『一流の人は空気を読まない』――団塊世代の反抗記?

堀紘一=著
表紙 一流の人は空気を読まない
著者 堀紘一
出版社 角川書店
サイズ 新書
発売日 2008年10月
価格 775円(税込)
rakuten
ISBN 9784047101609
空気を読んで、それに合わせた気の利いたことを口にしていれば、食べていくには困らないという、迎合主義の生き方のいい例である。(48ページ)

概要

ごますりをしている男性のイラスト
「最初から、言いたいことを口にしないで、人と同じようなことだけを話していることを和だとするのは、言葉の履き違えでしかないわけである」(36ページ)、「空気を読むという行為の底辺には『周回からの非難を恐れる』『孤立する勇気を持たない』といった心的背景があるのは疑いようがない」(38ページ)等々、書いてあることはいちいちもっともなことばかりなのだが、読んでいて、いちいちカンに触るのはなぜだろう。著者の堀紘一 (ほりこういち) さんはテレビも出演しているので、その時から感じていたことである――おっさん、なぜいちいち反抗するの?、と。
堀紘一さんは、いわゆる団塊世代である。彼らの人生は社会への反抗ではじまり、やがて社会に迎合し、バブルを引き起こし、そして一気にリタイアしようとしている。その人生の中で迎合しなかった者の中には、何らかの成功を収めた者もいるようである。堀紘一さんは、そんな迎合しなかった者たちの一人に過ぎない。けっして「一流」ではない

かつて団塊世代から「新人類」と呼ばれ蔑視された我々の世代は、その成り立ちからして迎合することがない。団塊世代と団塊ジュニアの狭間に埋もれた少数民族のようなもので、迎合したくても迎合する相手がいない。かろうじて同じテレビ番組、同じプロ野球チーム、同じアイドルの話題で集まることができるわけだが、それとて、個々人が極めてマニアックな(オタクな)レベルに到達しているので、迎合することを良しとしない。そのためにコミュニケーションが成立しないこともしばしばで、「新人類」という有り難くない渾名をいただいた。
だが、各々の専門領域において、迎合しないという意味において、一流の人は多い。
(2009年3月12日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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