『確信する脳』――神経医学版“白熱教室”

ロバート・A.バートン=著
表紙 確信する脳
著者 ロバート・A.バートン/岩坂彰
出版社 河出書房新社
サイズ 単行本
発売日 2010年08月
価格 2,640円(税込)
rakuten
ISBN 9784309245232
読者に「自分は、知っている内容をどのように知っているのだろう」という最も基本的な疑問を抱いていただけたなら、本書の目的は達せられたといえる。(177ページ)

レビュー

脳の断面図のイラスト(人体)
著者は、小説も書くというアメリカの神経医学者ロバート・A.バートン氏。「訳者あとがき」にあるように、本書は、既知感(feeling of knowing;既視感ではない!)という言葉を使い、われわれの脳がどのように確信を持つに至るかを解説する内容になっている。

ただし、安直な回答を読者に提供するものではない。
読者は筆者の議論に付き合い、自分の脳で考え、確信の正体を考えなければならない仕組みになっている。その意味では、米ハーバード大学の政治哲学教授マイケル・サンデル氏の講義「ハーバード白熱教室」に似ていると言える。
著者は「完全に意見が一致したからといって、思考のプロセスが同じとは限らない」(157ページ)と主張するが、これは現代社会において忘れがちな事柄だと感じた。
インターネットの情報におぼれ、マニュアルやハウツー本を読み漁るあまり、われわれは、たとえ同じ意見を持っていたとしても、その人と自分が立つ位置が同じだとは限らないという“真実”を忘れてはいないだろうか。
私は確信する。だが、その確信が万人に当てはまるとは限らない。それが社会生活の難しいところであり、また面白い側面であるのだ。
本書を読んで、そんなことをあらためて感じた。
(2011年1月10日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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