JIS X 0208の改正と混乱

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2017年(平成29年)現在、JIS X 0208 は3回の改正を経ている。
1983年(昭和58年)の改正(83JIS)では多くの字体の簡略化と符号位置の入れ替えが行われ、パソコンが違うと表示される字形が異なるという問題を引き起こした。

1983年改正

1983年(昭和58年)9月1日、JIS C 6226-1983(別名 83JIS)が制定された。
1981年(昭和56年)10月1日に告示された常用漢字表や人名漢字別表を受け、特殊文字39文字、罫線素片32文字が追加された。
なお、1978年(昭和53年)の当初規格を 78JIS と呼ぶことが多い。

83JIS では、さらに、字体の簡略化と符号位置の入れ替えを行っている。これはのちに、日本語表示をする上で混乱の元となった。
字体の簡略化として代表的なものは、「あなたの名前はきちんと登録されているか」で話題にした森鴎外問題である。78JIS では、(区点18-10)であった文字が、83JIS では同じコードであるにもかかわらず に変わってしまったのだ。
JIS C 6226 では、部首としての を区別している。たとえば、(区点18-04)と(区点61-31)、(区点18-05)と(区点61-56)などは、それぞれ、別々のコードが与えられている。この原則に従えば、 は別コードを設けて追加すべきだった。
83JIS では、このような字体の簡略化が300文字で行われた。

さらに問題なのは、符号位置の入れ替えである。
たとえば、78JIS で第1水準文字であった (区点18-09) と第2水準文字であった (区点82-84)を入れ替えてしまった。
厄介なことに、略字体に変更した上で入れ替えたものもあり、これらは26文字に及ぶ。

このような改正の結果、同じテキストデータであるにもかからわず、ワープロやパソコンが違うと表示される文字が変わってしまうという問題が起きた。さらに悪いことに、パソコンに新しい日本語プリンタを接続すると、画面の文字と異なる文字が印字されるという事態も起きた。

1990年改正

1990年(平成2年)9月1日、JIS X 0208-1990(別名 90JIS)が制定された。
第2水準に2文字が加わり、225文字の漢字の字体が変更された。83JIS の変更より小規模だったとはいえ、人名に使われている漢字の字体が変わることで、行政システムを中心に混乱が起きた。

1997年改正

1997年(平成9年)1月20日、JIS X 0208:1997(別名 97JIS)が制定された。
過去の変更が混乱をもたらした反省から、文字表には一切変更を加えず、規格の厳格化を行っている。

97JIS の特徴は、複数の字体が1つの区点位置に対応する包摂規準 (ほうせつきじゅん) を定めたことである。
たとえば (区点16-09)は2点しんにょうだが、1点しんにょうの文字も同じ句点に包摂することとした。
97JIS では約200種類の包摂規準を設けた。

参考サイト

(この項おわり)
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