AI生成コンテンツ / AI-generated content
年をとる速さは人によって違います。生まれてからの年数ではなく、体の状態から推定した年齢を生物学的年齢といいます。2026年(令和8年)9月7日、科学誌『Nature Biotechnology』に、生成AIが設計した薬を飲んだ患者の生物学的年齢の推定値が下がったとする研究が掲載されました。肺の病気の治療を目指す臨床試験で、血液から老化に関わる指標の変化も調べた研究です。
目次
生成AIが設計した薬「レントセルチブ」
研究を行ったのは、香港に拠点を置く創薬企業 Insilico Medicine などの国際研究チームです。同社は生成AIを使って、特発性肺線維症(IPF)という肺の病気に関わるTNIKという分子を標的として選び出し、さらに生成AIでその働きを抑える分子の構造を設計しました。こうして生まれた薬がレントセルチブ(rentosertib、開発コードISM001-055)です。同社の報告では、標的の探索を始めてから第0相・第1相臨床試験を終えるまで、30か月足らずでした。

特発性肺線維症は、肺がかたく縮んで息が吸いにくくなる病気で、原因がはっきりせず、根本的に治す方法がまだありません。同社は2023年(令和5年)7月から2024年(令和6年)6月にかけて、中国の21施設でIPF患者71人を対象とする第2相a臨床試験を実施しました。12週間の投与で、60mgを1日1回飲んだ群では一気に吐き出せる空気の量(努力肺活量)が平均98.4mL増え、薬を含まないプラセボ群の20.3mL減少と対照的な結果でした。この試験は主に安全性を確かめるもので、肺機能への効果は副次的な評価項目でした。一方で、肝臓の検査値の異常や下痢、血液中のカリウムが少なくなる低カリウム血症なども報告されています。
特発性肺線維症は、肺がかたく縮んで息が吸いにくくなる病気で、原因がはっきりせず、根本的に治す方法がまだありません。同社は2023年(令和5年)7月から2024年(令和6年)6月にかけて、中国の21施設でIPF患者71人を対象とする第2相a臨床試験を実施しました。12週間の投与で、60mgを1日1回飲んだ群では一気に吐き出せる空気の量(努力肺活量)が平均98.4mL増え、薬を含まないプラセボ群の20.3mL減少と対照的な結果でした。この試験は主に安全性を確かめるもので、肺機能への効果は副次的な評価項目でした。一方で、肝臓の検査値の異常や下痢、血液中のカリウムが少なくなる低カリウム血症なども報告されています。
血液のタンパク質で年齢を測る「老化時計」
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体の老化を測る方法としては、DNAの化学的な目印を調べる「エピジェネティック時計」が知られています。研究チームは、タンパク質が体の中で実際に働く物質であるため、なぜ変化したのかを説明しやすい点で、プロテオミクス老化時計の方が薬の効果を読み取りやすい可能性があると述べています。ただし、今回の試験で両者を直接比較したわけではありません。
4週間で2.71~3.46歳分の低下
今回の解析の対象になったのは、第2相a試験の参加者のうち、必要な血液が揃った42人です。内訳はプラセボ群11人、30mgを1日1回飲んだ群11人、30mgを1日2回飲んだ群11人、60mgを1日1回飲んだ群9人で、平均年齢は67.1歳でした。血液は、投与開始時、2週後、4週後、12週後の4回採られました。

その結果、6種類の老化時計すべてで、薬を飲んだ群の生物学的年齢の推定値が投与開始時より低下する傾向を示しました。4週の時点では、6種類の時計と3つの投薬群を組み合わせた18通りのプラセボ群との比較のうち、11通りで研究上の統計基準を満たす差が出ました。多くの比較を行う影響を補正したQ値が0.10未満という基準で、探索的な結果として読む必要があります。

2.71~3.46歳分という低下幅は、60mgを1日1回飲んだ群の4週後について、暦の年齢を予測する4種類の時計が示した値です。一方、異なる種類の時計で最も広く一致した変化が見られたのは、30mgを1日2回飲んだ群でした。全体として変化は4週で最も明瞭で、4週から12週の間には明確な追加の低下は見られませんでした。
その結果、6種類の老化時計すべてで、薬を飲んだ群の生物学的年齢の推定値が投与開始時より低下する傾向を示しました。4週の時点では、6種類の時計と3つの投薬群を組み合わせた18通りのプラセボ群との比較のうち、11通りで研究上の統計基準を満たす差が出ました。多くの比較を行う影響を補正したQ値が0.10未満という基準で、探索的な結果として読む必要があります。
2.71~3.46歳分という低下幅は、60mgを1日1回飲んだ群の4週後について、暦の年齢を予測する4種類の時計が示した値です。一方、異なる種類の時計で最も広く一致した変化が見られたのは、30mgを1日2回飲んだ群でした。全体として変化は4週で最も明瞭で、4週から12週の間には明確な追加の低下は見られませんでした。
老化そのものに効いた可能性
「肺の病気が良くなったから、ついでに数値も良くなっただけではないか」という疑問が当然わきます。研究チームは、いくつかの手がかりからそれだけでは説明しにくいと考えています。

