シリーズ概要

目次
暗殺後宮〜暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい〜 第1巻
王花鈴「私はめげない! あきらめない!」
後宮――そこは皇帝のために集められた数千人の女達が暮らす場所。華やかな女の園である。そこに一人、伝説の宮女見習がいた。出世のために邪魔者は拷問、暗殺が当たり前の極悪非道の悪徳文官・王皓の娘、ギザ歯で陰気な表情、目の下にはいつもクマをつくっている王花鈴である。王皓は後宮での諜報活動を条件に王花鈴の後宮入りを認めたが、彼女は友達がほしいだけだった。だが、彼女の父が王皓と知っている宮女見習達は、王花鈴を怖れて口も開いてくれない。
教育係の陸慧から、臘祭で使う敷物に刺繍をすることを命じられた宮女見習いたち。王花鈴は喜々として刺繍に勤しむが、その笑顔は周囲に誤解を生み‥‥。雨が降る中、一人で泣いていた王花鈴に傘を差し伸べたのは、同年代の暁星皇帝陛下だった。
謀略渦巻く宮廷で、皇帝陛下の二人の異母兄は暗殺され、暁星は先帝の遺言によりわずか10歳で即位した。後宮では、先帝の寵姫・蛾太妃、先帝の生母・太皇太后、先帝の一人娘・光姫長公主が三つ巴の争いを続けており、そのことが北祇国の混乱を象徴していた。
臘祭の当日、王花鈴は献上品の羊を連れた宮女をすれ違う。普通に話しかけてくる彼女に疑念を抱いた王花鈴は‥‥。

蛾太妃から鳥の世話を任された宮女見習いの張鴻は、誤って鳥を逃がしてしまう。鳥を捕らえようと、王花鈴と張鴻は数多くの鳥を飼っている周女官を訪ねるが‥‥。

宮女見習いとして半年、太皇太后、蛾太妃、光姫長公主が集うお茶会が見習い卒業試験の場となった。お茶会の当日、3人を暗殺する準備万端であることに気付いた王花鈴は、何とか暗殺を阻止する。
宮女になった王花鈴は、後宮を生活に整える仕事をする寝尚に配属になった。同質の宮女達は王花鈴におそれをなしたが、令光だけが口をきいてくれた。だが、後宮で禁じられている手紙を恋人に出そうとした令光は間者として捕らわれてしまい‥‥。
教育係の陸慧から、臘祭で使う敷物に刺繍をすることを命じられた宮女見習いたち。王花鈴は喜々として刺繍に勤しむが、その笑顔は周囲に誤解を生み‥‥。雨が降る中、一人で泣いていた王花鈴に傘を差し伸べたのは、同年代の暁星皇帝陛下だった。
謀略渦巻く宮廷で、皇帝陛下の二人の異母兄は暗殺され、暁星は先帝の遺言によりわずか10歳で即位した。後宮では、先帝の寵姫・蛾太妃、先帝の生母・太皇太后、先帝の一人娘・光姫長公主が三つ巴の争いを続けており、そのことが北祇国の混乱を象徴していた。
臘祭の当日、王花鈴は献上品の羊を連れた宮女をすれ違う。普通に話しかけてくる彼女に疑念を抱いた王花鈴は‥‥。

蛾太妃から鳥の世話を任された宮女見習いの張鴻は、誤って鳥を逃がしてしまう。鳥を捕らえようと、王花鈴と張鴻は数多くの鳥を飼っている周女官を訪ねるが‥‥。

宮女見習いとして半年、太皇太后、蛾太妃、光姫長公主が集うお茶会が見習い卒業試験の場となった。お茶会の当日、3人を暗殺する準備万端であることに気付いた王花鈴は、何とか暗殺を阻止する。
宮女になった王花鈴は、後宮を生活に整える仕事をする寝尚に配属になった。同質の宮女達は王花鈴におそれをなしたが、令光だけが口をきいてくれた。だが、後宮で禁じられている手紙を恋人に出そうとした令光は間者として捕らわれてしまい‥‥。
暗殺後宮〜暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい〜 第2巻
王雹「力のある人間には勝手に人が集まってくるからな。その中から役に立ちそうな者を選び、金、物におぼれさせ、とどめに弱みを握る。これで一生、友人だ」
令光を助けようとしている王花鈴は、偶然出会った皇帝陛下に事情を説明し、得意の暗殺術で陛下を光姫長公主に変装させる。だが、令光の前に本物の光姫長公主が現れ‥‥。

