『となりのクレーマー〜「苦情を言う人」との交渉術』

関根眞一=著
表紙 となりのクレーマー〜「苦情を言う人」との交渉術
著者 関根眞一
出版社 中央公論新社
サイズ 新書
発売日 2007年05月
価格 792円(税込)
rakuten
ISBN 9784121502445
クレーマーの難癖を終わらせるためにお金を出す、というのは、やってはいけないことです。(45ページ)

概要

クレーマーのイラスト(女性)
クレーマーが増えている。消費者向けビジネスだけではない。学校に押しかける「モンスター・ペアレンツ」、病院にイチャモンをつける「モンスター・ペイシェンツ」なども登場している。サービスを提供する側の人間としては、どう対処したらよいのだろうか。

本書では、西武百貨店で長年お客様相談室を担当してきた関根眞一さんが、苦情対応のノウハウ、クレーマーの気持ちを、事例を交えて分かりやすく解説している。

レビュー

われわれは常に、「何をもって苦情処理のゴールとするか」(158ページ)を頭に置きながら仕事をする必要がある。

関根さんは、クレーマーの気持ちの1つとして「年収が低く格差による差別意識を持った人が、『良い条件で仕事をしている人たち』になんらかのコンプレックスを感じているとしたら……(152ページ)」ということをあげている。これは盲点だった――BtoCビジネスではもちろんのこと、自分の会社より規模の小さい会社に対して販売するようなBtoBビジネスでも注意しなければならない。とくに、人月単価が目立ってあらわれるIT業界では。

関根さんは、クレーマーを次のように定義する。
1)通常では苦情と言えないようなものを、大げさに取り上げる。
2)苦情の連続技を持つ(一事象の流れの中で、複数の苦情を訴える) 。
3)過去の苦情被害を持ち出し、自分を優位に置く。
4)相手とのやりとりをいわば「苦情ゲーム」化し、愉しむところがある。
5)恐喝には至らないが、対応が困るように脅しを仕向けてくる。
6)訴えが一か所でなく、関連先全体に苦情として申し入れをしてくる。
7)現場で話をすれば、解決できるようなことを、本部や関連各所に申し入れる。
8)こちらの社長名を出したり、知人の存在を誇示して圧力を掛ける。
9)一度は気持ちよく解決しても、解決していない。次に来ない保証はまったくない。
10)外部の人も、多くがクレーマーと認めている。
11)家族も知っている。。
12)相手が困るのを面白がる「愉快犯型」と、結果として金品を求める「要求型」がある

そして、苦情の基本的対応を次のように整理している。
1)非があれば、真摯な態度で謝罪をする。
2)お客様の申し出は、感情を抑え素直に聞く。
3)正確にメモを取る。
4)説明は、慌てず冷静に考えてする。
5)現場を確認する。
6)対応は迅速にする。
7)一般の苦情客を、クレーマーに仕立てない。
8)苦情対応は平等に。

うがった見方かもしれないが、クレーマーが増えているのは、われわれ販売する側が顧客の気持ちを知ろうとしなくなったからではないだろうか。われわれは「お客」を見ないで「お金」だけを見ていないだろうか――本書を読んで、いろいろ考えさせられることが多い。
(2008年8月5日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
header