正確な1年の長さは?

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最近、小学校4年生以上を対象とした調査で、地球が太陽のまわりを公転していることを知らない子供が多いといった結果が出た。
これは、小学校のカリキュラムで地球の公転について教えなくなったために発生した弊害だが、あなたは、地球の公転についてどの程度の知識をお持ちだろうか。

太陽年とは

地球の公転
現在我々が使っているグレゴリオ暦(太陽暦の一種)は、地球が太陽のまわりを1周することを1年と数えている。
ところが、グレゴリオ暦ができた当時、宇宙ロケットはなかったから、宇宙的尺度で地球が太陽のまわりを1周することを測る手段がなかった。
そこで、地球から太陽を観測して、太陽が春分点(水瓶座にある)から春分点へ戻ってくる期間を1年とした。日数に換算すると365.24219日で、これを「太陽年(solar year, tropical year)」または「回帰年」と呼ぶ。

前回述べた閏年ルールを適用すると、グレゴリオ暦は3,200年で1,168,776日ある計算になる。これに対して太陽年は約1,168,775日となり、グレゴリオ暦との差が1日になる。

ちなみに、2012年(平成24年)に世界の終末が来ると騒がれた古代マヤ人が使っていた「マヤ暦」も太陽暦の一種だが、こちらは約5000年で太陽年との差が1日となる。

歳差運動

地球は、自ら自転し、太陽のまわりを公転すると同時に、自転軸が軸から約23.5度外れたところを中心にして回転している。これが歳差運動で、回転周期は約25,800年(延暦19年)である。
このため、天の北極の位置がずれると共に、春分点・秋分点は黄道に沿って少しずつ西向きに移動している(最近まで春分点は魚座にあったが、今では水瓶座に移動しつつある。占星術的には、これに意味を見出しているらしいが、科学的には単なる歳差運動である)

このことから、太陽年は、厳密に地球が太陽のまわりを1周する時間ではないことが分かる。

近点年

地球の公転軌道は楕円であるが、太陽に最も近い点を「近日点」、最も遠い点を「遠日点」と呼んでいる。
そこで、近日点から近日点まで1周する時間を1年と考えたのが「近点年(anomalistic year)」である。1近点年は365.259635日で、太陽年より20分ほど長い。
しかし、他の惑星の引力の影響で、近日点は移動することが分かっている。これを「摂動」と呼ぶ。

恒星年

では、天空上で位置が動かないと考えられている「恒星」との位置関係で1周する時間を1年と考えたらどうだろうか。これを「恒星年(sidereal year)」と呼ぶ。1恒星年は365.256363日で、太陽年より25分ほど長い。

しかし、これでも十分ではない。なぜなら、太陽は銀河中心のまわりを回転しているし、銀河系それ自身も宇宙の中で移動している。結局、宇宙には絶対的な座標系がない以上、幾何学的に1周することを厳密に規定できないのである。
そこで、現在の暦は便宜上、1太陽年を「1年」として扱っている。したがって、コンピュータは1太陽年を1年として扱えばよいことになる。ところが、コンピュータが動作の基準にしている時間と暦の上の1太陽年は微妙に“ズレ”ている。問題を次に述べることにする。
(この項おわり)
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