『まともなひと』――毒のあるエッセイ

養老孟司=著
表紙 まともなひと
著者 養老孟司
出版社 中央公論新社
サイズ 新書
発売日 2003年12月
価格 770円(税込)
ISBN 9784121017192
倫理がマニュアルになり法になるなら、倫理などいらない。いまでは人々はまさに「倫理を欠く」。それは倫理が法になり、マニュアルに変わったからであろう。倫理がなくなっただけではない。倫理とはなにか、それが不明になった。君子は独りを慎むという言葉など、もはや風馬牛であろう。(46ページ)

概要

養老孟司
養老孟司
ベストセラー『バカの壁』で有名な解剖学者、養老孟司 (ようろう たけし) さんの連載エッセイを単行本化したもの。いままであまり感じなかったのだが、本書を読んで、養老先生は割と毒のある書き方をする人だと思った。
たとえば「寝ている間に脳は起きているときと同じ量のエネルギーを消費する。つまり意識があるというのは、そのていどのことだともいえる」(181ページ)と言う。人間は儚いものである。
また、働かない若者に対して、こういう見方をする――「一生懸命に働き、経済を発展させ、物質的に豊かな世界を作ってきたのは、なんのためか。安全快適で、暇な世界を作るためである。それなら若者が努力せず、遊んでいるとして、怒る理由はない」(40ページ)――仰るとおりである。

これは『バカの壁』にもつながる、養老先生特有のモノの見方なのだと思うのだが、要は、物事を一面的に見てはいけない、目の前の事実を事実として見つめる、ということなのであろう。科学者として正しい態度だと思う。
(2005年7月11日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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