人類の知恵の根っこお金とは切っても切れない縁がある

岩井克人

発言者

  岩井克人 (いわい かつひと) 岩井克人
  東京大学名誉教授
   
  2012年1月16日

場面

日経ビジネス誌上の「お金の正体とは何か?」というジャーナリストの池上彰さんとの対談においてお金の将来について問われ、次のように語っている。
お札や貨幣が見えなくなっても概念としてのお金は消えません。電子マネーは、紙が電子データに変わるだけ。人類の知恵の根っこお金とは切っても切れない縁があるのです
―(中略)―
お金を使うときは、人間は身分を越えて平等になる。これが民主主義です。お金によって共同体的な束縛を失った個人が起こす悲劇や喜劇を描くのが文学です。すべてお金がイデアであることが生み出しているのです。
日経ビジネス 2012年1月16日号

コメント

実際、お金は高度に抽象化・脳に刷り込みされた概念だと思う。貨幣や紙幣は、額面通りの価値があるものではないにも関わらず、1万円札には1万円に価値があると思い込んでいる。生まれてすぐにそういう教育を受けるのだから、脳に刷り込まれているのである。
お年玉などで初めて1万円札に触れたとき、(実際の印刷コストは大差ないだろうが)千円札の10倍の重みを感じたものである。

だが、電子マネーや為替相場はどうだろう。ついつい無駄遣いしてしまったり、年収以上の金額を平気で取引していたりしないだろうか。
見えないマネーを額面通りに実感できるほど、お金の抽象化は進んでいないように思う。人類の知恵がそこまで進むには、数十年とか100年単位の時間が必要であるような気がする。

発言者による著作物

表紙 会社はだれのものか
著者 岩井克人
出版社 平凡社
サイズ 単行本
発売日 2005年06月
価格 1,540円(税込)
ISBN 9784582832709
おカネよりも人間。個人よりもチーム。会社の未来は、ここにある。
 
表紙 貨幣論
著者 岩井克人
出版社 筑摩書房
サイズ 文庫
発売日 1998年03月
価格 924円(税込)
ISBN 9784480084118
資本主義の逆説とは貨幣のなかにある!『資本論』を丹念に読み解き、その価値形態論を徹底化することによって貨幣の本質を抉り出して、「貨幣とは何か」という命題に最終解答を与えようとする。貨幣商品説と貨幣法制説の対立を止揚し、貨幣の謎をめぐってたたかわされてきた悠久千年の争いに明快な決着をつける。
 
表紙 会社はこれからどうなるのか
著者 岩井克人
出版社 平凡社
サイズ 全集・双書
発売日 2009年09月
価格 1,045円(税込)
ISBN 9784582766776
日本は産業資本主義からポスト産業資本主義への大転換期にさしかかっている。ところが、今の日本の「会社」は、それにうまく対応できていない。日本が21世紀を生き抜くためには、個々の「会社」の仕組みを洗い直し、新しい資本主義にふさわしい形にしていかなければならない。
 
(この項おわり)
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