『若者はなぜ3年で辞めるのか?』

城繁幸=著
表紙 若者はなぜ3年で辞めるのか?
著者 城繁幸
出版社 光文社
サイズ 新書
発売日 2006年09月20日頃
価格 770円(税込)
rakuten
ISBN 9784334033705
この会社が必要とするのは、会社を利用して、自分の価値を高められる人間。だからどんどん会社を利用しろ。(199ページ)

概要

退職のイラスト(男性)
著者は、富士通の人事部門で新人事制度導入直後からその運営に携わってきた城繁幸さん。成果主義の問題点を指摘してきた。
いまの時代、汗水たらして働いても、若いときの苦労はけっして報われない。一方で、若者は仕事にこだわり、それがペテラン社員には「わがまま」に映るようになってしまった。
その原因について、城さんは「採る側である企業の、人材に対する考え方が一変したため」(33ページ)だという。
結果として、挑戦の機会さえ与えず、年齢という軸だけで収入からポストまで誰かが独占し、別の誰かを締め出してしまうシステムが出来上がってしまった。だから若者は3年で辞めるのだ。
この悪循環を断ち切るには、経営者が「この会社が必要とするのは、会社を利用して、自分の価値を高められる人間。だからどんどん会社を利用しろ」(199ページ)と宣言すべきだろう。

レビュー

かつての人材採用は、なんでもそつなくこなせるタイプの人材を、新卒で本社が一括採用することが基本方針だった。だが、バブル経済崩壊を契機に成果主義を導入し、勤続年数が評価基準ではなくなった。バブル採用組は、キャリア意識の高い後輩たちと同じ土俵で戦うことになったのだ。
だが、年功序列制というスキームは、しぶとく生き残っている。経営者は雇用を抑制した。それを支えるかのように、自称リペラルな政治家が国民の雇用を守ると連呼しつつ、新規採用削減に賛成している。そして、労働組合が強いことが、かえってニートやフリーターを増やした。

城さんは、「日本型教育システムというものは、年功序列的考え方と非常に相性がいい」(169ページ)と指摘する。生徒は高校、大学という具合に、節目節目で受験というフィルターをかけられ、その成績によってランクづけされる。小学校入学から高校・大学までの間に、正答一つの課題を与え続け、疑問を抱かずに効率よくこなせる人間だけ上に引きあげる。これは、アメリカのようにトータルの授業成績で進学が決まったり、ドイツのように希望者は原則進学させたりするシステムとは、一線を画する。
そして、会社人事は「どうしたら辞めないような人材を作れるか」という点だけにフォーカスし、「なぜ逃げられるのか」という点は無視している。
(2007年5月16日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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