太陽系の「大移動」と、銀河中心に見つかった生命のもと

2026年7月16日 作成
太陽系と太陽双子星たちの大移動のイメージ(画像提供:国立天文台)
太陽系と太陽双子星たちの大移動のイメージ(画像提供:国立天文台)
わたしたちの太陽系は、今から46億年前に天の川銀河の中で生まれたと考えられています。ところが太陽系は、生まれた場所から1万光年以上も離れた今の位置まで、大きく移動してきたようです。いったいいつ、どうやって引っ越したのでしょうか。2026年(令和8年)3月、東京都立大学と国立天文台の研究グループが、この謎に迫る新しい手がかりを発表しました。

目次

太陽系はどこで生まれたか?

銀河の中心部には、細長い棒状構造(銀河バー)と呼ばれる星の集まりがあります。この重力によって、星は「共回転バリア」と呼ばれる見えない壁の内側と外側を行き来しにくいと考えられてきました。太陽の年齢や成分を調べると、太陽系は銀河の中心から2万光年より内側で生まれ、今は2万7000光年の位置にいます。太陽系はこの壁を越えて大移動したことになり、天文学者にとって長年の謎でした。

太陽そっくりの星「太陽双子星」を6,594個発見

研究グループが注目したのは、太陽にそっくりな星「太陽双子星」です。ヨーロッパの ガイア衛星が集めた560万個の星の観測データを解析し、太陽双子星6,594個の一覧表を作りました。これまでで最大級だった一覧表の約30倍の数です。観測されやすい星・されにくい星のかたよりを計算で補正し、それぞれの星の「本当の年齢」を求めました。

わかったこと:太陽系の"大移動"の道すじ

太陽系大移動のメカニズム(画像提供:国立天文台)
太陽系大移動のメカニズム(画像提供:国立天文台)
できあがった年齢の分布を見ると、太陽の年齢である46億歳の前後(40~60億歳)に、たくさんの太陽双子星が集まっていました。同じ年ごろの星が近くに多いということは、太陽系だけが特別に大移動したのではないことを意味します。銀河の棒状構造ができた60~70億年前ごろに、たくさんの星が一気に生まれ、そのすぐあとに大移動した可能性が高いのです。星が多く生まれる時期は、棒状構造の影響で星が動きやすくなると考えられています。

太陽系大移動の意味

もし太陽系が生まれてすぐに銀河の外側へ引っ越していたなら、超新星爆発などが多く起こる危険な銀河中心部を早く離れ、比較的安全な場所で長い時間を過ごせたことになります。これは、太陽系が生命を育む惑星系に成長できた理由の一つかもしれません。研究グループは今後、太陽系と全く同じ場所・同じ時期に生まれた「本当の双子星」を探す計画です。

星間空間で見つかった生命の材料

エリスルロースの分子模型
エリスルロースの分子模型
2026年(令和8年)7月、スペインの研究グループが、星と星の間に広がる星間空間の中に、炭素4個からなるの分子「エリスルロース」を発見したと発表しました。 (とう) は生き物に欠かせない物質で、体を動かすエネルギー源になったり、DNARNAの骨組みになったりします。宇宙で糖の分子が見つかったのは、これが初めてです。

エリスルロースをどうやって見つけたのか

発見の舞台は、天の川銀河の中心近くにある「G+0.693」という分子雲(ガスとちりの雲)です。スペインの電波望遠鏡2台を使い、91GHz以上もの幅広い電波を観測し、エリスルロースが出す電波の目印を17本も見つけました。統計的に本物である確率は99.8%以上と見積もられています。エリスルロースは、より小さい2種類の分子(グリコールアルデヒドエチレングリコール)が、宇宙のちりの粒の表面でくっついてできると考えられています。

エリスルロース発見が示すこと

エリスルロースは、隕石や小惑星ベンヌからも見つかっている糖(リボースなど)のもとになる可能性がある物質です。地球が生まれたばかりのころ、隕石によって宇宙から運ばれてきた糖が、生命のもとになるRNADNAづくりに使われたのかもしれません。研究チームは、地球に運ばれたエリスルロースの量を、約5億~500億キログラムと見積もっています。

過酷な環境でも生き残る生命の材料

2026年(令和8年)7月、新潟大学などの研究グループが、超新星爆発が起きた現場でも生命の材料になる有機分子が生き残っていることを発見しました。約1600年前に重い星が爆発した領域「超新星残骸RX J1713.7-3946」をアルマ望遠鏡で観測し、生まれたばかりの星を包む暖かいガスの「ゆりかご」(ホットコア)を世界で初めて見つけました。このゆりかごには、水や複雑な有機分子など、さまざまな分子が含まれていました。超新星爆発という過酷な環境でも、生まれたての星はゆりかごに守られ、化学的な豊かさを保てることを示しています。

まとめ:銀河系の中心と生命の誕生

銀河系の中心と生命の誕生
銀河系の中心と生命の誕生
これら3つの研究を重ねてみると、面白い姿が見えてきます。銀河の中心付近は、糖のような生命の材料になる分子が次々と作られる、いわば「生命の材料工場」のような場所なのかもしれません。ところが同時に、超新星爆発など生命にとって危険な現象が多く起こる場所でもあります。
しかも新潟大学などの研究が示すように、その危険な超新星爆発の現場でさえ、生まれたての星を包むゆりかご(ホットコア)の中では有機分子が生き残っていました。銀河の中心は、わたしたちが思っていたよりもしぶとく、生命の材料を作り、そして守り続けているのかもしれません。

太陽系が生まれてすぐに銀河の外側へ大移動していたのだとすれば、太陽系は材料を十分に受け取ったあと、危険な場所から抜け出して、安全に生命を育てる時間を確保できたことになります。銀河の中心は生命の"ゆりかご"であると同時に、長居すると危ない場所でもある――そんな二面性を持っているのかもしれません。

むろん、これはまだ推測の域を出ません。今後、太陽系の「本当の双子星」が見つかったり、他の分子雲でも糖の分子が見つかったりすれば、生命がどこで、どうやって生まれる準備を整えるのか、その答えに近づくでしょう。

参考サイト

(この項おわり)
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