「これをやったらうまくいかない」ということを、いかにたくさん知っているかが大切

羽生善治

発言者

  羽生善治 (はぶ・よしはる) 羽生善治
  棋士
   
  2014年12月7日

場面

よく「経験知を活かす」といわれますが、それは経験してきたことが「そのまま活かせる」ということではないと思います。世の中も、自分を取り巻く情勢も変わりますから。 「経験知を活かす」とは、経験から得たさまざまな選択肢の中から、目の前にある問題やテーマに対して、何が一番いいアプローチの方法なのかを選んでいくことだと思います。 勝負の世界では、ベストだと思う手法が通じるかどうかは、常に皆目わからないものなんです。ただ、この場面でこのやり方は通じないとか、この手はあまりよくないだろう、という当たりはつきます。

経験知が活きるのは、そういう場面での対処ではないでしょうか。つまり「こうすればうまくいく」というよであるような気がします。 いろいろある選択肢の中から、何を捨てていくか。取捨選択の捨てるほうを見極める目が、経験知で磨かれるのだと思うのです。

たとえていえば、経験によって羅針盤の精度がだんだん上がっていくイメージですね。自分の中に、正確な羅針盤はないのかもしれない。けれど、無駄なことやだめだったこと、遠回りをした経験の積み重ねがあって、方向性を見誤ることが少なくなってくる。こっちへいくより、あっちのほうがより確実ということが、経験知が上がるにつれて比例して上がっていくのだと感じています。

プレジデント 2014年12月7日

コメント

50歳を目前にして、記憶力も論理演算能力も衰えたと痛感する。
仕事でも「次の一手」を先読みすることは大切だが、記憶力も演算力も低下しているから、力任せに先読みしたら負ける。

だが、どういうわけか、「これをやったらうまくいかない」という枝を刈り込むのはうまくなっている。これが「経験知」なのかもしれない。

発言者による著作物

表紙 捨てる力
著者 羽生善治
出版社 PHP研究所
サイズ 文庫
発売日 2013年02月
価格 616円(税込)
rakuten
ISBN 9784569679532
ひとつの手を選ぶことは、それまで考えた手の大部分を捨てることー史上初の七冠独占を25歳で成し遂げ、その後も記録を塗りかえ続ける天才棋士、羽生善治。彼が進化し続ける秘密は、意識的に過去の経験やアイディアを「捨てる」ことにあった!「忘れることは、次に進むための大事な境地」「創造的な思考をする際に、記憶は足を引っ張る」など、最強頭脳の真髄に迫る。
 
表紙 直感力
著者 羽生善治
出版社 PHP研究所
サイズ 新書
発売日 2012年10月17日
価格 820円(税込)
rakuten
ISBN 9784569804897
自分を信じる力。無理をしない、囚われない、自己否定しない。経験を積むほど、直感力は磨かれていく。生涯獲得タイトル数、歴代1位の偉業達成。
 
表紙 決断力
著者 羽生善治
出版社 角川書店
サイズ 新書
発売日 2005年07月
価格 864円(税込)
rakuten
ISBN 9784047100084
天才棋士が初めて大公開!「決断力」「集中力」の極意!「勝つ頭脳」は、こうして決断する。
 
(この項おわり)
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