『集中力』――負けることさえ怖くない

谷川浩司=著
表紙 集中力
著者 谷川浩司
出版社 角川書店
サイズ 新書
発売日 2000年12月
価格 859円(税込)
ISBN 9784047040113
将棋で負けたところで生命をとられるわけではない。そう思えば何でもできる気がした。負けることさえ、まるで怖いことではなくなっていた。難しい手を指されても、対応するのが楽しく、苦しい局面でさえ、「そうか、こんな手もあるのか!」と思い、将棋の奥深さに触れたようでうれしかったのである。(60ページ)

概要

将棋の対局のイラスト
同世代のプロ棋士、谷川浩司さんのエッセイである。
私は将棋のルールを知らないので、どこがどう「光速の寄せ」なのか分からないのだが、本書を読む限り、1世代以上先輩の言葉を聞くようである。少なくとも私より「高速に」年齢を重ねているようである。
いわく、「情報をどんなにたくさん集めても、ロジカルに分析するだけでは情報におぼれるだけ」(91ページ)――ネット社会に生きている我々は身につまされる言葉である。たしかに、われわれは情報に踊らされている。(そういう輩が経営層にいると更に厄介である)
だから、プロ棋士は先を読んでも「10手から20手先ぐらいまで」だそうである。どんな手が来ようが臨機応変に対応できるのがプロ棋士だそうな。CPUパワーに任せて、すべての手を読もうとするプログラムの限界が、ここにあるのではないだろうか。
われわれの仕事にしても、マーケティング分析は必要だろうが、どこかで新規性を打ち出す必要はあるだろう。二番手、三番手に甘んじていては、いつかは滅ぼされてしまうような気がする。

最後に、「料理がおいしいと思えば『これはうまいな。よくできている』とほめる」(171ページ)が家族円満の秘訣のようだ。見習わねばなるまい。
(2006年3月12日 読了)

参考サイト

  • 集中力:角川書店
  • 決断力』(羽生善治=著):ぱふぅ家のホームページ
  • 『捨てる力』(羽生善治=著):ぱふぅ家のホームページ
(この項おわり)
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