素直に言われたことをやればいいだけ

木村庄之助(33代目)

発言者

  木村庄之助(33代目) (きむら・しょうのすけ) 木村庄之助(33代目)
  立行司
   
  2007年11月20日

場面

2006年(平成18年)3月に大相撲の行事最高位である「立行司・木村庄之助」を襲名し、2007年(平成19年)3月場所に引退した著者による相撲の紹介本から。
ぼーっとしていてもだめ、要領がよくてもだめではどうしたらいいのかと思われるかもしれませんが、それは簡単なのです。素直に言われたことをやればいいだけです。(155ページ)
力士の世界(木村庄之助(33代目)/文藝春秋/2007年11月)

コメント

何でも「素直に言われたことをやればいい」わけではない。著者は、大相撲の歴史と文化の前では、我流を捨て、素直になるのが一番だと言いたいのだと思う。

さて、「個性を尊重する教育」というが、では、親や先生に意見していいかというと、そうではあるまい。一方で「自由にやれ」と言いながら、他方では「言うことを聞け」と言う大人は少なくないような気がする。
こうしたダブルスタンダードの前に、子どもは混乱していると思う。少し頭がいい子どもなら、要領よくやることを身につけてしまうかもしれない。これはこれで、大人になったときに問題である。よほど、相撲界のように「自由でない世界」の方がマトモである。

では、どこまで素直であり、どこから個性を発揮すべきなのか――その境界は「歴史」にあると思う。
親は代々の家柄を、学校は学校の歴史を受け継いでいる。その歴史の前では、生まれて日の浅い子どもは素直になるべきである。だが、新しい事物/事象に対しては、子どもは子どもなりの個性をもって当たることができるように育てていかなければならない。

この辺のさじ加減を無視し、すべてを自由にすることは育児放棄だと思うし、何から何まで押しつけることは虐待だと思う。
(この項おわり)
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