに、お金はないが幸福な老人になる条件は何かを考える。『投資家が「お金」よりも大切にしていること』の藤野英人氏へのインタビューを収録。 | |||
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東京は郊外から消えていく! | ||
著者 | 三浦展 | ||
出版社 | 光文社 | ||
サイズ | 新書 | ||
発売日 | 2012年08月 | ||
価格 | 880円(税込) | ||
ISBN | 9784334036980 | ||
かつて団塊世代が東京圏にあふれ、郊外に大量の住宅が建てられた。それが今や、人口減少社会へと転じ、ゆくゆくは40%が空き家になるという予測も出ている。そうなれば、東京の随所にもゴーストタウンが現れるだろう。長年ローンを払い続けて手に入れたマイホームも、資産価値のない「クズ物件」となってしまう。日本の都市は、他にもさまざまな問題をはらんでいる。居場所のない中高年、結婚しない若者、単身世帯の増加…。とくに首都圏では、それらが大量に発生する。これから郊外はどうなる?住むべき街とは?不動産を最大限に活用するには?独自の意識調査などをもとに、これからの東京の都市、郊外のあり方を提言する。 | |||
(この項おわり)