『独創者列伝』――新しい技術に挑戦

佐藤銀平=著
表紙 独創者列伝
著者 佐藤銀平
出版社 NTT出版
サイズ 単行本
発売日 2005年10月
価格 2,200円(税込)
ISBN 9784757121553
研究することだけで充足してしまう研究者ではなく、研究したものを活かすところまでを視野に入れた研究者でありたいと思っていたからこそ、新天地を求めていったのではないだろうか。(231ページ)

概要

車輪の再発明のイラスト
存命中の日本の技術者たちのドキュメンタリーである。
冒頭に登場する世界初のマイクロプロセッサーを開発した嶋正利 (しま まさとし) と、最後に登場する青色発光ダイオードを開発した中村修二 (なかむら しゅうじ) の2名については、他書でも取り上げられることが多いが、それ以外は本書独特の顔ぶれである。光造形法の発明者・小玉秀男 (こだま ひでお) 、フラッシュメモリーの発明者・舛岡富士雄 (ますおか ふじお) 、人工網膜LSIの発明者・久間和生 (きゅうま かずお) 、光ソリトンの発見者・長谷川晃 (はせがわ あきら) 
白色有機ELデバイスの開発者・城戸淳二 (きど じゅんじ) 、デジタル画像圧縮技術の国際標準化を先導した安田浩 (やすだ ひろし) 、光磁気ディスクを開発した今村修武 (いまむら のぶたけ) 。いずれも日本が世界に誇れる技術者ばかりだ。その言葉には体験に裏付けられた重みがある。

舛岡富士雄は、EPROMに比べて機能的に劣るフラッシュメモリーについて、「普通は、性能が良いほうがいいと誰でも思いますね。それが当たり前ですが、ユーザーが使わない性能がいくら良くてもしょうがないのですよ」(81ページ)と語る。

久間和生は、大学とメーカーの研究者の違いは明確で、メーカーの研究者は「新しいことを掘り起こして、それを事業化する。事業化されてもされなくても、一つのプロジェクトが終われば、次の新たなテーマをやらなければなりません」(103ページ)と指摘する。

中村修二は、青色発光ダイオードという困難なテーマを選んだ理由について、「誰もやっていないから、研究テーマに選ぶのですよ。それで成功したらすごいことでしょう」(244ページ)と語る。

われわれ技術者は、彼らの言葉を胸に刻み、今日も新しい技術に挑戦していかなければならない。
(2006年2月7日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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