ビタミンD不足は夏でも解消せず ― 英国の高齢者・有色人種の調査

2026年07月31日 作成
日光浴とビタミンD(イメージ)
日光浴とビタミンD(イメージ)
ビタミンDは、骨を丈夫にするために欠かせない栄養素です。魚やきのこなどの食べ物から取るほか、日光に含まれる紫外線(UV-B)を肌に浴びることで、体の中でもつくられます。不足すると、子どもではくる病 (くるびょう) 、大人では骨軟化症 (こつなんかしょう) 骨粗鬆症の原因になります。足りているかどうかは、血液中の「25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)」という物質の濃度で判定します。
2026年(令和8年)5月19日、英国のニューカッスル大学などの研究チームが、医学誌『European Journal of Clinical Nutrition』に「Circannual prevalence of vitamin D insufficiency in older and minoritized ethnic adults in Northern Britain(北部英国の高齢者および少数民族成人におけるビタミンD不足の通年的な広がり)」という論文を発表しました。

研究チームは、ビタミンDのサプリメントを飲んでもらう臨床試験の参加者を選ぶ段階(スクリーニング)で得られたデータを分析しました。対象は、イギリス北部に住む65歳以上の高齢者168人と、肌の色が濃い18歳以上の成人147人(フィッツパトリック分類のIV~VI型)の合わせて299人です。調査期間は2024年(令和6年)12月から2025年(令和7年)8月までです。指先から採った血液を専用のろ紙に染み込ませる「乾燥血液スポット」という方法で採取し、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC-MS/MS)で血中の25(OH)D濃度を精密に測りました。
調査の結果、血中25(OH)D濃度が50nmol/L未満(不足または欠乏)だった人は、高齢者で54.8%、肌の色が濃い成人で72.1%にのぼりました。英国の一般人口では年間を通じて約20%とされているので、この2つのグループは大きく上回っていることになります。

研究チームが特に注目したのは、季節による変化です。ビタミンD不足は日光の弱い冬に多く、夏には改善すると考えられてきました。ところが今回の調査では、日照が最も強い6月から8月でも、高齢者の平均55.6%が不足または欠乏のままでした。月ごとに見ても、割合が下がった月は高齢者で25.0%、肌の色が濃い成人で64.0%を下回ることはありませんでした。

肌の色が濃い人でビタミンD不足が多い理由について、研究チームは、皮膚のメラニン (めらにん) が紫外線をさえぎってビタミンDがつくられにくいこと、食事の内容、日光に当たる時間が短い生活習慣や文化的な習慣などが重なっている可能性を挙げています。研究チームは「北部英国の高リスクの人々にとって、日光浴だけでビタミンD不足を補うのは難しい。季節に応じてサプリメントの量を調整する現在の指針は適切でない可能性があり、一年を通じた補給と対象を絞った対策が必要だ」と結論づけています。

なお、この研究の資金はサプリメント企業のBetterYou社が全額提供していますが、研究の設計・実施・データの解釈にはニューカッスル大学だけが関わったと記載されています。
血液検査でビタミンD濃度を調べる(イメージ)
血液検査でビタミンD濃度を調べる(イメージ)
日本でも事情は変わりません。2023年(令和5年)6月、東京慈恵会医科大学の研究チームは、東京都内で健康診断を受けた5,518人の血中ビタミンD濃度を調べた結果を発表しました。日本内分泌学会と日本骨代謝学会の基準(30ng/mL以上が充足、20~30ng/mL未満が不足、20ng/mL未満が欠乏)に当てはめると、充足していたのはわずか2%で、不足が19%、欠乏が79%でした。
なお、英国の研究が使う「50nmol/L」は日本の単位に直すと20ng/mLにあたり、日本の「欠乏」の境目と同じ値です。日本の基準の方が厳しいため、単純な数字の比較はできませんが、日本でもビタミンDが足りていない人が非常に多いという傾向は共通しています。また、東京の調査では年齢が低い人ほど不足の割合が高いという結果も出ており、高齢者だけの問題ではないことが分かります。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、成人のビタミンDの目安量を1日8.5μgとしています。サケやサンマなどの魚、干ししいたけ、卵黄などに多く含まれます。日焼けを気にして日光を避ける生活が続く場合や、屋内で過ごす時間が長い場合は、食事の内容を見直したり、医師に相談してサプリメントを使ったりすることを検討するとよいでしょう。

参考サイト

(この項おわり)
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