第一に、薬を飲んだ人では、分裂をやめて周囲に炎症を広げる「老化細胞」に関係するタンパク質が減っていました。第二に、成長にかかわるIGFという仕組みや、代謝に関する経路のタンパク質が変化していました。第三に、英国の大規模な健康データベースUKバイオバンクで加齢とともに増減するタンパク質と比べると、30mgを1日2回飲んだ群では、薬による変化と加齢による変化に逆向きの関係(相関係数マイナス0.30)がありました。ただし、60mgを1日1回飲んだ群では、この相関は確認されませんでした。老化時計の解析では、重い健康上の問題(グレード3以上の有害事象)が起きた6人を除いて計算し直しても、低下の傾向が残りました。有害事象は、薬との因果関係が確認された副作用だけを指す言葉ではありません。
第一に、薬を飲んだ人では、分裂をやめて周囲に炎症を広げる「老化細胞」に関係するタンパク質が減っていました。第二に、成長にかかわるIGFという仕組みや、代謝に関する経路のタンパク質が変化していました。第三に、英国の大規模な健康データベースUKバイオバンクで加齢とともに増減するタンパク質と比べると、30mgを1日2回飲んだ群では、薬による変化と加齢による変化に逆向きの関係(相関係数マイナス0.30)がありました。ただし、60mgを1日1回飲んだ群では、この相関は確認されませんでした。老化時計の解析では、重い健康上の問題(グレード3以上の有害事象)が起きた6人を除いて計算し直しても、低下の傾向が残りました。有害事象は、薬との因果関係が確認された副作用だけを指す言葉ではありません。
「若返りの薬」ではない
- 若返りや寿命の延長を直接確かめていない
- 老化時計は血液から計算した推定値です。数値が3歳分下がっても、体のすべてが3歳若返ったり、寿命が3年延びたりしたことを意味しません。また、6種類の時計は一部のタンパク質を共通して使うため、完全に独立した6つの証拠とはいえません。
- 対象が42人と少ない
- 統計的な差が出ても、人数が少ないと偶然の影響を受けやすくなります。元の試験参加者71人全員ではなく、解析に同意して4回分の血液が揃った人に限られる点にも注意が必要です。
- 病気の人だけを調べている
- 参加者は全員IPFの患者で、しかもアジア系に限られていました。健康な人が飲んだときに同じ結果になるかどうかは分かっていません。
- 期間が12週と短い
- 数か月先、数年先に何が起きるかは調べられていません。
- 線維症への効果と分けられない
- 研究チーム自身が、IPF患者だけを対象とする限り、肺の線維化を抑える効果と老化への効果を完全に切り離すことはできないと認めています。
研究には開発企業の創業者や社員が著者として参加しています。論文にも、この利害関係が明記されています。結果をより確かなものにするには、独立した研究チームによる検証も必要です。
これから確かめるべきこと
研究チームは、次の段階として、IPF以外の患者や健康な高齢者での検証、タンパク質だけでなく遺伝子の働きなど複数の指標を組み合わせた確認、既存の抗線維化薬であるピルフェニドンやニンテダニブとの比較を挙げています。老化を防ぐ効果を医学的に確かめるには、病気の発症など実際の健康状態で効果を示すか、老化時計などの指標がその代わりに使えると規制当局に認められる必要があるとしています。

今回の意義は、病気の治療薬を試す臨床試験の中で、老化への影響を同時に測る手順を示したことにあります。老化を測る物差しが臨床試験に組み込まれれば、「老化を遅らせる薬」を評価する道筋がはっきりします。今後は、推定値の変化が実際の健康状態の改善や寿命の延長につながるかを確かめる必要があります。今回の報告は、その先を目指す研究がひとつ前進した段階と受け止めるのが適切です。
今回の意義は、病気の治療薬を試す臨床試験の中で、老化への影響を同時に測る手順を示したことにあります。老化を測る物差しが臨床試験に組み込まれれば、「老化を遅らせる薬」を評価する道筋がはっきりします。今後は、推定値の変化が実際の健康状態の改善や寿命の延長につながるかを確かめる必要があります。今回の報告は、その先を目指す研究がひとつ前進した段階と受け止めるのが適切です。
参考サイト
- Integration of proteomic aging clocks in a phase 2a clinical trial supports simultaneous geroprotective assessment:Nature Biotechnology
- A generative AI-discovered TNIK inhibitor for idiopathic pulmonary fibrosis: a randomized phase 2a trial:Nature Medicine
- AI創薬候補、6種の「老化時計」で生物学的年齢の低下を示唆:ITmedia NEWS
- Insilico's AI-Driven IPF Candidate Rentosertib Shows Potential for Biological Age Reversal:Insilico Medicine
(この項おわり)
