『生物と無生物のあいだ』――分子生物学の最前線

福岡伸一=著
表紙 生物と無生物のあいだ
著者 福岡 伸一
出版社 講談社
サイズ 新書
発売日 2007年05月
価格 968円(税込)
rakuten
ISBN 9784061498914
秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。(166ページ)

概要

バクテリオファージのイラスト
著者は、分子生物学を専攻する青山学院大学教授の福岡伸一さん。「生命とは何か」という生命科学最大の問いに、分子生物学の立場から考えてゆく。

福岡さんは、「現存する生物の特性、特に形態の特徴のすべてに進化論的原理つまり自然淘汰の結果、ランダムな変異が選抜されだと考えることは、生命の多様性をあまりに単純化する思考であり、大いなる危倶を感じる」(144ページ)という。
生物は、生きている限りエントロピーを増大させているが、エントロピーが最大になって死ぬことがないように、周囲から負のエントロピー=秩序を取り入れている。福岡さんは、これについて、「秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない」(166ページ)と語る。
こうしたことを踏まえ、福岡さんは、「その内部には常に不可逆的な時間の流れがあり、その流れに沿って折りたたまれ、一度、折りたたんだら二度と解くことのできないもの」(271ページ)を生物と定義する。
やや難解ではあるが、生物は非平衡的な状態を維持するために外部から常にエネルギーを取り入れる存在と考えることで、ウイルスを含め、生物の概念を拡張した。
(2008年9月1日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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