発言者
安彦良和 (やすひこ・よしかず) |
![]() |
|
アニメーター,漫画家 | ||
2016年12月8日 |
場面
太平洋開戦の12月8日、朝日新聞が『機動戦士ガンダム』について、アニメーションディレクターを務めた安彦良和さんにインタビューした。
安彦「戦争が題材ということで話題になった。ヤマトでは『右翼的なテーマはいかがなものか』という評論もあったし、ガンダムでは『非常に好戦的だ』と言われたり『反戦的な要素もあるぞ』と指摘されたりした」
安彦「戦争には必ず前段がある。ガンダムは舞台がいきなり戦争なので、『戦争はかっこいい』とか『弱者の抵抗として戦争は正しいんじゃないか』とかいう誤解を招いてしまった。だから、原作にない物語の過去を漫画で描いた。今はそれをアニメにしている」
安彦「人間は非常に欠陥の多い生き物で間違いを犯してしまうし、コミュニケーションは苦手だし、あるいは不可能かもしれないし、困ったものだというのはガンダムの中でも大事な要素だ」
「それなのに、(ずば抜けた戦闘能力を発揮し、言葉を超えた意思疎通の能力を持つ)アムロら『ニュータイプ』同士ならわかり合えるので、未来はニュータイプのものだということこそがガンダムのテーマだとの誤解が広がってしまった」
朝日新聞,2015年12月8日
コメント
安彦良和さんは、北海道紋別郡遠軽町で生まれ、1966年(昭和41年)、弘前大学へ進学した。
高校時代の友人の影響で日本民主青年同盟(民青)の集会に参加したが、間もなく学生団体「ベトナムの平和を守る会」を結成し、反戦運動を展開した。貧しかったため、1969年(昭和44年)1月の安田講堂事件には参加できなかったという。同年、全共闘が弘前大学本部を選挙し、機動隊が封鎖解除に入ったときに逮捕された。翌1970年(昭和45年)1月、弘前大学から除籍処分を受ける。
左翼活動に見切りを付けた安彦さんは上京し、1970年(昭和45年)に虫プロ養成所に入ってアニメーターとなった。
だが、虫プロは1973年(昭和48年)に倒産。フリーとなり、『宇宙戦艦ヤマト』『勇者ライディーン』『ゼロテスター』などの制作に参加。
1979年(昭和54年)、『アリオン』を発表し漫画家デビュー。1989年(昭和64年)に『ヴイナス戦記』を監督した以降は専業漫画家になる。

筆圧が高いことから削用筆を用いているというが、当たりをとらずに筆だけで作画をしてしまう漫画家を見たことがない。作画に関して言えば、間違いなく天才の部類に入る。
ただ残念なことは、アニメにしても漫画にしても、そのストーリーは誤解を招きやすい。

たとえばガンダムにおけるアムロにしてもシャー・アズナブルにしても、どう考えてもコミュ障である。それをニュータイプというキーワードで象徴させようとしたのが裏目に出てしまった。
前述のインタビューの中で、「ジオン公国が表しているのは、(第1次世界大戦の戦後賠償に苦しみ、ナチスの台頭を許したドイツのような)敗者の考え方だ」と答えているが、これも大多数のガンダム・ファンの印象とかけ離れているだろう。

デジタルを嫌い、赤や黒を多用する独特の作画からは、登場人物の怨念を感じさせる。それを素直に読み解くことが、安彦作品を誤解なく受け入れる唯一の手段かもしれない。
高校時代の友人の影響で日本民主青年同盟(民青)の集会に参加したが、間もなく学生団体「ベトナムの平和を守る会」を結成し、反戦運動を展開した。貧しかったため、1969年(昭和44年)1月の安田講堂事件には参加できなかったという。同年、全共闘が弘前大学本部を選挙し、機動隊が封鎖解除に入ったときに逮捕された。翌1970年(昭和45年)1月、弘前大学から除籍処分を受ける。
左翼活動に見切りを付けた安彦さんは上京し、1970年(昭和45年)に虫プロ養成所に入ってアニメーターとなった。
だが、虫プロは1973年(昭和48年)に倒産。フリーとなり、『宇宙戦艦ヤマト』『勇者ライディーン』『ゼロテスター』などの制作に参加。
1979年(昭和54年)、『アリオン』を発表し漫画家デビュー。1989年(昭和64年)に『ヴイナス戦記』を監督した以降は専業漫画家になる。

筆圧が高いことから削用筆を用いているというが、当たりをとらずに筆だけで作画をしてしまう漫画家を見たことがない。作画に関して言えば、間違いなく天才の部類に入る。
ただ残念なことは、アニメにしても漫画にしても、そのストーリーは誤解を招きやすい。

たとえばガンダムにおけるアムロにしてもシャー・アズナブルにしても、どう考えてもコミュ障である。それをニュータイプというキーワードで象徴させようとしたのが裏目に出てしまった。
前述のインタビューの中で、「ジオン公国が表しているのは、(第1次世界大戦の戦後賠償に苦しみ、ナチスの台頭を許したドイツのような)敗者の考え方だ」と答えているが、これも大多数のガンダム・ファンの印象とかけ離れているだろう。

デジタルを嫌い、赤や黒を多用する独特の作画からは、登場人物の怨念を感じさせる。それを素直に読み解くことが、安彦作品を誤解なく受け入れる唯一の手段かもしれない。
発言者による著作物
![]() |
機動戦士ガンダム THE ORIGIN | ||
著者 | 安彦 良和/矢立 肇/富野 由悠季/大河原 邦男 | ||
出版社 | KADOKAWA | ||
サイズ | コミック | ||
発売日 | 2002年05月29日 | ||
価格 | 638円(税込) | ||
ISBN | 9784047134539 | ||
![]() |
ヤマトタケル | ||
著者 | 安彦 良和 | ||
出版社 | KADOKAWA | ||
サイズ | コミック | ||
発売日 | 2013年02月21日 | ||
価格 | 638円(税込) | ||
ISBN | 9784041205846 | ||
![]() |
ナムジ―大国主 | ||
著者 | 安彦良和 | ||
出版社 | 中央公論新社 | ||
サイズ | 文庫 | ||
発売日 | 1997年09月 | ||
価格 | 858円(税込) | ||
ISBN | 9784122029293 | ||
![]() |
漫画で描こうとした大陸と日本青年 | ||
著者 | 安彦良和 | ||
出版社 | 地方・小出版流通センター | ||
サイズ | 全集・双書 | ||
発売日 | 2007年03月 | ||
価格 | 770円(税込) | ||
ISBN | 9784901095822 | ||
(この項おわり)