NAS「TS-109ProII」はLinuxサーバとして運用可能

2008年9月購入
QNAP TS-109ProII
動画や音声のデータ増えてきたので、NAS を新調することにした。購入したのは、台湾QNAP社のNASキット「TS-109 Pro II」――やや高価で筐体も大きめだが、Linuxサーバとして利用できる点が魅力である。これに1TBのHDDを内蔵した。

Windowsとのファイル共有機能として SMB/CIFS を搭載するほか、MacOS X 用のAFP、UNIX用のNFSも搭載しており、複数のクライアントOSが混在していても日本語ファイル名を問題なく利用できる。

前面にUSBポートが1つあり、ここにUSBメモリやUSB対応HDDを接続すると、自動的にNASのドライブとしてマウントされる。
デジカメのデータをNASにコピーする際、クライアントPC経由でアップロードするより、このUSBポートにマウントして、クライアントPC側からファイラーを使ってコピーする方が断然早い。
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QNAP TS-109ProII
背面にはUSBポートが2つと、eSATAポートが1つある。
ここにUSB対応HDDまたはeSATA対応HDDを接続すると、内部HDDとミラーリングすることができる。1TBのデータをバックアップするのはたいへんなので、できるだけ早いうちにミラーリング用のHDDを用意したいと考えている。

また、USBはプリンタポートとしても利用できる。TS-109Proをプリンタサーバとして、共有プリンタを公開することもできる。
QNAP TS-109ProII
HDDをセットしたところ。
ネジ2本でケースを分解し、別途購入した日立製の1TBのSATA-HDD(HDS721010KLA330)をコネクタに差し込む。あとは4本のネジで固定するだけ。実に簡単な作業である。

ファンレスなのでHDDは発熱が少ないものを選んだ方がいいだろう。
QNAP TS-109ProII
ファンレスであるため、放熱効果も兼ねて、かなり厚手のアルミ筐体となっている。

基板の熱が心配だったが、部品点数も少なく、固体コンデンサが使われている。これなら3~4年は問題なく動きそうである。

ハードウェアスペック

項目 仕様 コメント
CPU Marvell 5182 500MHz 他製品に比べ高速であり、付属のGUIソフトもストレス無く動かすことができる。
メモリ 256 MB DDRII、8MB Flash  
対応HDD 3.5インチSATA×1、最大1TB
USBまたはe-SATAとの外部接続を使えば最大2TBまで可
 
LAN ギガビットRJ-45イーサネット・ポート×1  
その他のI/F USB 2.0×3(前面×1、背面×2)、eSATA×1(背面)  
外形寸法 210(D)×60(W)×182(H)mm  
重量 約 1.2 kg  
電源 外部ACアダプター(100~240V)  
消費電力 省電力モード:6.6W、動作時:14.4W  
省電力設計 ファンレス、HDDスリープ・モード ファン音がしないのは嬉しい。筐体はカイロのように温かくなる。

マルチメディアステーション

マルチメディアステーション - QNAP TS-109ProII
デジカメの写真をコピーしておくと、自動的にサムネイルを作成してくれる「マルチメディアステーション」――このアプリケーションの完成度は高い。

Qmobile

Qmobile
ファームウェアをバージョン3.3.0にアップデートすることで、iPad を漬かってマルチメディアデータ(/Qmultimediaフォルダ配下)にアクセスできるiOSアプリ「QMobile」(無料)が利用できる。早速インストール。

MPEG-4ビデオ(720P程度)やMP3ミュージックをサクサク再生できる。日本語ファイル/フォルダ名を一覧表示することもでき、使い勝手も良い。。

PHP, MySQL など

アプリケーション - QNAP TS-109ProII
前述のように、Webサーバ(Apache)やPHP、MySQLもプリインストールされている。
クライアントからQNAPの管理画面にログインし、「管理画面→アプリケーション」から種々のアプリケーションのON/OFFなどをコントロールできる。
Apache, PHPはデフォルトで稼働している。
もちろん、telnetやSSHも利用できる。

