水資源が足りなくなる

2023年9月24日 更新

地下水が枯渇する

トウモロコシ畑 - 米カリフォルニア州
アメリカ中西部の肉牛生産を支えているのは、餌としてのトウモロコシだ。この地域の気候は乾燥しているが、オガララ帯水層の膨大な量の地下水を汲み上げてトウモロコシを栽培している。地下水を汲み上げる井戸の深さは60メートルだが、年間30cmずつ深くなっているという。
帯水層の深さは100メートルとされており、このペースで水が減れば、2050年から2070年の間に枯渇する可能性が高い。

問題はアメリカ中西部だけではない。世界の食糧のほぼ半分が、温暖で乾燥した地域で生産されている。穀物を栽培するのに必要な水は、どこも地下水を汲み上げている。降水量が多く、池や河川の水を引いて灌漑している日本とは根本的に異なる。

米国コロラド鉱山大学の水文学者インゲ・デ・グラーフさんは、具体的にいつ、どこの帯水層の水が限界に達するのかを予測するため、1960年から2100年にかけての地域ごとの地下水の動向をシミュレートするモデルを開発した。
その結果、カリフォルニア州の農業の中心地であるセントラルバレー、トゥーレアリ盆地、サンホアキンバレー南部では、早くも2030年代には利用可能な地下水がなくなることがわかった。インドの上ガンジス盆地やスペイン南部、イタリアでは、2040年から2060年の間に地下水が底をつくという。

環境省によれば、1kgのトウモロコシを生産するには約1.8m3の水が必要だ。トウモロコシはウシの餌となるが、農林水産省によれば、牛肉1kgを生産するには11kgのトウモロコシが必要という。また、埼玉県によれば、肉牛1頭あたりの飲水量は1日50リットル以上とされている。日本の畜産の将来を考える会によると、肉牛は出荷まで約340ヶ月、出荷時体重800kgのうち精肉となるのは248kgというから、牛肉1kgを生産するために飲んだ水の量は50×365×(30÷12)÷800×248≒14,144リットル=14.14m3となる。
つまり、牛肉1kgを生産するには、11×1.8+14.14=20.3m3の水が必要となる。
日本人は豊富な水を生活用水として利用しているが、それでも1人1日あたり約3m3程度だ。牛丼(並)に乗っている牛肉の量は約90グラムだが、この1食分の牛肉を生産するのに、1人が1週間で使う生活用水が投入される計算になる。

バーチャルウォーター

日本のバーチャルウォーター輸入量
食料を輸入した国が自分の国でその食料を生産した場合、どのくらいの水が必要になるかを推定した数字をバーチャルウォーターと呼ぶ。
日本は水資源を輸入することはないが、食糧自給率が38%と低いため、輸入するバーチャルウォーターは年間640億トンにも達し、国内の灌漑用水量を上回るという。
つまり、日本は、上述の地下水枯渇と無縁ではないのである。

地球温暖化の影響

干ばつ
米ラトガース大学環境科学部教授アンソニー・J・ブロッコリーさんによれば、地球温暖化により大陸内陸部は乾燥し、降水量が増え河川の流量が増える結果、われわれ人類は海水面上昇より先に水不足の危機に直面することになるという。

参考サイト

(この項おわり)
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