議席数を固定すると「地域代表」と「得票比例」は両立できない

2026年08月04日 作成
地域代表・得票比例・議席数固定の三すくみ
選挙制度が抱える三つの条件の関係(イメージ)
2026年(令和8年)7月31日にデンマークの研究者らが発表した報告は、選挙制度が目指す三つの条件を数学で調べました。それは、各地域から代表を選ぶこと、各党の得票率に近い割合で議席を配ること、議会の議席数を変えないことです。結論は、三つすべてをどんな選挙結果でも保証する制度は作れない、というものでした。
二段階選挙制度では、まず選挙区ごとに地域の議席を決め、次に全国の得票率とのずれを「調整議席」で直します。研究者は、この仕組みを行列や関数で表し、地域議席を必ず守る「地域代表」、得票に応じた「比例性」、議席数を一定にする「定数固定」を厳密に定義しました。

問題は、政党の数が増えるほど表面化します。ある党が一部の地域で強く、全国ではそれほど多くの票を得ていない場合でも、いったん獲得した地域議席を取り上げないなら、他党との比例を回復するために多くの調整議席が必要です。しかし議席総数が固定されていれば、調整に使える議席には限りがあります。このため、三条件のうち少なくとも一つをあきらめなければならない選挙結果が必ず存在すると証明しました。

現実にも同じ問題が起きています。ドイツでは地域代表と比例性を守った結果、連邦議会が標準の598議席から2021年(令和3年)には736議席へ膨らみました。2023年(令和5年)の制度改革では定数を抑える代わりに、選挙区で1位になっても議席が保証されない場合が生じます。デンマークの2022年(令和4年)総選挙では、地域議席によるずれを調整議席で直し切れず、得票数の少ない陣営が多数派となりました。

研究者は回避策として「地理的順位付き保証比例方式」を提案しました。最初に全国の得票から各党の最終議席数を決め、その後、各地域での得票の強さを順位付けして議席を地域へ割り当てます。従来のように地域議席を先に確定しないため、不可能性定理の条件を外しながら、比例性と地理的な広がりの両方を目指せます。ただし、ある地域で最多得票の党が必ず議席を得るとは限らず、分かりやすさや地域の納得をどう確保するかが課題です。

参考サイト

(この項おわり)
header