『思春期の危機をどう見るか』

尾木直樹=著
表紙 思春期の危機をどう見るか
著者 尾木直樹
出版社 岩波書店
サイズ 新書
発売日 2006年03月
価格 880円(税込)
ISBN 9784004309987
深刻な事件が起きたあとの学校や行政の対応で、最近気になる点があります。それは、重大な事件が起きているのにもかかわらず、外から見ると、まるで何事もなかったかのように、学校生活が流れていくことです。(197ページ)

概要

反抗期の娘と父親のイラスト
思春期の問題に限らず、学級崩壊、学力低下、携帯電話、インターネット、ニートといった幅広いテーマを取り上げ、対策を提言している。
著者の尾木直樹さんは、「実践が“空洞化”している」(98ページ)として、ルールや管理を押しつけるだけの「大人」の姿勢を問題視し、まず大人の側から改善する必要性を強調する。
私も同感である。
飲酒運転をしてはいけないのは当たり前のルールだが、「まあまあ」ということで飲んでしまうのが大人の常である。一昔前、ルールが緩かった時代ならそれも許されたろうが、子どもたちに厳格なルールを押しつけ、自分たちは「まあまあ」というのはいかがなものか。さらに突き詰めると、健康に害があると、くどいほど箱書きしてあるタバコ――なぜ20歳以上なら吸っていいのか。これを論理的判断ができるようになったばかりの思春期の子どもたちに説明できる大人は、果たしているだろうか。

こうした大人のダブルスタンダードの解釈に悩む真面目な子どもたちが、判断に苦しんだ結果、暴走するのではないだろうか。著者も、「最近の少年による凶悪事件は、ほとんどが『まじめな子』の犯罪」(122ページ)と指摘する。

子どもは親の背中を見て育つという。ぶれない、壁のような背中を持った大人として生きていきたいものである。
(2009年1月22日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
header