思ったことを正直に語り、語ることができる人が本当の政治家

海部俊樹

発言者

  海部俊樹 (かいふ・としき) 海部俊樹
  第76・77代内閣総理大臣
   
  2018年12月5日

場面

2022年(令和4年)1月9日、海部俊樹元首相が91歳で死去した。
生前の2018年(平成30年)12月5日、朝日新聞の取材に応じ、次のように語った。
思ったことを正直に語り、語ることができる人が本当の政治家。その意味で僕は街頭演説が好きだが、立ち止まって聞いてくれて、終わってから話を聞くと本音を言うでしょ。『あなたはこうだ』とか、そういう本音の部分を聞いて、(こうした機会を)いつも持っていないと。国民と接する時、国民に政治のことをしゃべってくれと言っても難しいんだよ。
海部元首相、最後のインタビュー 記者に語った「寂しさ」と「遺言」」(朝日新聞,2022年1月14日)

コメント

リクルート問題や女性スキャンダルを受け、第15回参議院議員選挙ではマドンナ旋風が吹き荒れるなどして与野党の議席数が逆転した。1989年(平成元年)7月24日、宇野宗佑首相は退陣。この時点で有力議員は軒並みリクルートに関与していたことから、クリーンなイメージの人物と言うことで、旧竹下派の支持を得て海部俊樹氏が第76代内閣総理大臣に就任した。

演説を得意とし、首相在任中、リクルート事件の反省から「対話と改革の政治」を掲げた。日米構造協議でブッシュ大統領との調整にあたったほか、北方領土問題をめぐってゴルバチョフ大統領と会談を重ねた。
歴代政権の中でも比較的高い支持率を維持し、水玉模様のネクタイがトレードマークだった。
政治改革関連法案の成立に意欲を燃やしたが、自民党内で海部おろしが起こり、1991年(平成3年)10月5日に退陣表明に追い込まれた。このとき、信頼していた仲間が離れ、政治改革が頓挫したことを「世の中は寂しいものだ。心のつながりがそこで切れる。口だけの改革派かと。政治の世界は考えがすぐに変わる。いつも人を疑ってかからなければならんから寂しいことだ」と語っている。

発言者による著作物

表紙 政治とカネ―海部俊樹回顧録
著者 海部俊樹
出版社 新潮社
サイズ 新書
発売日 2010年11月20日頃
価格 748円(税込)
ISBN 9784106103940
「私は墓場まで持っていかない。隠し立てせずにありのままを書く」。冷戦終結、湾岸戦争、バブル崩壊…。時代の大きな転換点にあって、次々と押し寄せる難局に、首相としていかに立ち向かったのか。自民党、新進党、自由党で三度も組んだ小沢一郎とは何物なのか。政治の師・三木武夫元総理の遺志を継ぎ、クリーンな政治を目指して「金権」と闘い続けた五十年。戦後政治の光と影を知る、首相経験者による前代未聞の証言。
 
表紙 世紀を目指す―海部俊樹鼎談集
著者 海部俊樹/内田健三
出版社 共同通信社
サイズ 単行本
発売日 1985年06月
価格 1,320円(税込)
ISBN 9784764101685
 
(この項おわり)
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