『クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?』

布川郁司=著
表紙 クリィミーマミはなぜステッキで変身するのか?
著者 布川郁司
出版社 日経BP
サイズ 単行本
発売日 2013年12月
価格 1,760円(税込)
ISBN 9784822249922
自分のお金を増やすためのカギは、著作権(ライツ)に関係するビジネスにあります。(107ページ)

概要

著者は、「うる星やつら」「魔法の天使クリィミーマミ」「NARUTO」「BLEACH」などの制作を手掛けてきたスタジオぴえろ(現・ぴえろ)の創業者、布川郁司 (ぬのかわ ゆうじ) さん。
高田明美先生描き下ろしのクリィミーマミの表紙やセル画風の中表紙とは打って変わって、中身は随所にお金の話がちりばめられている。それもそのはず。KADOKAWAや徳間書店ではなく、日経BP社が出版したビジネス本なのだから。
クリエイターはもちろんのこと、私と同業のシステム・エンジニアの方にもぜひ読んでいただきたい。お客様を喜ばせるため、自分の技術を向上させるために仕事をするのも大切だが、本当のプロなら金勘定ができなければいけない。
クリィミーマミがステッキで変身するようになったことで、スタジオぴえろの企業継続が保証され、視聴者が喜ぶコンテンツを供給し続けることができているのだ。

レビュー

冒頭で布川さんは、わが国のハード産業の行き詰まりの打開策をソフト産業に求めているが、お客様に末永く使い続けていただける製品を世に送り出すという職人根性が日本産業の真骨頂ではないか。じつはハード/ソフトという区分に意味はなく、職人が集まって会社となり事業を継続しているのが、スタジオぴえろの凄さだと感じた。

スタジオぴえろは、1980年からNHKで放映されたアニメ「ニルスのふしぎな旅」のために創業した。覚えていますよ、その時のことを。
布川さんは「お金には、実は3通りしかありません――1.自分のお金、2.もらったお金、3.借りたお金」(103ページ)といい、「自分のお金を増やすためのカギは、著作権(ライツ)に関係するビジネス」(107ページ)にあると強調する。
これを実践したのが「魔法の天使クリィミーマミ」である。リスクが高いオリジナル作品だが、関連商品によるロイヤリティ収入が入ってきた。だから、クリィミーマミはステッキを持っているのだ。

布川さんは「ぴえろ」創業にあたって、タツノコプロから人材を引き抜いたことを反省し、「どんなに人が欲しくても、他社から引き抜いちゃダメだ」(29ページ)という。『科学忍者隊ガッチャマン』でお馴染みの演出家、鳥海永行 (とりうみ ひさゆき) さん、その弟子で、『うる星やつら』『機動警察パトレイバー』でブレイクする押井守 (おしい まもる) さん、『機動戦士ガンダム』『風の谷のナウシカ』などで美術監督を務めることになる中村光毅 (なかむら みつき) さん――そうそうたるメンバを引き抜いた。
布川さんは、「いなくなると困る人材」については、自分の会社で育つのを待つしかない」(128ページ)というのが信条とするようになったという。
また、マネジメントについては、「同じ人間が、クリエイティブとマジメントの両方をやるのはやめたほうがいい」(215ページ)という。「マネジメントについて考えるとクリエイティプが消されてしまうし、クリエイテイプばかりにこだわると、お金がなくなってしま」うからだ。

最後に、映像コンテンツ・ビジネスについて「無料での直接配信」(258ページ)が一番いいと指摘する。制作現場あがりの経営者だけあって、われわれ顧客のニーズをよくご存じでいらっしゃる。
(2014年3月9日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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