殿中侍御史・王雹が後宮にやって来た。王花鈴が怖れる、12人いる兄の中で一番強い兄うえだ。皇帝の陵墓から遺体が盗まれ、犯人を追っている王雹は王花鈴を利用しに来たのだ。

王花鈴は、問題を起こしたり、皇帝の寵愛を失った妃達が閉じ込められている冷宮の担当を命じられた。先帝が崩御した事も知らず、わずかな食事で痩せ衰え目も見えなくなった胡玎貴妃の世話をしながら一人泣く王花鈴。たまたま冷宮の壁の向こうにいた皇帝陛下は、「そなたのクマがなくなるような世界に朕がするから、もう泣くな」と励ます。王花鈴は「陛下が嘆かれるのでしたら、この王花鈴、めげない、あきらめない! 泣き言はもう言いません!」と応じる。

殿中侍御史・王雹が後宮にやって来た。王花鈴が怖れる、12人いる兄の中で一番強い兄うえだ。皇帝の陵墓から遺体が盗まれ、犯人を追っている王雹は王花鈴を利用しに来たのだ。

王花鈴は、問題を起こしたり、皇帝の寵愛を失った妃達が閉じ込められている冷宮の担当を命じられた。先帝が崩御した事も知らず、わずかな食事で痩せ衰え目も見えなくなった胡玎貴妃の世話をしながら一人泣く王花鈴。たまたま冷宮の壁の向こうにいた皇帝陛下は、「そなたのクマがなくなるような世界に朕がするから、もう泣くな」と励ます。王花鈴は「陛下が嘆かれるのでしたら、この王花鈴、めげない、あきらめない! 泣き言はもう言いません!」と応じる。
暗殺後宮〜暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい〜 第3巻
王皓「私には家族しか信じるものがない」
先帝に会いたい一心で胡玎貴妃は冷宮を脱走するが、蛾太妃に捕らわれてしまう。得意の暗殺術で胡玎貴妃を救出した王花鈴は、実家に匿う。王皓は胡玎貴妃に、「一族を滅ぼされた恨み、晴らしたくはありませんか?」を言う。
「父様が信じる人は一人もいないのですか?」と王花鈴が問いかけると、王皓は「私には家族しか信じるものがない」と答えた。父が居眠りをしている間、王花鈴は雨の中、剣をもって寝ずの番をするのだった。翌朝、後宮から迎えに来た馬魅に王花鈴は「なぜ、王一族はこんな変な家なのかしら」と漏らすと、馬魅は「王皓様は自分のせいであなた達が殺されぬためですよ」と答える。

皇帝陛下は民が泣かぬ世をつくろうと、農業の神を祭る籍礼の祭祀を取り仕切ると言う。これまで仕切ってきた太皇太后は不愉快だった。太皇太后に取り入ってきた宦官の楽端が陛下に探りを入れると申し出る。皇帝陛下の真っ直ぐな瞳を見た楽端は、「天は間違いを許さない。陛下が間違えば、このように民に不幸が訪れる」と脅す。だが、陛下は弱音ひとつ吐かずに祭祀の鍛錬に励むのだった。
皇帝陛下が籍礼祭を仕切ることを知った王花鈴は、陛下の危険を取り除こうと、祭祀を行う壇の中に潜り込む。壇上では剣舞が始まった。だが、陛下の相手の足運びがおかしい‥‥刺客だ。
刺客は王一族に捕らえられ、王皓は呂公の手の者だろうと推測し、「陛下にもっと強くなっていただかねば。簡単に暗殺されては困る」とつぶやく。
「父様が信じる人は一人もいないのですか?」と王花鈴が問いかけると、王皓は「私には家族しか信じるものがない」と答えた。父が居眠りをしている間、王花鈴は雨の中、剣をもって寝ずの番をするのだった。翌朝、後宮から迎えに来た馬魅に王花鈴は「なぜ、王一族はこんな変な家なのかしら」と漏らすと、馬魅は「王皓様は自分のせいであなた達が殺されぬためですよ」と答える。

