自閉スペクトラムの共感は一方通行ではない

2026年09月19日 作成

「共感が苦手」とは限らない

互いの感情を理解しようと対話する二人
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自閉スペクトラムの人は「他人の気持ちを理解するのが苦手」と説明されることがあります。しかし、2026年6月にMolecular Autismに掲載された研究は、共感のすれ違いが一方だけの問題ではない可能性を示しました。

目次

「二重共感問題」とは

共感には、相手の考えや感情を理解する働きと、その感情に合った反応をする働きがあります。従来は、自閉スペクトラムの人の内側に共感能力の不足があると考えられがちでした。
これに対して「二重共感問題」という考え方は、異なる感じ方や伝え方を持つ人同士では、理解のずれが双方向に起こると説明します。自閉スペクトラムの人がそうでない人を理解しにくいだけでなく、そうでない人も自閉スペクトラムの人を理解しにくいという見方です。

動画を見て感情を推測

研究には、自閉スペクトラムの成人141人と、そうでない成人94人の計235人が参加しました。平均年齢は約49歳です。参加者は、自閉スペクトラムの語り手1人と、そうでない語り手1人が自分の体験を話す動画を見ました。語り手の特性は知らされませんでした。

参加者は、動画を見ながら語り手の気持ちが「肯定的」か「否定的」かを連続して評価し、見終わった後には喜び、怒り、悲しみ、恐れ、落ち着きなど12種類の感情の強さを答えました。研究者は、その回答を語り手本人の自己評価と比べ、「共感の正確さ」を測りました。主観的にどれほど共感したか、もう一つ話を聞きたいかも尋ねました。

全体では大差なし

12種類の感情を見分ける正確さと、感情が肯定的か否定的かを追う正確さについて、自閉スペクトラムの参加者とそうでない参加者の間に、全体として明確な差はありませんでした。つまり、この実験では「自閉スペクトラムの人は感情を読む力が一律に低い」とはいえませんでした。

一方、自閉スペクトラムの語り手の感情の変化を追う課題では、自閉スペクトラムの参加者の方が、そうでない参加者より正確でした。追加分析では小~中程度の差がありました。ただし、研究全体で見た組み合わせの効果は統計的に明確とする基準へわずかに届かず、研究者は「二重共感問題を部分的に支持する結果」と慎重に結論づけています。

興味深いことに、客観的な正確さが同程度だったにもかかわらず、自閉スペクトラムではない参加者の方が「共感した」「もっと話を聞きたい」と高く自己評価しました。自由記述では、自閉スペクトラムの参加者が課題の難しさや自分の出来具合を振り返る傾向も見られました。研究者は、自分の共感能力を低く見積もっている可能性を挙げていますが、これは今後の検証が必要な推測です。

生活の中で生かすには

この研究から、個人の診断名だけで共感能力を決めつけないことの大切さが分かります。会話がかみ合わないときは、どちらか一方に原因を求めるのではなく、互いに異なる手がかりを使って感情を伝え、読み取っている可能性を考えましょう。

家庭、学校、職場では、「分かるはず」と推測だけで進めず、気持ちや希望を具体的な言葉で確かめる、曖昧な表現を減らす、返事を急がせないといった工夫が役立ちます。ただし、これらは研究が直接効果を検証した方法ではありません。相手ごとの伝えやすさや受け取りやすさを話し合い、個人差に合わせることが基本です。

結果を読むときの注意点

実験は、知らない人の録画映像を自宅のパソコンで見る形式でした。雑音があり、すぐに応答しなければならない実際の会話とは異なります。語り手も自閉スペクトラム5人、そうでない人5人と少なく、話し方や表情など個人の違いが結果に影響した可能性があります。

参加者は自ら研究に応募し、詳しい説明を読んでオンライン課題を行える成人が中心でした。より多くの支援を必要とする人を含め、自閉スペクトラム全体に結果を当てはめることはできません。また、自閉スペクトラムかどうかは本人の申告に基づき、研究内で診断を再確認していません。今後は、実際の対話や、より多様な参加者と語り手で確かめる必要があります。

参考サイト

(この項おわり)
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