広がる検索汚染、AIも誤回答

2026年08月06日 作成
検索結果に「詐欺ではありません」と並ぶ画面を見て信じ込む利用者
検索結果の見出しだけで判断してはいけません
不審な投資グループの名前を検索したところ、「詐欺ではありません」「素晴らしい」「儲かりました」といった見出しが並んだ――。ITmedia NEWSの報道によると、警視庁は2026年(令和8年)7月24日、SNS型投資詐欺のグループがこうした手口を使っていると注意を呼びかけました。検索結果が意図的にゆがめられた状態を検索汚染といいます。

警視庁は公式アカウント警視庁サイバーセキュリティ対策本部(@MPD_cybersec)で、「検索結果のみを過信しないよう注意しましょう」と呼びかけました。背景には被害の急増があります。警察庁の統計によると、2025年(令和7年)のSNS型投資詐欺は認知件数9,523件、被害額1,288.0億円で、前年より47.9%増えました。SNS型ロマンス詐欺と合わせると15,168件、1,834.3億円に達します。

問題は、その文言が並ぶ場所です。汚染された見出しは、見知らぬ怪しいサイトではなく、官公庁や有名企業の正規ドメインの下に表示されます。利用者は「公的機関や大企業のサイトが詐欺ではないと書いている」と受け取ってしまいます。しかし、そのページを開いても、記事本文にそんな記述はありません。

目次

手口はサイト内検索スパム

サイト内検索スパムで検索結果が汚染される4つの段階
検索窓に入れた言葉が検索結果に載るまで
手口は4段階に分かれます。まず、どんなサイトが狙われるのかを見ておきましょう。多くのサイトは、検索窓に入れた言葉をそのままURLに含めます。たとえば、ある市役所のサイトで「ごみ」と検索すると、アドレスは「www.example.jp/search?q=ごみ」となり、ページの見出しには「『ごみ』の検索結果」と表示されます。入力した言葉が、URLとページ見出しの両方に現れるのが特徴です。

第1段階です。攻撃者は「ごみ」の代わりに、投資グループの名前を使って「ABC投資クラブは詐欺ではありません」と入力します(ABC投資クラブは説明のための架空の名称です)。すると「www.example.jp/search?q=ABC投資クラブは詐欺ではありません」というURLができ、そのページの見出しは「『ABC投資クラブは詐欺ではありません』の検索結果」になります。市役所が書いた文章は1文字も含まれていませんが、見出しだけを見れば市役所の主張のように読めてしまいます。

第2段階です。攻撃者は、このURLへのリンクを自分たちが用意したブログや掲示板に大量に置きます。第3段階では、検索エンジンのクローラがそのリンクをたどってページを見つけ、見出しごと索引に登録します。そして第4段階、利用者が「ABC投資クラブ」と検索すると、市役所のドメイン名とともに「『ABC投資クラブは詐欺ではありません』の検索結果」という見出しが並びます。表示されているのは攻撃者が入力した言葉にすぎませんが、公的機関が保証したように見えてしまいます。

標的にされたサイトの側は、投資に関する記事を1本も書いていません。それでも検索窓という入口があるだけで、 (だま) される材料を提供してしまいます。ページを開いたときに「検索結果」「該当する情報は見つかりませんでした」という表示だけで本文が見当たらない場合は、検索窓に入力された言葉が拾われているだけだと考えてよいでしょう。

手口自体は新しくありません。SEOコンサルティング会社JADEの報告(2023年2月8日)によると、2022年(令和4年)12月中旬からギャンブルやアダルト関連の語句で急増し、企業サイトの検索結果ページが検索上位に現れる被害が出ていました。それが2026年(令和8年)になって、SNS型投資詐欺の信用づくりに転用されたことになります。

AIの要約や回答も誤ります

検索汚染の影響は、人間だけにとどまりません。検索エンジンのAI要約や生成AIの検索機能は、検索結果の上位に並ぶページを材料にして答えを組み立てます。材料が汚染されていれば、AIは「複数のサイトが肯定している」と受け取り、「○○は詐欺ではありません」と答えてしまいます。ITmedia NEWSも、AI要約が同じ文言を表示する事例を報じています。

AIが検索結果の誤りをそのまま伝える問題は以前から起きています。2024年(令和6年)5月、Googleが米国で公開した検索のAI要約機能「AI Overviews」は、「ピザのチーズがはがれないよう接着剤を混ぜる」といった回答を示しました。ITmedia NEWSの記事によると、掲示板の冗談を根拠にしたとみられています。AIは情報の信頼性を自力で判断できるわけではありません

AIを狙って情報を送り込む動きも報告されています。米NewsGuardの調査報告(2025年3月6日)によると、モスクワを拠点とする「Pravda」ネットワークは2024年(令和6年)に約360万本の記事を配信し、主要な生成AI 10種を調べたところ、33%の回答で同ネットワークの虚偽の主張がそのまま繰り返されました。読者ではなくAIの学習と参照を汚染することが目的とみられます。

検索汚染は投資詐欺だけではありません

AIが自動生成した記事を大量に載せるだけのサイトも増えています。NewsGuardのAI追跡センターは、2026年(令和8年)6月23日時点で16言語3,749件のAI生成コンテンツファームを確認しました。もっともらしい社名を掲げ、1日に数十本の記事を出し、企業や公衆衛生、政治家に関する虚偽を広めています。こうしたページが検索結果を埋めれば、正確な情報にたどり着きにくくなります。

検索エンジン最適化の技術は、本来は必要な人に情報を届けるためのものです。しかし、順位を上げる技術は、そのまま誤情報を上位に押し上げる技術にもなります。検索結果もAIの回答も、「誰かが最適化した結果」が混ざっている前提で読む必要があります。

利用者ができる確認方法

第1に、検索結果の見出しや説明文だけで判断せず、必ずリンクを開いて本文を読みます。第2に、開いたページが検索結果の一覧や「該当なし」の表示だけなら、根拠にしてはいけません。第3に、正規ドメインでも安心せず、その言葉が誰の主張なのかを確かめます。第4に、AIの回答は出典リンクを開いて確認します。出典がない、または出典がサイト内検索結果のページであれば信用できません。

投資の勧誘を受けている場合は、検索ではなく公的な名簿で確かめます。金融庁の免許・許可・登録等を受けている事業者一覧に載っていない業者は、日本国内で金融商品取引業を行えません。あわせて無登録で金融商品取引業を行う者の名称等についても確認してください。2026年(令和8年)1月30日からは金融事業者一括検索機能も使えます。

判断に迷ったときは、警察相談専用電話「#9110」、または消費者ホットライン「188」に相談してください。「元本保証」「必ず儲かる」「今日だけ」といった言葉が出てきたら、検索結果に何が並んでいても取引を進めてはいけません。

サイト運営者ができる対策

自社サイトを踏み台にされないための対策もあります。検索流入が不要なら、サイト内検索結果ページ全体に「noindex」を指定します。検索流入を活かしたい場合は、検索結果が0件のときに404を返すかnoindexを指定し、さらに危険な語句を含むURLだけnoindexにする方法があります。JADEの報告とGoogle検索セントラルコミュニティの説明が具体的な手順を示しています。

そのうえで、Google Search Consoleや解析ツールで、サイト内検索URLがどれだけ索引登録され、どんな語句で流入しているかを定期的に点検します。放置すると、ブランドの信用を損なうだけでなく、サイト全体の評価が下がるおそれがあります。検索窓を置いているサイトは、自社名で検索して不自然な文言が並んでいないか確かめておくとよいでしょう。

参考サイト

(この項おわり)
header