皇帝陛下は民が泣かぬ世をつくろうと、農業の神を祭る籍礼の祭祀を取り仕切ると言う。これまで仕切ってきた太皇太后は不愉快だった。太皇太后に取り入ってきた宦官の楽端が陛下に探りを入れると申し出る。皇帝陛下の真っ直ぐな瞳を見た楽端は、「天は間違いを許さない。陛下が間違えば、このように民に不幸が訪れる」と脅す。だが、陛下は弱音ひとつ吐かずに祭祀の鍛錬に励むのだった。
皇帝陛下が籍礼祭を仕切ることを知った王花鈴は、陛下の危険を取り除こうと、祭祀を行う壇の中に潜り込む。壇上では剣舞が始まった。だが、陛下の相手の足運びがおかしい‥‥刺客だ。
刺客は王一族に捕らえられ、王皓は呂公の手の者だろうと推測し、「陛下にもっと強くなっていただかねば。簡単に暗殺されては困る」とつぶやく。
暗殺後宮〜暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい〜 第4巻
楽端「やつがれはね、顔かいいんですよ。大概のことは許されます」
籍礼の祭祀が終わり、後宮に春がやって来た。皇帝陛下の暗殺に失敗して涸れ井戸に放り込まれた楽端を救うため、王花鈴が動く。脱出した楽端は皇帝陛下に太皇太后の企てを語ると、陛下は「大丈夫だよ。朕は皆から疎まれてるの知ってるよ」と言う。そんな皇帝陛下に楽端は忠誠を誓う。
王花鈴は楽端は太皇太后の居城・永寧宮へ忍び込む。王花鈴は得意の暗殺術で毒の蝶から逃れると、楽端は太皇太后のもとへ走ってゆく。

永寧宮を取り仕切る永寧小府となった楽端は、高級は権力がすべてだから、王花鈴に上級宮女への昇級試験を受けられるようにする。王花鈴は、試験を受けて、陛下をもっとお側で御守りしてみせると誓うのだった。
王一族に恨みのある陸慧は王花鈴の指導女官役を断るが、一人で昇級試験に挑む彼女の姿を見て心を入れ替え、指導教官となる。そんなとき、流れの商人・王晴が陸慧の前に現れる。
王花鈴は楽端は太皇太后の居城・永寧宮へ忍び込む。王花鈴は得意の暗殺術で毒の蝶から逃れると、楽端は太皇太后のもとへ走ってゆく。

永寧宮を取り仕切る永寧小府となった楽端は、高級は権力がすべてだから、王花鈴に上級宮女への昇級試験を受けられるようにする。王花鈴は、試験を受けて、陛下をもっとお側で御守りしてみせると誓うのだった。
王一族に恨みのある陸慧は王花鈴の指導女官役を断るが、一人で昇級試験に挑む彼女の姿を見て心を入れ替え、指導教官となる。そんなとき、流れの商人・王晴が陸慧の前に現れる。
暗殺後宮〜暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい〜 第5巻
王皓「悪評など政さえよければどうでもよい」
王晴が連れ去ろうとする陸慧を助けた王花鈴は、王晴が王家の腕輪をしていることに気付く。王晴とは何者なのか、陸慧との関係は? 一人街に出た王花鈴は、王晴を追って万品商店の地下にある武器庫に閉じ込められてしまう。
陸慧は、16年前に治める地方の役人でしかなかった王一族が、反乱の濡れ衣を着せられた陸家を処罰し成り上がっていったことを思い出していた。そのときも万品商店の店主が裏で糸を引いていた。

