検温カメラから顔写真が流出

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サーモグラフィー検査のイラスト(女性)
新型コロナ・ウイルス感染予防のため、入口に検温カメラサーマルカメラ)を設置する施設が増え、約5万台が販売されました。ところが2023年(令和5年)5月に新型コロナが5類に移行した途端、検温カメラの必要性が低下し、フリーマーケットなどに中古品として売却するケースが増えています。その中古品の多くに顔画像が残ったままで、なかには1台に約3,700枚の児童の顔画像が残っていたカメラがあったといいます。

なぜ顔画像を保存しているのか

検温カメラは額の位置を特定して自動的に体温を計算するために、一時的にメモリ内に顔画像を保存してから計算処理しますが、その後、顔画像を保管しておく必要はないはずです。ましてや、電源を切っても顔画像データが失われないようにしているのは、何か目的があるに違いありません

新型コロナ・ウイルス感染症が発生する以前は、本体に顔画像を保管するような検温カメラはほとんどありませんでした。ところが、2020年(令和2年)夏頃から、誰が発熱しているのかを検知できる顔認識機能のある製品が登場し、顔画像を保管するようになっていきました。さらに、コロナ禍が終息した後も利用してもらえるよう、入退出管理や市場調査のために顔画像を積極的に保管するようになりました。
ところが、これらの製品には、保管された顔画像データの取り出し方が記載されていなかったり、ものによっては顔画像を保管すること自体を明記していない製品があります。
このためユーザーは、顔画像が保管されていないと誤解し、そのまま中古品として売却してしまったのです。

また韓国では、一部の中国製の検温カメラに顔画像や音声データを収集し、データを暗号化して中国へ送信する仕組みを持つ製品が見つかったといいます。

流出した顔画像が悪用されるリスク

流出した顔画像は、たとえば個人を特定し、撮影時刻などから行動パターンが推測されることで、つきまといなどの被害につながるリスクがあります。また、他の画像と合成し、フェイク画像が作られてしまうリスクもあります。

検温カメラ設置者にもリスクがあります。
2023年(令和5年)5月30日、検温カメラメーカーなどが加盟している日本万引防止システム協会は、「サーマルカメラ等に保存されている個⼈情報(顔画像)漏洩に関する注意喚起」を公表しました。
このなかで、顔画像を保存していることを被検温者に通知することや、転売や廃棄時に確実にデータ消去すること。それができなければ専門業者に委託するか、物理的に破壊することを求めています。さらに、「蓄積された顔画像等の個⼈情報のデータを消去せずに転売や廃棄することは、個⼈情報保護法に抵触する恐れ」があると、法令違反のリスクを注意喚起しています。

2023年(令和5年)9月13日、国の個人情報保護委員会は、「サーマルカメラの使用等に関する注意喚起について」を公開し、検温カメラ設置者は個人情報保護法に則り、データを消去してから処分することや販売事業者などに対して画像を保存していることなどを説明書に記載するよう求めています。

参考サイト

(この項おわり)
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