マラソン中に増える体内物質――ランナーズハイとの関係は?

2026年09月11日 作成
湖畔のマラソンコースを走る陽奈
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長く走っていると、気分が高まり、走るのが楽しくなることがあります。ランナーズハイと呼ばれる体験です。ドイツの研究チームは、マラソン中に、これに関係すると考えられる体内物質の血中濃度が増え、走り終えて45分後も高い状態にあることを報告しました。ただし、物質が増えれば必ず気分がよくなるわけではありません。体の変化と心の変化を分けて見てみましょう。

目次

体内で作られる「伝達役」

内因性カンナビノイドは、体の中で作られる情報伝達物質の総称です。「内因性」は、体内に由来するという意味です。代表的なものにアナンダミド(AEA)と2-AGがあり、気分や痛みなどの調節に関わると考えられています。

名前が大麻を連想させるのは、大麻に含まれるTHCなども、体内にあるカンナビノイド受容体に作用するためです。受容体は、細胞が信号を受け取るための窓口に当たります。走ると体内で大麻やTHCが作られる、という意味ではありません。

走るときと歩くときを比較

19人のマラソン研究と36人のウルトラマラソン研究の採血時点
1つ目は19人が湖の周りを約14kmずつ3周する調査です。開始前、14km、28km、ゴール、45分の休憩後に測定しました。実際の平均走行距離は42.94kmでした。同じ人が別の日に走ったのと同じ時間だけ歩き、同じタイミングで測定しました。同じ距離を歩かせたのではない点が大切です。

2つ目は、100km、160km、230kmのウルトラマラソンに参加した36人の調査です。こちらはレース前後に測定し、途中では採血していません。

2種類の物質は増え方が違う

マラソンでは、AEAの血中濃度が走行に伴って上昇しました。歩いた場合との差は14kmでは傾向にとどまり、28km以降で統計的に明確になりました。走り終えて45分後にも、歩いた場合より高い値が続きました。2-AGはAEAより遅れて、終盤から走行後の回復期に増えるパターンを示しました。

ウルトラマラソンでも、レース後にはAEAと2-AGの上昇が見られました。ただし、距離が長いほど濃度が高い、とは限りません。異なる参加者群を比べた追加分析では、マラソン後のほうが高い値でした。走る速さや体への負荷の違いが関係する可能性はありますが、原因は確定していません。

物質の増加と幸福感は同じではない

マラソンでは、歩く場合より気分の高まりが大きい時点がありました。一方、痛みも増えました。ウルトラマラソンでは、レース後に不安が減ったものの、幸福感に統計的に明確な上昇はなく、痛みは増しました。「ランナーズハイを体験した」と答えた人は、マラソンで19人中3人、ウルトラマラソンで36人中12人でした。

つまり、血液中の物質が増えたことと、本人が幸福感を覚えたことは、同じ結果ではありません。また、レース後の評価だけでは、走っている途中に一時的に感じた高揚感を捉えきれない可能性もあります。

この研究から分かること・分からないこと

今回測ったのは血液中の濃度であり、脳内の働きや物質が作られる速さを直接測定したわけではありません。「体内物質が増えたから気分がよくなった」という因果関係は証明されていません。

参加者は少人数の経験豊かな成人で、食事や休息などの条件も完全にはそろっていません。初心者や中学生にも同じ結果が当てはまるかは、この研究だけでは分かりません。長距離を走れば走るほど幸福になるという結論ではなく、長く走る体を支える仕組みを知るための手掛かりといえます。

参考サイト

(この項おわり)
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