4.10 写真データの長期保存

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押し入れから古い外付けHDDとDVD-Rを取り出して見つめる(イメージ)
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「4.8 バックアップの基本」で述べたのは、故障や誤削除といった、ある日突然の事故から写真を守る方法だった。ここで扱う長期保存は、事故を免れた写真が、それでも10年後、20年後に見られなくなるという、もっと長い時間の問題である。ハードディスクは通電しないまま歳月が過ぎると回らなくなることがあり、DVDは記録層がゆっくり劣化する。ファイル形式もサービスも、10年、20年という時間の前では姿を変えていく。
長期保存で気をつけたいことは、大きく3つに分けられる。機器そのものの寿命(古いHDDやDVD)、ファイル形式の選び方(JPEGを基本にするか、RAWをどう扱うか)、そして環境の変化(クラウドサービスの終了)である。本項では、この3つに、家族への引き継ぎと、複数の形で残すという最後の備えを加えて解説する。

目次

10年後、20年後に見られる形で残す

写真は「撮って終わり」ではない。今のパソコンや今のソフトで開けることと、10年後、20年後にも開けることは、別の問題である。フイルム時代のアルバムは、押し入れに置いておくだけで、40年後でも同じように開いて見られた。デジタル写真には、その手軽さがない。

写真を包んでいるのは、保存先の機器、写真の入れ物であるファイル形式、そして写真を預けているサービスである。この3つのどれかが古くなったり、なくなったりすれば、データそのものは残っていても見られなくなる。次の項から、この3つを順番に見ていく。

古いHDDやDVDに注意

古い外付けHDDをつないでも読み込みが終わらない(イメージ)
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まず機器の寿命である。外付けHDDは、何年も通電しないまま押し入れに置いておくと、いざつないだときに回転が始まらないことがある(パソコンが外付けHDDを認識しない!NG行為と自分でできる対処法)。「4.8 バックアップの基本」で触れたとおり、ドライブは消耗品であり、保管しているだけでは安全ではない。
DVD-RやBD-Rも油断できない。記録層の色素が経年で変化し、書き込んだ当初は読めても、10年前後で読み取れなくなるディスクが報告されている(CDやDVDに保存したデータ、そのままで大丈夫?)。さらに、最近のノートパソコンは光学ドライブ自体が付いていない機種が多く、ディスクが無事でも読む手段がないことがある(PCの世界ではすっかり存在感が薄くなった光学メディアをあらためて整理)。

対策は難しくない。5年に一度を目安に新しいドライブへ移し替え、実際に開いて確かめる(「4.8 バックアップの基本」参照)。古いDVD-Rが手元にあるなら、読める今のうちにパソコンへ吸い出しておきたい。
主な保存先の実用上の寿命の目安
保存先目安となる寿命注意点
外付けHDD3〜5年(使用頻度による)長期間通電しないと固着することがある
外付けSSD5年以上(劣化は緩やか)長期間の未通電で電荷が抜けることがある
DVD-R・BD-R数年〜10年程度(当たり外れが大きい)記録層の劣化、読み取るドライブの減少
クラウドストレージサービスが続く限り次項で述べる終了リスクがある
プリント・フォトブック適切な保管で50年以上直射日光と高温多湿を避ける(「4.9」参照)

ファイル形式はJPEGを基本にする

機器の次はファイル形式である。長期保存に向くのは、これからも多くの機器・ソフトで開ける形式である。この点で選びやすいのがJPEGである。1990年代から使われている国際規格であり、パソコン、スマートフォン、写真店のどの環境でも例外なく開ける。

国立国会図書館のような公的な保存機関も、画像の保存にJPEGやTIFFなど、仕様が公開され広く使われている形式を選んでいる(国立国会図書館が採用するファイルフォーマット)。個人の写真でも同じ考え方が使える。まずJPEGで残っていれば、当面は安心である。

新しいHEIFのような形式は画質や容量で有利だが、対応環境がまだ限られる(「4.2 JPEGとRAWの違い」参照)。長期保存の土台には、実績のあるJPEGを置き、新しい形式は必要に応じて追加する、という順番がよい。