QPKG と ipkg による機能拡張

組み込み用Linuxに関する知識があれば、ipkgを使ってさらに機能を拡張することができる。
まず、「管理画面→アプリケーション→QPKGプラグイン」に入り、右上の「QPKGの取得」ボタンをクリックし、Optware-ipkgをダウンロードする。圧縮されたパッケージファイルはクライアントにダウンロードされるので、解凍してから「インストール」タブをクリックし、インストールする。「QPKGインストール済み」タブに戻り、有効化する。

次に、sshまたはtelnetでQNAPにログインしたら、以下のようにコマンドを発行してipkgのパッケージリストを最新のものに更新する。(Optware-ipkgをインストールすることで、"/opt/bin/" に PATHが通る)

$ ipkg update


これでipkgにリストアップされている各種アプリケーションをインストールできるようになる。
残念ながら、TS-109などARM系のQNAPにはgccが用意されていないが(ipkgによらないインストール方法については後述)、PerlやPEARが用意されているのでインストールしてみた。

$ ipkg install php
$ ipkg install php-pear
$ ipkg install grep
$ ipkg install perl



PEARパッケージは "/share/HDA_DATA/.qpkg/Optware/share/pear" にインストールされるようだ。
ただ、そのままでは使えないので、Apacheとともに動作しているphpのphp.iniにパスを通しておく必要がある。具体的には、viなどで "/mnt/HDA_ROOT/.config/php.ini" を編集し、次の1行を追加する。

include_path = ".:/share/HDA_DATA/.qpkg/Optware/share/pear"


そして、Apacheを再起動すればPEARが使えるようになる。

/mnt/HDA_ROOT/apache/bin/apachectl restart

gcc の導入

QNAPにはCコンパイラがなく、QPKGやipkgを使ってインストールすることもできない(後年発売されたATOM系のQNAPであれば、ipkgでインストールできるらしい)。
そこで、組み込みLinux用に開発されている小規模Cライブラリ uClibc をインストールしてみた。

まず、クライアントで https://uclibc.org/downloads/old-releases/ から "root_fs_arm.ext2.bz2" をダウンロード。解凍して出てくる ext2イメージファイルを "Qweb/share" へアップロードする。このイメージファイルがARM用のuClibcで、gccなども含まれている。
(※)あらかじめ mkdir "/share/Qweb/share" でディレクトリを作っておく。他のディレクトリでも良いが、クライアント(ここではWindows)のファイラーを使ってアクセスしやすい Qweb 配下に配置した。

QNAPにログインし、以下のコマンドを発行し、先ほどアップロードしたext2イメージをマウントし、bashをuClibcのものに切り替える。

cd /share/Qweb/share
mkdir loopmount
mount -o loop root_fs_arm.ext2 /share/Qweb/share/loopmount
/mnt/ext/usr/sbin/chroot loopmount /bin/bash


これでgccやmakeが使えるようになるので、小規模な開発だったら何とかなるだろう。
ただし、PHPやPerlは用意されていないので、PECLなどのコンパイルはできない。
OSを Debian に差し替えれば利用できるようだが、かなり覚悟がいるので今後の課題としたい。

ソフトウェアスペック

項目 仕様 コメント
OS Linux embedded system  
ネットワーク TCP/IP、DHCPクライアント、DHCPサーバー、 CIFS/SMB、AFP、HTTP、HTTPS、FTP、DDNS、NTP、Jumbo Frame
ファイル・システム EXT3(Internal/external HDD)
FAT(External HDD)
NTFS(External HDD、read only)
 
対応クライアントOS Microsoft Windows 98/ME/NT/ 2000/XP/2003/Vista、Mac OS9/OSX  
Q-RAID1 USBまたはe-SATAで接続した外部HDDとミラーリングが可能。  
各種サービス ファイルサーバ(Windows ActiveDirectoryサポート)
FTPサーバ
iTunesサーバ
マルチメディアステーション
ダウンロードステーション
Webサーバ+PHP
MySQL + SQLiteサーバ
バックアップサーバ
リモートリプレイケーション
UPnPメディアサーバ(組み込みTwonkyMedia サーバー)
プリンタサーバ
さまざまなサービスが最初から組み込まれている。Linuxなので、さらに追加インストールも簡単。
(この項おわり)
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