科学や技術を全く知らない人の言葉だ

鈴木章

発言者

  鈴木 章 (すずき・あきら) 鈴木章
  北海道大学名誉教授
   
  2010年10月8日

場面

2010年(平成22年)のノーベル化学賞を受賞した鈴木章・北大名誉教授は新聞の取材に応じ、「日本の科学技術力は非常にレベルが高く、今後も維持していかねばならない」と強調した。

受賞理由となった「パラジウム触媒でのクロスカップリング技術」は医薬や液晶など幅広い分野で実用化されている。それだけに鈴木氏は「日本が生き残るためには付加価値の高いものを作り、世界に使ってもらうしかない」と、科学技術の重要性を指摘した。

昨年の事業仕分けで理化学研究所の次世代スーパーコンピューターの予算が削られたことについては「科学や技術の研究はお金がかかる。研究者自身の努力や知識も大切だが、必要なお金は政府がアレンジしなければならない。(スーパー)コンピューターなどの分野では絶対に必要だ」と政府の積極的な投資に対する理解を求めた。
特に、蓮舫発言については「研究は1番でないといけない。“2位ではどうか”などというのは愚問。このようなことを言う人は科学や技術を全く知らない人だ」と厳しく批判。「科学や技術を阻害するような要因を政治家が作るのは絶対にだめで、日本の首を絞めることになる。1番になろうとしてもなかなかなれないということを、政治家の人たちも理解してほしい」と話した。
「もっと心配すべきは日本の質を高めること。それなのに2番目で良いなどというのは論外だ」と重ねて強調した。
昨年11月に政府の事業仕分けで注目された蓮舫行政刷新担当相の「2位じゃだめなんでしょうか」との発言については、「科学や技術を全く知らない人の言葉だ」とばっさり切り捨てた。
産経新聞,2010年10月8日

コメント

「日本は基礎研究がダメだ」と言われることがあるが、科学分野のノーベル賞受賞者は14人をも輩出しているわけで、けっしてそんなことはない。
しかし、直ちには実用に結びつかない理学系は工学や農学に比べて研究費が確保しにくくなっており、学生の実験器具や専門書の購入に支障が出ているという。

そこで、国立大学法人32大学理学部長会議は2010年(平成22年)10月9日、「理学の教育と研究に対する基盤的支援の充実について」において、科学研究費補助金(科研費)や大学への交付金をカットせず、人材育成システムを構築するように提言している。
(この項おわり)
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