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IBM奇跡の“ワトソン”プロジェクト | ||
著者 | スティーヴン・ベイカー/土屋 政雄 | ||
出版社 | 早川書房 | ||
サイズ | 単行本 |
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発売日 | 2011年08月25日頃 | ||
価格 | 1,980円(税込) | ||
ISBN | 9784152092366 |
ブルーJが偉大なジョパディプレーヤになれたとしても、それは認知科学の飛躍というより工学の勝利という意味合いが強い。(123ページ)
概要

ジョパティに出演するワトソン
レビュー
ジョパティというのはクイズ番組だが、日本によくあるクイズとは毛色が異なる。回答者は質問に回答するのではなく、司会者に逆質問することで回答へ近づくための複数のヒントを得ていくという手続きになっている。
なぜこのような番組が誕生したのか、そのルールや優勝者の成績についても本書に詳しい。

いずれにしても純粋数学で押し切ったチェスとは違い、コンピュータには人間に近い言語能力が必要とされる。
そこで持ち上がるのが、ワトソンが人工知能(AI)かどうかという疑問だ。
だが開発者を含め、だれもワトソンが人工知能ではないと考えている。ワトソンは大量のデータから統計的に文章を組み立てると同時に、クイズの賭の要素を判断する、あくまで計算機でしかない。人間の知能とは全く異質のものであった。
ワトソンの開発者たちには、ジョパディに出演するという決められた納期があった。認知科学の飛躍的進歩を待ち、理想的な人工知能が誕生するのを待つ余裕などなかったからである。
この点については、本書では明言されていないが、統計数学だけで機械翻訳を実用化したGoogleの存在が大きかったと思われる。つまり、ディープブルーよりも洗練されたアルゴリズムを使えば、自然言語も操れるだろうと観測があったに違いない。

ジョパディ制作サイドがワトソン開発チームに無理難題を吹きかけることもあった。
ジョパディはIBMではなくソニーがスポンサーになっているエンターテイメント番組で、マシンが一方的に勝利するのは番組的に面白くないからだ。そこで、ワトソンにも人間の回答者と同じように、回答ボタンを押すという操作まで強要した。

開発には様々な困難がつきまとったものの、ついに 2011年2月16日、ワトソンは、歴代で最も強いと言われるジョパディプレーヤを二人も破ることになる。
ワトソンを勝利に導いたのは、開発に携わった25人の博士たちの知性もさることながら、ディープブルーの時代と違ってネット上から簡単に入手できるようになった種々雑多な「知識」が役に立ったに違いない。
これからもディフェンディングチャンピオンとしてのワトソンの戦いは続くだろうし、本当に大変なのは、ワトソン技術の市場展開であろう。本書では医療分野が有望な市場とされているが、はたしてGoogleの数万倍の電力を投入して得られる結果に、市場は満足するだろうか。
IBMの挑戦は続く。
なぜこのような番組が誕生したのか、そのルールや優勝者の成績についても本書に詳しい。

いずれにしても純粋数学で押し切ったチェスとは違い、コンピュータには人間に近い言語能力が必要とされる。
そこで持ち上がるのが、ワトソンが人工知能(AI)かどうかという疑問だ。
だが開発者を含め、だれもワトソンが人工知能ではないと考えている。ワトソンは大量のデータから統計的に文章を組み立てると同時に、クイズの賭の要素を判断する、あくまで計算機でしかない。人間の知能とは全く異質のものであった。
ワトソンの開発者たちには、ジョパディに出演するという決められた納期があった。認知科学の飛躍的進歩を待ち、理想的な人工知能が誕生するのを待つ余裕などなかったからである。
この点については、本書では明言されていないが、統計数学だけで機械翻訳を実用化したGoogleの存在が大きかったと思われる。つまり、ディープブルーよりも洗練されたアルゴリズムを使えば、自然言語も操れるだろうと観測があったに違いない。

ジョパディ制作サイドがワトソン開発チームに無理難題を吹きかけることもあった。
ジョパディはIBMではなくソニーがスポンサーになっているエンターテイメント番組で、マシンが一方的に勝利するのは番組的に面白くないからだ。そこで、ワトソンにも人間の回答者と同じように、回答ボタンを押すという操作まで強要した。

開発には様々な困難がつきまとったものの、ついに 2011年2月16日、ワトソンは、歴代で最も強いと言われるジョパディプレーヤを二人も破ることになる。
ワトソンを勝利に導いたのは、開発に携わった25人の博士たちの知性もさることながら、ディープブルーの時代と違ってネット上から簡単に入手できるようになった種々雑多な「知識」が役に立ったに違いない。
これからもディフェンディングチャンピオンとしてのワトソンの戦いは続くだろうし、本当に大変なのは、ワトソン技術の市場展開であろう。本書では医療分野が有望な市場とされているが、はたしてGoogleの数万倍の電力を投入して得られる結果に、市場は満足するだろうか。
IBMの挑戦は続く。
(2011年8月20日 読了)
参考サイト
- IBM奇跡の“ワトソン”プロジェクト:早川書房
- IBM Watsonとは?:IBM
(この項おわり)