定常型社会 | |||
著者 | 広井 良典 | ||
出版社 | 岩波書店 | ||
サイズ | 新書 |
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発売日 | 2001年06月20日頃 | ||
価格 | 814円(税込) | ||
ISBN | 9784004307334 |
そもそも人間の需要ないし欲望というものは、無限に拡大を続けるものなのだろうか。(139ページ)
レビュー
私は、コンピュータ・シミュレーションの演習として、成長の限界をプログラミングした。その結果導かれる最良解が「定常化社会」である。最悪の解は2つあって、人口爆発による環境破壊、もう1つは人口減少による人類滅亡である。このプログラムを組んだときには信じられなかったのだが、現在、我が国は後者の道を辿りつつある。
定常化社会とは何か――これが本書のテーマである。
私はITの最先端で仕事をしながら、著者と同じことを感じる。「そもそも人間の需要ないし欲望というものは、無限に拡大を続けるものなのだろうか」(139ページ)。人間の欲望の最新型がITである。果たしてITはどこまで行くのか。
そしてもう1つ面白いのが、私も読んだ『ゾウの時間ネズミの時間』で有名な本川達雄さんの引用である。「人間という生き物の場合、本来の必要量を大幅に上回るかたちでのエネルギー消費を行い、それによって「時間」の速度を速めてきた」(149ページ)――ガソリンをふんだんに使う車社会がそうであるが、ITはそれをはるかに上回る。地球上の距離を縮め、莫大な量の情報を瞬時にやり取りできるようになったのだ。デイトレーダが典型例だが、自宅にいながら24時間仕事をすることも不可能ではなくなったのだ。果たして、ヒトという種にとって、これは幸せなことなのか、それとも‥‥。
ネット世界の中での生活は、あまりにも刹那的になったような気がする。たまには未来を考えて思索にふけることも必要だろう。
定常化社会とは何か――これが本書のテーマである。
私はITの最先端で仕事をしながら、著者と同じことを感じる。「そもそも人間の需要ないし欲望というものは、無限に拡大を続けるものなのだろうか」(139ページ)。人間の欲望の最新型がITである。果たしてITはどこまで行くのか。
そしてもう1つ面白いのが、私も読んだ『ゾウの時間ネズミの時間』で有名な本川達雄さんの引用である。「人間という生き物の場合、本来の必要量を大幅に上回るかたちでのエネルギー消費を行い、それによって「時間」の速度を速めてきた」(149ページ)――ガソリンをふんだんに使う車社会がそうであるが、ITはそれをはるかに上回る。地球上の距離を縮め、莫大な量の情報を瞬時にやり取りできるようになったのだ。デイトレーダが典型例だが、自宅にいながら24時間仕事をすることも不可能ではなくなったのだ。果たして、ヒトという種にとって、これは幸せなことなのか、それとも‥‥。
ネット世界の中での生活は、あまりにも刹那的になったような気がする。たまには未来を考えて思索にふけることも必要だろう。
(2005年10月6日 読了)
(この項おわり)