万品商店店主は、商人らの宮廷に対する不満を煽って反乱を起こそうとしていた。この時代を動かせる人物は王皓と言う陸慧に、王花鈴は恐る恐る父が務める度支を訪ねるのだった。だが、王皓は善意などという私情で政を動かしてはならないと言い、「悪評など政さえよければどうでもよい」と王花鈴の申し出を一蹴する。
父の言葉におそれをなし退散した王花鈴だったが、自分の暗殺術を使ってできることに気付く。
16年前、反乱を鎮圧した王皓は長兄・王晴と賭けをした。賭けは続いていた。王晴は万品商店店主の悪事の証拠を探し続けていた。王風は陸慧に、「この国で反乱を起こした家が、討伐されずに没落だけで許されていたことを」と問いかけた。ついに万品商店店主を捕らえた王花鈴は後宮につれて戻り‥‥。
陸慧は、16年前に治める地方の役人でしかなかった王一族が、反乱の濡れ衣を着せられた陸家を処罰し成り上がっていったことを思い出していた。そのときも万品商店の店主が裏で糸を引いていた。

万品商店店主は、商人らの宮廷に対する不満を煽って反乱を起こそうとしていた。この時代を動かせる人物は王皓と言う陸慧に、王花鈴は恐る恐る父が務める度支を訪ねるのだった。だが、王皓は善意などという私情で政を動かしてはならないと言い、「悪評など政さえよければどうでもよい」と王花鈴の申し出を一蹴する。
父の言葉におそれをなし退散した王花鈴だったが、自分の暗殺術を使ってできることに気付く。
16年前、反乱を鎮圧した王皓は長兄・王晴と賭けをした。賭けは続いていた。王晴は万品商店店主の悪事の証拠を探し続けていた。王風は陸慧に、「この国で反乱を起こした家が、討伐されずに没落だけで許されていたことを」と問いかけた。ついに万品商店店主を捕らえた王花鈴は後宮につれて戻り‥‥。
暗殺後宮〜暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい〜 第6巻
皇帝陛下「相手のことも考えねば。それが政ということだろう」
王花鈴は、昇級試験の課題の品として、太皇太后、蛾太妃、光姫長公主の前に万品商店店主を突き出した。そこへ王晴と陸慧が現れ、過去の悪事の証拠を提出する。
一方、皇帝陛下は商人の不満を知り、帝室御用達を改めようと言う。
王晴は陸慧に一緒に暮らそうと誘うが、陸慧の答えは‥‥。

昇級試験に合格した王花鈴を、皇帝陛下と敵対する蛾太妃が召し使うことになった。蛾淑宮に出仕した王花鈴は、藍夏とともに、蛾太妃の息子・昴皇子の面倒をみることになる。
王家では年に一度の廟祭の時期となり、王晴と王花鈴を除く兄弟が集まった。王皓は「さあ、見せてみよ。お前達の母の敵ども、私の宿願の第一の敵。蛾一族を陥れるための成果を」と宣言する。
蛾淑宮で働く王花鈴は、ふとしたことから、昴皇子も暗殺の対象になっていることに気付く。そんなとき、蛾太妃は王花鈴に「王倩はわきまえていたわ。お前を守るために死んだもの」と告げる。昴皇子を暗殺しようとしている者の正体は‥‥。
一方、皇帝陛下は商人の不満を知り、帝室御用達を改めようと言う。
王晴は陸慧に一緒に暮らそうと誘うが、陸慧の答えは‥‥。

昇級試験に合格した王花鈴を、皇帝陛下と敵対する蛾太妃が召し使うことになった。蛾淑宮に出仕した王花鈴は、藍夏とともに、蛾太妃の息子・昴皇子の面倒をみることになる。
王家では年に一度の廟祭の時期となり、王晴と王花鈴を除く兄弟が集まった。王皓は「さあ、見せてみよ。お前達の母の敵ども、私の宿願の第一の敵。蛾一族を陥れるための成果を」と宣言する。
蛾淑宮で働く王花鈴は、ふとしたことから、昴皇子も暗殺の対象になっていることに気付く。そんなとき、蛾太妃は王花鈴に「王倩はわきまえていたわ。お前を守るために死んだもの」と告げる。昴皇子を暗殺しようとしている者の正体は‥‥。
暗殺後宮〜暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい〜 第7巻
皇甫伯姫「後宮の中で利己的な人しか見てなかったから、王倩様の考えはとても不思議で、でも自然で。とても格好いい悪女だった」
皇甫伯姫と娘・杏がやって来る。伯姫の恩に報いるため、昴皇子の暗殺を目論む藍夏だったが、企ては露見し、王花鈴は牢に閉じ込められてしまう。
蛾太妃の咎めを逃れた王花鈴は、伯姫から母・王倩のことを聞かされ、皇帝陛下の母・玉美人との関係を知る。

