国勢調査を騙る業者の傾向と対策

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封筒
2020年(令和2年)9月14日から国際調査がスタートした。ここでは、国勢調査の是非はともかく、過去の事例をもとに、調査を騙る個人情報収集業者の手口を予想し、対策を考えます。

なお、総務省と消費者庁がそれぞれ、国勢調査を装った詐欺や不審な調査への注意喚起を行っています。

2015年、インターネット回答導入

2015年度の国勢調査では初めて、インターネット回答を全国導入しました。
PCやスマホに慣れた人にとっては手軽な解凍方法ですが、悪意を持った第三者による情報詐取の可能性などセキュリティ面を不安視する声があります。

ネット回答用のID・初期パスワードが記入された紙の入った封筒を、国政調査員が、9月10日~12日にかけ各世帯に配布しました。
この封筒は、調査員が原則、各戸をを訪問して手渡しで配布することになっています。配布の際、中身を説明した上で渡すため、封筒に封はしていないそうです。
調査員が2~3回訪ねても世帯員に会えない場合は、封筒を郵便受けに投函するなど代替手段をとるとしています。その際は、詐取されないように入れるよう指導しているといいます。
ところが、マンションの集合ポストに誰でも抜き取れそうな形で多数の封筒が差し込まれている写真がネットに投稿され、セキュリティを不安視する声が上がっています。

都内でITコンサルティングなどを手がけるベンチャー企業「のらねこ」の代表者は、国勢調査の回答用ページをかたった偽サイトによるフィッシング詐欺が起き個人情報が詐取される可能性があるのではと考え、9月14日、公式サイトに似せたサイトを作成し公開した。製作に要した時間は2時間ほどだったという。
そのURLはTwitterなどを介して瞬く間に拡散し話題となり、総務省から削除依頼を受ける事態となった。代表者は、公開から15時間でサイトを削除し、「大きな騒ぎとなってしまい、深く反省しております」と述べた。

国勢調査員を騙る場合

国勢調査の調査用紙に記入する事項は、個人情報そのものです。しかも、年収など、かなりセンシティブな内容の記入を求められることもあります(今回がどのように質問項目になっているかは分かりませんが)。

調査用紙は、原則として調査員が戸別訪問して回収することになっているので、まず、この調査員を騙るケースが想定されます。
2005年(平成17年)10月2日、名古屋市は、国勢調査員を装って調査票を持ち去ろうとした事件が3件あったことを公表しました。うち1件は実際に調査票を渡した。調査票の持ち去り事件は同市内では初めてで、市は「調査員が国勢調査員証を携帯しているか確認してほしい」と呼び掛けています。
2005年(平成17年)10月4日までに、愛知県内では、未遂を含めて15件の調査票持ち去り事件が発生しました。また、東京都内でも3件発生しています。神奈川県内では、実際に持ち去られてしまったケースが3件、未遂が1件発生しました。
2013年(平成25年)5月15日、愛媛県松山市と西条市で国勢調査をかたって個人情報を聞き出そうとする不審電話が2件ありました。愛媛県では、「国や県がいきなり電話やメールで個人情報をうかがうことはない」と注意を呼びかけています。
2013年(平成25年)4月以降、茨城県内で国勢調査をかたって個人情報を聞き出そうとする不審な電話が相次いでいます。茨城県に相談があったのは水戸、北茨城、笠間、取手の4市で、4月に1件、5月は5件と増加。電話の相手は年齢や家族構成、預金口座の数などを聞いてきたといいます。
このほか、全国各地で同様の事件が発生している模様です。

調査員は、市町村長の推薦に基づいて総務大臣が任命する非常勤の国家公務員です。もちろん、収集した個人情報を漏洩することがないよう、守秘義務も課せられています。

調査員は、国勢調査員証を携行して戸別訪問するので、この身分証明書を確認することが必要です。
調査員証のイメージは公開されていないようですが、「下記の者は平成22年国勢調査の国勢調査員であることを証明する」という一文と、調査員の氏名、任命期間、発行日及び総務省統計局長氏名が明記され、総務省統計局長の公印が印刷されているそうです。

電話確認を騙る場合

調査用紙は市町村役場で回収・開封されますが、この際に記入内容が不備・不明瞭であった場合に確認の電話がかかります。これに乗じるケースが想定されます。

「役場の方から電話しました」という類の電話です。
国勢調査でクレジットカード番号や銀行の口座番号などを調べることはあり得ませんので、そのような問い合わせが紛れていた場合には疑ってかかるべきです。
この場合、電話をかけてきた役場の部署名、担当者名、連絡先電話番号を確認します。そして、自分から電話をして、確認事項に答えるようにしましょう。

2005年(平成17年)10月3日、福島県福島市内で、「これから調査票を回収に行く」などという国際調査員を装った不審な電話がありました。

調査員を狙う場合

調査員が扱う調査用紙が狙われる場合も考えられます。
調査用紙の紛失はあってはならないことですが、盗難はあり得ます。一人の調査員が持っている調査用紙の数は大したことはないのですが、ある個人を狙いうちにするような業者の場合、こうした手口を使うかもしれません。

2005年(平成17年)9月17日夜、大阪市で、説明会からの帰路の途中だった国勢調査員の女性が、背後から鈍器のようなもので頭を殴られ、国勢調査の対象となっている64人分の個人情報が記載された調査用紙などが入った手提げかばんを奪われる事件が発生しました。
状況から見て、単なる物取りの可能性が高のですが、個人情報が盗まれたことに変わりはありません。
また、調査員自身が、役場の担当者を騙る者からの電話に受け答えをする過程で、個人情報を漏らしてしまう可能性もあります。調査員の方々は、個人情報保護の理念を理解し、自分がリスクのある仕事を引き受けていることを認識して業務に当たっていただきたいと思います。

対策1:調査票の封入

調査用紙の密封用封筒が全戸に配布されます。
以前は、調査員が調査票を回収する際、記入に漏れや誤りがないかその場で確認するために内容を見られてしまいましたが、密封用封筒に入れることで、誰にも見られることなく調査票を運んでもらえるようになりました。
また、時間の都合などで調査員に会えないような場合は、密閉用封筒を直接役場に郵送することもできます。

対策2:インターネット利用(一部モデル地区)

2005年(平成17年)の国勢調査は結局、未回収率4.4%と、過去にない高い値になってしまいました。これは、同じ年に施行された個人情報保護法の影響も大きいと言われています。
われわれ国民としては、悪意をもった業者への対策はしつつも、国勢調査にはきちんと回答したいものです。

そこで、2010年(平成22年)の国勢調査では、実験的に一部の地域でインターネットによる調査を行うことになっています。
十分なセキュリティが保たれ、安全な運用がなされたシステムであれば、いままで以上に信頼がおける調査方式となるでしょう。

ただし、類似アドレスに注意する必要があります。
国勢調査オンライン窓口の正規URLは https://www.e-kokusei.go.jp/ ですが、このURLに .net を付加したサイトが確認されました。また、Googleで検索すると「もしかして https://e-kokusai.co.jp」と表示されます。

参考サイト

(この項おわり)
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