『月を売った男』――SFが現実に

ロバート・A.ハインライン=著/井上一夫=訳
表紙 月を売った男
著者 ロバート・A.ハインライン/井上一夫
出版社 東京創元社
サイズ 文庫
発売日 1985年12月
価格 566円(税込)
ISBN 9784488618025
秘密を公開しちまうのよ。世間に、どういう発明をしたか発表するのよ。電カスクリーソと照明スクリーンを、作りたい人にはだれにでも作らせるのよ。まぜ合わせて加熱する工程はかんだんだから、やり方さえ話してやれば、どこの薬剤師にだってまねできるわ。それに、戸口にころがってるような材料から、いまの機械ですぐにこれを作れる工場は、少なくても千はあるはずだわ」(37ページ)

概要

月面バギーのイラスト
ロバート・A・ハインラインの処女作「生命線」(1939年)を含む短・中編5作品をまとめた未来史SFである。

ハインライン自身による紹介にもあるとおり、この初期の未来史の予言は、小説家の予想を裏切り、前倒しされたものが多い。表題作「月を売った男」は、月への一番乗りを目指す野心家の話だが、小説の設定より数年早く実現されてしまったわけだ。
そんな中で、「光あれ」(1940年)で、「太陽電池」「オープンソース」について触れられている点は注目に値する。おそらく、マイクロソフト帝国の中でオープンソースを書いている現代の技術者たちは、おそらく「光あれ」の主人公と同じ気持ちに違いない。

半世紀先の未来を見通すとは、さすがは「ミスターSF」である。
(2007年4月8日 読了)
(この項おわり)
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