ゲーム依存(ゲーム障害)

2019年5月25日 作成
ゲーム障害
ゲーム依存(ゲーム依存症、ゲーム障害)とは、ゲームの世界に没頭し、日常生活がままならなくなるような依存状態を指します。オンラインゲームなど、ネット依存と被る部分があります。

目次

事例:コロナ禍における子どものゲーム依存

徹夜でゲームをする人のイラスト(男性)
2020年(令和2年)、新型コロナ・ウイルスの感染拡大を受け、自宅待機やオンライン授業になる学校が増えています。自宅でもゲームプレイ時間が増え、ゲーム依存になるのではないかと心配する保護者の方もいるでしょう。

WHOの定義では、ゲーム依存は12ヵ月以上続くことで起きるとされています。数ヶ月間、ゲームプレイ時間が長くなったからといって、すぐに心配することではありません。ただし、普段からゲームプレイ時間が長いお子さんは、依存するリスクがあります。
なぜゲームに熱中するのか――心理的に満たされていないのか、何かストレスがあるのか、何かから逃避しているのか、お子さんとよく話し合ってください。ゲームを取り上げるのではなく、他にも熱中できることを発見させ、1つのことに依存しない生活を整えてあげてください。

事例:課金が膨らみ生活破綻

課金ゲームに熱中している人のイラスト
34歳の男性の場合、大学生時代からオンラインゲームにのめり込みました。引っ込み思案の性格だが、ゲームの中で他のプレイヤーとチャットするときには、思ったことは何でも言えたといいます。
一方で、ゲームを有利に進めるアイテムを手に入れるために課金を繰り返しました。いつしか手元の資金では足りなくなり、母親のクレジットカード番号を盗んでキャッシングを行い、それだけでは足りずに消費者金融からも借り入れ、400万円をつぎ込んだといいます。
生活が破綻してもゲームを止めることができず、「死んで逃げればいい」と思ったといいます。
支援団体でカウンセリングを受け、ようやく自分が病気だったと気づいたといいます。

事例:仕事のさみしさから

暗闇でスマートフォンを使う人のイラスト(女性)
26歳の男性の場合、夜勤が多く、職場で話をする相手がおらず寂しかったといいます。オンラインゲームなら24時間、いつでも誰でもチャットができます。
仕事の合間や睡眠時間を削ってゲームに没頭し、1日で30万円以上を課金したこともあるといいます。最後には同僚から多額の借金をして、会社に行けなくなりました。
「当時はゲームにはまっているだけ、と自分をだましていた。依存していると認めたくなかった」と振り返っています。

海外事例

韓国や中国では、10代や20代の人間が寝食を忘れてゲームに熱中し過労死してしまうという事件が起きています。

ICD-11とゲーム障害

2019年(令和元年)5月25日、WHOは総会で、ゲーム障害(gaming disorder;ゲーム依存)を国際疾病として正式に認定しました。2022年(令和4年)に有効になる「国際疾病統計と関連する健康問題の統計的分類」(ICD-11)に掲載されます。
ICD-11の定義では、ゲーム障害の主な症状は、ゲームをする頻度や長さを自分で制御できず、ゲームを生活での利益や日常活動よりも優先し、問題が生じてもゲームを継続して個人、家庭、社会、教育、職業など重要な機能の障害をもたらすこととしています。
こうした症状が12カ月以上続けばゲーム障害と診断されるばあいがあります。なお、症状が重い場合は12カ月未満でも診断されるとしています。

WHOによると、すべての人がゲーム障害になるわけではありませんが、プレイ時間が長くなりすぎないようコントロールする必要があるとしています。

依存を引き起こすメカニズム

課金ゲームに熱中している人のイラスト(女性)
研究によれば、ゲーム・プレイすることで得られる刺激や高揚感などを脳が「報酬」「良いもの」と認識することで、娯楽や気分転換になります。この脳の動きについては、ギャンブルのような行為に対する依存(行為依存、プロセス依存)だけではなく、アルコールや薬物のような物質依存にも共通しているという説もあります。
ところが、依存傾向の強い人手は、自身の苦しい生き方や、心の中に生じるネガティブな感情(生きづらさ・生きづらい感情)の対処手段として、ゲームの刺激や高揚感を欲するようになり、次第にコントロールが効かなくなり、生活に問題が生じてもやめられず、かえってゲーム世界に逃避するという悪循環に陥ると考えられています。

ゲーム依存症対策関係者連絡会議

スマートフォン中毒のイラスト
2020年(令和2年)2月6日、厚生労働省が「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」を開き、中央省庁や医療団体、ゲーム関連団体とゲーム依存症の現状や課題について議論した。厚生労働省、内閣府、消費者庁、文部科学省、経済産業省などの中央省庁や、久里浜医療センター、日本医師会、日本精神科病院協会などの医療関係団体、日本オンラインゲーム協会、日本eスポーツ連合などのゲーム関連の業界団体などが参加した。
久里浜医療センターの提出した資料によると、17年の調査で、中高生の14.2%はネット依存が疑われるという。ゲームのやり過ぎで、成績や仕事のパフォーマンスが落ちた人や、昼夜逆転が起きた人がいることも指摘。ゲーム障害によって脳の機能障害が起きる可能性も示した。
予防対策として、下記の5点を挙げた。
  1. ゲーム・スマホの使用開始を遅らせる
  2. ゲーム・スマホの使用時間を少なくさせる
  3. ゲーム・スマホを全く使用しない時間を作る
  4. 家族のスマホ使用も減らす
  5. リアルの生活を豊かにする
中央省庁は今後のゲーム依存対策について取りまとめた。厚生労働省は、依存症に関する正しい知識の啓発を行い、3月には「国際ギャンブル・ネット依存フォーラム」やシンポジウムを開いて知識の共有などを行うとした。文部科学省は、子ども向け啓発資料を作る他、依存症予防教室の支援を行う。内閣府や経済産業省、消費者庁も消費者や保護者に向けた啓発資料を作るという。

参考サイト

(この項おわり)
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