RAWデータを残すかどうか

RAWの扱いは判断が分かれる。RAWはメーカーごとの独自形式であり(.CR3、.NEF、.ARWなど。「4.2」参照)、現像ソフトが対応をやめれば、10年後、20年後に開けなくなる可能性がある。一方で、RAWにしか残っていない現像前の情報は、あとから消してしまうと取り戻せない。

現実的な線引きは、すべてのRAWを一生残すのではなく、残す範囲を決めることである。ふだんの撮影はJPEGだけで十分だが、「4.7 写真データの整理方法」で星5を付けた特に大切な写真は、現像を終えたJPEGと、元のRAWの両方を残す。すでに現像を終えて満足している写真は、RAWを消してJPEGだけにしてもよい。

将来へのさらなる備えとしては、RAWをAdobeが公開しているDNGという共通形式に変換しておく方法もある。メーカー独自形式よりも、将来にわたって開けるソフトが多く残りやすい。

クラウドサービス終了のリスク

クラウドストレージは、「4.8 バックアップの基本」で述べたとおり自宅の外に置く控えとして有効である。ただし、長期保存の観点では別の弱点がある。会社の事業判断で、サービスがある日終了することである。

総務省も、クラウドに預けていた重要データが取り出せなくなった事例を注意事例として紹介している(クラウドサービスに預けていた重要データが消えた)。告知から使えなくなるまでの期間が短く、対応する間もなく使えなくなるケースも報告されている(突然のサービス終了通告、これがクラウドの落とし穴)。「永久プラン」「一生使える」と案内されたサービスが打ち切られた例も実際にある(pCloudがついにサービス終了!?過去の事例から読み解くクラウドサービスの終焉)。「永久」は約束ではなく、そのときの案内文であると考えておきたい。

対策は、クラウド任せの一点保存をしないことに尽きる。3-2-1バックアップ(「4.8」参照)のとおり、クラウドはあくまで控えの1つであり、手元にも同じ写真を置く。サービス終了の告知メールは見逃さず、解約や移行の案内が来たら早めにダウンロードする。

家族が分かるように整理する

甥・姪と一緒にフォトブックを見る(イメージ)
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写真を長く残す目的の1つは、自分だけでなく家族が見られるようにすることである。フォルダーやクラウドのパスワードを自分しか知らなければ、いざというとき家族は開き方すら分からない。デジタル終活という言葉があるとおり、これは多くの家庭で起きている問題である(今から考えておきたい「デジタル終活」)。
対策として難しいことをする必要はない。「4.7 写真データの整理方法」で勧めた日付+イベント名のフォルダーは、家族が見ても内容が想像できる名前になっている。加えて、パスワードやデータの場所を書いた簡単な引き継ぎメモを1枚残しておくと、家族が困らない。

さらに確実なのは、「4.9 写真のプリントとフォトブック」で触れたとおり印刷しておくことである。フォトブックや紙焼きは、パスワードもソフトもいらず、誰でもそのまま開いて見られる。祖父母や小さな子どもに見せる写真は、データより紙のほうが確実に伝わる。

大切な写真は複数の形で残す

写真をデジタルと紙、複数の形で残す考え方を示す図解
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ここまでの内容を1つにまとめると、長期保存とは、1種類の保存に頼らないことである。「4.8」の3-2-1バックアップは故障や事故への備えだったが、長期保存はこれに時間の経過への備えを加える。同じ機器・同じ形式・同じサービスだけに頼ると、それが寿命を迎えたときに写真もろとも失われる。

とくに特に大切な写真(結婚式、子どもの成長、家族旅行など)は、性質の異なる複数の形で残したい。デジタルデータ(JPEG+外付けドライブ+クラウド)に加えて、紙のプリントやフォトブックという、電気もソフトも要らない形を必ず1つ持っておく。

そして、これらすべてに共通する習慣が定期的な移し替えである。5年に一度、機器を新しくし、ファイル形式を見直し、サービスの継続を確かめる。この一手間を続けられれば、10年後も20年後も、今日撮った写真を見返すことができる。
大切な写真を残す組み合わせの例
形保存先の例役割
デジタル(原本)内蔵ドライブ+外付けドライブふだんの管理・編集
デジタル(遠隔の控え)クラウドストレージ災害・盗難への備え
紙プリント・フォトブック電気・パスワードなしで家族が見られる

参考サイト

(この項おわり)
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