『ネットいじめ』――どうやってリスクと付き合っていくのか

荻上チキ=著
表紙 ネットいじめ
著者 荻上チキ
出版社 PHP研究所
サイズ 新書
発売日 2008年07月
価格 814円(税込)
ISBN 9784569701141
子どもたちがケータイを使うことが日常風景になったいま、ただ「危険だ」「そんなことはネットでなくてもできる」「使ってはいけない」といった台詞をぶつけるだけでは、道徳や思い出に則った「ウザイ説教」としか受け取られない。(128ページ)

概要

ネットいじめのイラスト(女性)
ウェブ炎上」「12歳からのインターネット」の著者でもある、批評家でブロガーの荻上チキさんによる「ネットいじめ」に対する評論書である。

私も「中高生の携帯サイト事情、学校裏サイト、ネットいじめ」で、プロフによる個人情報漏洩からネットいじめに至る問題を記しているが、昨今の携帯電話の使用禁止の動きには疑問を感じる。著者が「あたかもネットいじめが情報技術によって生み出されたまったく新しい問題であるかのように語る」(4ページ)と指摘するように、IT技術に対するフランケンシュタイン・コンプレックスではないかと感じる。
私は、かれこれ四半世紀にわたってネットの住人であり続けているのだが、たしかに、嫌なことは少なからずあった。しかし、それよりも多くの収穫をあげている。だから、早いうちから子どもがネットをすることを許している。

著者が「多くの『ネットから距離をとる発言』をしている者は、自身もそれほどヘビーユーザーではないため、実態を理解していない的を外れた発言をしていることがほんとうに多い」(121ページ)と指摘するように、私の目から見ても的外れな指摘が多い。こうした指摘が本当なら、まず私自身が「ネットから距離をとる」べきである。しかし、日常生活を送っていて、とくに仕事をしている中で、「ネットから距離をとる」ように指導を受けたことは一度もない。
リスクをとることで結果を得るのは、ビジネスも教育も一緒だと思う。火や刃物はリスクだが、これを使いこなせないようではヒトとして生きていけない。ネットもPCも携帯も、こうした道具と一緒である。これからのヒトは、こうしたIT機器を使いこそなせなければ生きていけないのである。

ならば、こうした機器を取り上げるのではなく、どうやってリスクと付き合っていくのかを学ばせなければならない

ただし、著者が「スクールカーストで最下層に陥らずに生き延びていくためには、自分に適したキャラを獲得するのが手っ取り早い手段」(167ページ)と指摘するのは、ネットとは別問題である。もし、親の前で、先生の前で、友達の前で“キャラを演じている”のだとすれば、これは改めさせなければならない。ヒトは、リアルな世界であってもバーチャルな世界であっても、自分自身をさらけ出して生きることができなければならないと思うからだ。
(2009年1月28日 読了)

参考サイト

(この項おわり)
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