藍夏は伯姫とともに去り、王花鈴は昴皇子の遊び相手として一人残る。そこへ皇帝陛下が通りかかり、王花鈴が敵対する光姫長公主の配下だという誤解を与えてしまう。皇帝陛下の誤解を解くため、決死の覚悟で皇帝の居城・永寿宮へ忍び込む王花鈴だったが‥‥。
蛾太妃の咎めを逃れた王花鈴は、伯姫から母・王倩のことを聞かされ、皇帝陛下の母・玉美人との関係を知る。

藍夏は伯姫とともに去り、王花鈴は昴皇子の遊び相手として一人残る。そこへ皇帝陛下が通りかかり、王花鈴が敵対する光姫長公主の配下だという誤解を与えてしまう。皇帝陛下の誤解を解くため、決死の覚悟で皇帝の居城・永寿宮へ忍び込む王花鈴だったが‥‥。
レビュー

後宮ものというと、まず、ファンタジーノベル大賞を受賞しアニメ化もされた『後宮小説』(酒見賢一,1989年)を思い出す。選考委員の井上ひさしさんは、「シンデレラと三国志と金瓶梅とラストエンペラーの魅力を併せ有す、奇想天外な小説」と評価したという。
最近では、「小説家になろう」サイトに投稿され、これもアニメ化されて人気の『薬屋のひとりごと』(日向夏, 2011年~)がある。シンデレラ・三国志・金瓶梅の要素が盛り込まれ、そこにシャーロック・ホームズが加わる。
後宮ものというジャンルは、どうやら単なるファンタジーの枠に収まるものではなく、オタクが好む緻密な背景設定と、老若男女を巻き込むロマンチシズムがてんこ盛りになっているようだ。

で、本作品であるが、『後宮小説』以来の名作だと思う。加えて、中国史が精密に描かれている。日中交流が深まっている証左であろう。
たとえば、第3巻で、悪逆非道の王皓が王花鈴に「私には家族しか信じるものがない」と語るのだが、中国では日本と違って極端な政権交代が繰り返され、結果として、安定した社会で時間をかけてサプライチェーンを築く必要がある製造業が少なく、家族や同族が中心となって経営できる商業が盛んになっていった史実がある。安っぽいロマンチシズムではなく、力によって家族を守る王皓が中国的な家父長主義を体現してみせる。
後宮ものというジャンルは、どうやら単なるファンタジーの枠に収まるものではなく、オタクが好む緻密な背景設定と、老若男女を巻き込むロマンチシズムがてんこ盛りになっているようだ。

で、本作品であるが、『後宮小説』以来の名作だと思う。加えて、中国史が精密に描かれている。日中交流が深まっている証左であろう。
たとえば、第3巻で、悪逆非道の王皓が王花鈴に「私には家族しか信じるものがない」と語るのだが、中国では日本と違って極端な政権交代が繰り返され、結果として、安定した社会で時間をかけてサプライチェーンを築く必要がある製造業が少なく、家族や同族が中心となって経営できる商業が盛んになっていった史実がある。安っぽいロマンチシズムではなく、力によって家族を守る王皓が中国的な家父長主義を体現してみせる。
参考サイト
- 暗殺後宮〜暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい〜:ビッコミ
- 暗殺後宮〜暗殺女官・花鈴はゆったり生きたい〜:ビッグコミックBROS
- 緒里たばさ@tabasa_i:Twitter(現・X)
(この項おわり)
後宮ものファンタジーのなかでも、中国史の実像に迫っている点が興味深い。